エピソード17

最後まで、自分らしく生きた祖父

「これが飲めんなったら終わりやもんな」

お酒を前に、
いつも照れくさそうに笑っていた祖父。

母を見送ったあとは、
好きなバイクにも乗れなくなり、
自由気ままな生活の延長線上で、
アルファリビングに入居しました。

物知りで、歌が好きで、話好き。
毎晩の晩酌と、差し入れのおつまみが祖父の日課でした。

体調も安定していて、
「これでいい」と思える暮らしが続いていました。

けれど、入居して1年が経ったころ、
肝臓の腫瘍が悪性化していると診断されました。

一時は、
「ゴミと一緒に燃やしてくれんね」と口にするほど
落ち込んだ祖父でしたが、

日常の自由な生活が守られていることで、
少しずつ気持ちを取り戻していったようでした。

そんなある日、
「いかめし、食べたかねぇ」と祖父がつぶやきました。

新聞の折り込みチラシに載っていた、
北海道物産展の文字。

スタッフの皆さんはすぐに動き、
主治医とも相談し、
外出の準備を整えてくれました。

当日は晴れ。
久しぶりの街中を車いすで散策しながら、
祖父は「ここは昔な…」と笑顔で話してくれました。

いかめしをじっくり選ぶ姿に、
まるで以前の祖父が戻ってきたようでした。

でもその後、体調が急変し、入院。

「帰りたいね」
「アルファリビング、いつ戻れるかな」

そう言っていた祖父は、
そのまま帰ることなく旅立ちました。

施設の皆さんは、
最後まで祖父の「らしさ」を大切にしてくださいました。

好きな晩酌も、歌も、外出も。
祖父が望む形で過ごせた時間が、
残された私たちにとっての慰めになっています。

“その人らしく生きる”とはどういうことか。

祖父と、そして施設の皆さんとの日々から、
それを深く学ばせてもらいました。

このエピソードに立ち会った人
アルファリビング長崎大浦

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