エピソード09

母と、いつも通りの日々を

母がこの施設に入居したのは、
年末の寒い時期でした。

すぐ隣が私たち家族のラーメン店で、
窓の外から孫の声が聞こえる距離。

その「近さ」が、
母にとっても、私たちにとっても
心地よい安心でした。

歩行器を使いながら、
館内を行き来し、
他の入居者の方と笑顔でおしゃべりする母。

普段はあまり家族の話をしない人でしたが、
スタッフの方が
「お母様、ご家族にとても愛されてますね」と
言ってくれるたびに、

私たちの想いが伝わっているようで、
嬉しくてたまりませんでした。

けれど、入居から3年が経ったある春。

母は急に食欲をなくしました。

「お腹いっぱいで食べられない」と言う日が続き、
好きなものを差し入れても、
体調は戻らず──

検査の結果は、
胃がんの末期。

治療は望めず、
ターミナルケアを受けながら、
再び施設での生活が始まりました。

それからの日々は、
穏やかで静かな時間の積み重ね。

スタッフの皆さんは、
訪問看護と連携しながら、

「今日もゼリーいかがですか?」と
声をかけてくれました。

時には、
食事を拒んだり、
酸素マスクを外したりすることもありましたが、

「それもお母様らしさですね」と
優しく笑うスタッフのひと言に、

私たちの張りつめた心が
ふっとほどけたのを覚えています。

母がかつて切り盛りしていた
ラーメン店の話をしながら過ごす時間。

言葉は少なくなっていきましたが、
その空間には笑い声がありました。

そして、最期の日。

家族で寄り添いながら、
静かにその瞬間を迎えました。

葬儀社の車が来たとき、
スタッフの皆さんが外まで出て
お見送りしてくれた光景が、

今も心に深く残っています。

しばらくラーメン店を休業した
私たちの感謝の投稿を、

スタッフの方が見つけてくれていたと知ったとき、
あたたかいつながりが
今も続いているようで、

胸がいっぱいになりました。

母が母らしくいられた場所で、

家族とともに過ごせた、
かけがえのない時間に
心から感謝しています。

このエピソードに立ち会った人
アルファリビング鹿児島上荒田

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