「もう一度、自分らしく歩く」母がくれた奇跡の時間
母が施設に入居したのは、
11月のことでした。
入居前の面談で会ったとき、
母はほぼ寝たきりの状態で、
食事もゼリー食がやっと。
声もか細く、力がなく、
「本当にここで生活できるのだろうか」と
私たち家族も不安を抱えていました。
それでも、母はぽつりと
「ここはちょっと、寂しいね」
とつぶやきました。
だからこそ、私たちは願っていたんです。
──温かい介護のもとで、
少しでも穏やかに暮らしてほしい。
そうして、施設での生活が始まりました。
入居後の母は、
すべてに介助が必要でした。
食事、排泄、移動……
そして、孤独からナースコールを
何度も押してしまう日々。
正直、職員の皆さんに
申し訳ない思いでいっぱいでした。
でも、そんな母が、
ある日を境に変わっていきました。
2ヶ月もしないうちに、
刻み食を自分で食べられるように。
トイレでの排泄もできるようになり、
歩行器を使った歩行訓練にも
前向きに取り組みはじめました。
さらに、ネイルやヘアカットなどの
オシャレも楽しむように。
その変化に、
私たちは思わず声を上げました。
「アメージング!」
──まさに、
生まれ変わったようでした。
この変化の背景には、
職員の皆さんの“気づき”がありました。
母の利き手ではない手が
意外と器用に動くこと、
下肢に筋力がまだ残っていることに着目し、
その「できる可能性」を信じて、
少しずつ介助方法を
変えてくださったのです。
母の寂しさにも
丁寧に寄り添い、
こまめに声をかけてくれたり、
生活の中で「楽しみ」を
見つけられるよう工夫してくれたり。
そうした温かな関わりの積み重ねが、
母の「自分でやりたい」という気持ちを
引き出してくれました。
今、母には新しい目標があります。
それは、歩行器を使って、
家族の家まで歩いていくこと。
そして、
大好きな愛犬・風花に会うことです。
この目標に向かって、
母は毎日、前を向いて進んでいます。
母の姿を見て、
私は改めて実感しました。



