母を支えた、諦めなかった時間
母は70代後半まで保険会社で働き、
多くの人との関わりを楽しんできた人でした。
けれど、2018年。
突然、自宅で意識を失って倒れ、
救急搬送されました。
原因は間質性肺炎。
3日間、意識が戻らず、
私たち家族は
ただ祈ることしかできませんでした。
奇跡的に回復し、
その後は私と一緒に暮らすように。
旅行にも行けるまで元気を取り戻し、
また笑顔の日々が戻ってきたと
思っていました。
でも、少しずつ身体は思うように動かなくなり、
認知症の症状も見られるようになっていきました。
私が母の介護をする日々が続きましたが、
少しずつ限界が近づいているのを感じ、
「施設」という選択肢を
考えるようになりました。
見学のあと、
まずは1泊2日の体験入居をお願いしました。
でも、それは母にとって
とてもつらい時間になってしまいました。
スタッフの声も届かず、
トイレにも行けず、
食事も喉を通らない。
「帰りたい、帰りたい」
母は泣きながら訴えました。
その姿を見て、私も苦しくなり、
「やっぱり、私がもう少しがんばれば…」と
一度は入居を諦めかけました。
それでも──
数日たったあと、改めて思い返したんです。
体験入居の中で見た、
スタッフの皆さんの寄り添い方。
混乱している母に対して、
決して否定せず、急かさず、
丁寧に関わってくださる姿を見て、
「この人たちとなら、
母を一緒に支えられるかもしれない」
そう思えました。
そして、入居を決断しました。
入居後も、最初はつらい日が続きました。
毎日私に電話をして、
「帰りたい」と泣いていた母。
でも、スタッフの方々は
諦めませんでした。
言葉が届かなくても、
母の「気持ち」を見つめて、
好きだった音楽や、
動画を見ながらの発声練習など、
母らしい時間を取り戻す工夫を
してくださいました。
何度もケアの内容を見直してくれて、
デイサービス、訪問看護、介護の連携も
強化されていきました。
2ヶ月が過ぎた頃、
母の表情が
少しずつ変わってきたのを感じました。
ケアに対する抵抗もなくなり、
言葉のやりとりも戻り、
穏やかに過ごせる時間が
増えていきました。
薬に頼らず、
母が“母らしく”いられる毎日。
あのとき、
「ここでいいのか」と悩んだ私に、
スタッフの方が言ってくれたんです。
「まだ2ヶ月です。
私たちも、諦めていませんから」
その言葉が、
今の穏やかな母の笑顔につながっています。
「私が支えなきゃ」から、
「一緒に支えてくれる人がいる」へ。
私たち家族にとって、
この施設は、
もうひとつの“家”です。
本当に、ありがとうございました。





