エピソード04

認知症でもあきらめない ― 社交ダンスへの再挑戦 ―

「ダンス、もう一度やれたら…」

その一言が、
すべての始まりでした。

前頭側頭型認知症の診断。

入院とリハビリを経て、
歩行器なしでは
歩けない体になりました。

「もう一人では外出できない」

そう言われた日、
大好きだった社交ダンスのことも、
心の引き出しに
しまい込んだ気がします。

でも本当は、
ずっと思っていました。

──また踊りたい。
もう一度、音楽に合わせて
体を動かしたい。

新しい施設での生活。

環境に慣れず、
スタッフにイライラを
ぶつけてしまうこともありました。

家族との会話も減って、
どこか、心が閉じていた時期。

そんなある日、
ふと口からこぼれた言葉。

「ダンス教室、行けるかな」

そのつぶやきに、
スタッフの方が
耳を傾けてくれました。

「やってみましょう」

そう言ってくれたことが、
何より嬉しかった。

筋力トレーニング、
屋外歩行の練習。

タクシーの手配や
教室との連絡も、
すべて一緒に
準備してくれました。

そして迎えた、
久しぶりのダンス教室。

タクシーの中では、
ずっとドキドキ。

扉を開けた瞬間、
懐かしさがこみ上げました。

音楽が流れると、
体が自然と
ステップを踏み出していて──

「ああ、やっぱりこれが私なんだ」

そう思いました。

今では、
月に2回のダンスが
私の楽しみ。

タクシーで教室に通い、
また「私らしい時間」を
取り戻しています。

このエピソードに立ち会った人
アルファリビング姫路城西
黒田 寿

最近の投稿

エピソード18

あきらめかけた音色が、ふたたび動き出した日

「もう、大正琴は弾けないかもしれないね」入居の見学で、そうつぶやいた私の声は、小さく震えていたと思います。夫を見送り、長くひとり暮らしをしてきました。趣味の仲間と大正琴を弾く時間が、私にとって何よ...

続きを読む
エピソード17

最後まで、自分らしく生きた祖父

「これが飲めんなったら終わりやもんな」お酒を前に、いつも照れくさそうに笑っていた祖父。母を見送ったあとは、好きなバイクにも乗れなくなり、自由気ままな生活の延長線上で、アルファリビングに入居しました...

続きを読む