お役立ちコラム
介護施設の転居理由は?住民票は異動すべき?注意点もあわせて解説
目次

介護施設への入居を検討する際には、いくつかの条件に妥協する場合もあるかもしれません。そのためか、入居してから転居を希望する方も入居者も少なくないようです。とはいえ、退去や別の施設への転居の手続きやルールは、状況によって異なります。
この記事では介護施設の転居について、その理由ややむを得ない状況、施設の種類ごとの入居基準から選び方の注意点までを解説します。
介護施設に転居する際の住民票の異動は必須ではない

老人ホームなどの介護施設に入居するときは、原則として住民票を施設に移すことになります。しかしこれは義務ではなく、状況によっては住民票を移さないという選択も可能です。
住民票を移せば、元の住所に届いていた郵便物も、確実に手元に届きます。市町村や都道府県から届く手続きや通知といった重要な郵便物も、放置されることがありません。
ごく短期間の入居であれば、ご近所や家族に頼んで管理してもらうことも可能です。しかし、長期的な入所が想定される場合は、住民票は移しておいた方が安心かもしれません。
ただし、住民票の異動には手続きが必要です。当然、メリットもデメリットも発生します。住民票を移したことで自治体が変われば、受けられる公共サービスが変わります。地域によっては公共施設の利用料が下がったり、介護保険料が安くなったりというメリットがあるでしょう。逆に、公共料金などが上がることも考えられます。
また発送元の業者や知人に介護施設への入居が知られてしまったり、施設にプライバシーの一部が侵されてしまったりするおそれがあることもデメリットです。
住民票の異動をどうするかは、家族でよく相談してみましょう。
介護施設の主な転居・退去理由5つ

介護施設への入居を検討する際には、事前に情報を集めてから時間をとって施設を見学したり、ときには専門家に話を聞いたりしながら、ベストな施設を選ぼうとする方が多いです。しかし入居してから初めてわかることもあり、「こんなはずじゃなかった」と感じることも多いでしょう。
ここでは、実際の介護施設の転居の理由に多い項目を5つ紹介します。
- 理由1.身体の状況の変化
- 理由2.金銭的負担の増加
- 理由3.家族の状況の変化
- 理由4.施設の立地や設備に対する不満
- 理由5.施設の入居者・職員など人間関係に対する不満
以下で、詳しく見ていきましょう。
理由1.身体状況の変化
介護施設に入居する理由の1つに、一人または家族だけでの生活の難しさがあります。これには衣食住さまざまな生活活動の難しさも含まれますが、より深刻なのは身体状況そのものの状態です。高齢になれば何かしら、身体に不調は現れます。「耳が遠くなる」「視力が低下する」「筋力が落ち足がうまく上がらず躓きやすくなる」などはその典型です。
とくに、病気の進行は大きな課題です。介護施設に入居したときは軽症でも、時間とともに病状が悪化し、施設での対応が難しくなることもあります。
またこれまでかかっていなかった病気にかかり、より高度な医療ケアが必要になることもあるでしょう。介護施設では対応できないとして、退去を求められることもあるかもしれません。緊急の場合は、病院に入院となることもあります。
理由2.金銭面の負担の増加
要介護認定で介護度が付くと、介護保険サービスを1〜3割の負担で受けられます。「起き上がりが難しい」「立ちくらみしやすい」といった理由から介護用ベッドを低料金でレンタルできるのは、介護保険制度のメリットです。
しかし介護度が高くなれば、その分費用負担は増えます。さらに支援していた家族の経済状況が変わり、負担できなくなることもあり得ることです。金銭面の負担増によって、退去せざるを得なくなる可能性もあります。
理由3.家族の状況の変化
介護施設に入居したからといって、その後は家族が何もしなくていいわけではありません。費用の支払いはもちろん、介護内容の変更は家族が説明を受ける必要があります。また、入居者との定期的な面会も必要でしょう。
このような支援を、誰か一人が担っていることもあります。その方が倒れたり、遠方に転居したりすれば、状況は大きく変わってしまいます。必要な対応ができないことが続けば、退去を求められるかもしれません。
介護施設で入居者が安全に安心して暮らすためには、必要な対応をきちんとこなせるよう他の家族も安全に暮らしていることが必要です。介護施設への入居は、まさに家族みんなで支えることだといえるでしょう。
理由4.施設の立地や設備に対する不満
いくら施設探しで情報を集めても、入居して初めてわかることもあるものです。介護施設も同様で、パンフレットやWebサイトの写真では広そうに見えても、実際に部屋に入ると思っていたより狭いと感じるかもしれません。
また要介護度が高く、とくに医療的ケアが必要な場合は、病状が変わると必要な設備が増えるなど十分な介護ができなくなり、他の介護施設に転居せざるを得なくなることも考えられます。
面会や介護のサポートなどのために家族が施設を訪れる場合は、立地は大きなポイントです。より条件の整った施設を見つけ、転居を検討することになるかもしれません。
理由5.施設の入居者・職員など人間関係に対する不満
介護施設の実際の状況はなかなかわかるものではありませんが、これは施設の入居者や職員の間の人間関係や振る舞いについても同様です。
「一部のスタッフの対応が冷たい」「他の入居者に乱暴な言動の人がいる」「寝ていても大声で騒ぐ入居者がいる」など人間関係にまつわる不満はどこから発生するかわかりません。しかし長期に入居するのであれば、小さな問題もいずれ大きくなる可能性があります。体調に影響するようなら、転居した方がよいかもしれません。
別の介護施設へ転居しなければならないシーン

とくに介護施設に不満はなくても、ルール上やむを得ず転居しなくてはならない状況もあり得ます。介護施設の種類は多く、それぞれに入居のための基準を設けており、基準から外れると別の適した施設への転居を求められるためです。
ここでは、介護度の変化に応じてどのような転居があり得るか、有料老人ホームの場合の事業者からの契約解除による転居について解説します。
介護度の変化
入居者が利用できる介護施設は、介護保険における介護度によって定められています。介護度は、コンピュータによる一次判定と、保険医療福祉の学識経験者による二次判定の2段階で総合判断され、その後も定期的に更新されるしくみです。
介護度は、要介護(1〜5)と要支援(1・2)に分けられます。それぞれ数字が大きい方が、より介護や支援を必要とする状態です。
代表的な介護施設であるグループホームや老人保健施設、特別養護老人ホームを利用できる入居者の介護度は次のように定められています。
| 施設の種類 | 利用できない | 利用できる | 備考 |
| グループホーム | 要支援1 | 要支援2以上 | 認知症である |
| 老人保健施設 | 要支援1・2 | 要介護1以上 | |
| 特別養護老人ホーム | 要介護1・2 要支援1・2 |
要介護3以上 |
一般に介護度は上がると考えられていますが、リハビリや環境の変化によって下がることもあります。たとえばグループホームに入居していた要支援2の入居者が、要支援1に更新されると、転居しなくてはなりません。
有料老人ホーム事業者からの契約解除
有料老人ホームは、高齢者が心身ともに健康な暮らしができるよう配慮された施設です。介護サービスが付帯していたり、自立した生活を楽しむための設備が整っていたりと、サービス内容や料金は施設によってかなり違いがあります。
有料老人ホームは、介護サービスというより「サービス業の1つ」といえるでしょう。入居一時金が1億円以上、月額利用料40万円以上というような高額の有料老人ホームでは、高いサービスを受けられます。その一方で、入居者に順守を求められるルールは厳しい場合もあります。
以下は、有料老人ホーム事業者から契約解除される要件の例です。
- 入居申込書に虚偽の事項を記載した
- 支払いを正当な理由なくしばしば延滞した
- 禁止または制限される行為に関する規定に違反した
- 他の入居者の生命に危害を及ぼす恐れがあり、通常の方法では防止できない
- 医療対応が常態化した など
上記の「禁止または制限される行為」には、危険物の搬入・使用・保管といった当然の項目もありますが、「テレビやステレオなどを大音量で聞く」「動物を飼育する」「居室の改造や改築」などもあります。有料老人ホームへの入居を検討する際には、経済的条件だけでなく入居者の趣味や生活習慣についての確認も必要です。
それぞれの介護施設と入居条件の基準

これから介護施設への入居を検討するなら、少なくともどのような施設がありどのような入居基準があるかは正確に把握しておくべきでしょう。ここでは先に紹介したグループホームや老人保健施設、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム以外の2施設についても解説します。
施設の種類ごとのメリットやデメリットを含め、入居者にあった施設を選ぶための参考にしてみてください。
高齢者認知症グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
グループホームは、認知症と診断された高齢者が入居できる介護施設です。要支援2から要介護5までの高齢者が入居できます。
グループホームでは介護スタッフと入居者が協力し、買い物や食事の支度、片付け、掃除、洗濯などの家事にあたります。できることは入居者によって異なりますが、ただ時間を過ごすのではなく、できることをこなすことで認知症の進行を穏やかにすることが目的です。
共同生活であるため、認知症が進行するなどして他の入居者へ暴力行為や暴言が増えたり、ケガや病気で寝たきりになったり、特別な医療行為が必要になったりすると転居が必要になります。
転居先は入居者の状況や必要な介護内容によりますが、介護付きまたは住宅型有料老人ホームや特別養護老人ホームなどが想定されます。
介護老人保健施設
介護老人保健施設は、入居基準が要介護1以上の高齢者が入居できる施設です。
この施設は高齢者の在宅復帰を目指し、通常の生活に必要な生活動作をこなせる身体機能の向上を目的としています。入居は6カ月程度を基準とし、自宅に戻るか他の介護施設に転居することが前提です。
そのため入居中にケガを負い後遺症が残る、病気が悪化するなどによって特別な医療ケアが必要になると他の介護施設への転居が必要です。
転居先の候補となるのは自宅や有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホームなどです。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームの入居の基準は、要介護3以上です。入居後、介護度が上がってもそのまま入居できます。
転居が必要となるのは、認知症が重症化して共同生活ができない場合や、病状の変化で特殊な医療ケアを必要となった場合などです。特別養護老人ホームは、病院ではありません。医療的ケアや看取り対応ができない施設の場合には、転居を求められます。
転居先の候補となるのは、24時間医療対応が可能な有料老人ホームなどです。近年は、医療法人が運営するホームもあるため、併せて検討するとよいでしょう。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サービス付き高齢者向け住宅は、賃貸住宅の一種です。入居者の見守りや生活相談など、高齢者が安心して暮らすためのサービスを提供します。
入居者の基準は、60歳以上または介護認定を受けていることです。比較的低い介護度の高齢者を対象としており、中には認知症を患っていないなどの条件を定める施設もあります。
日中は介護の有資格者が常駐し、生活相談や生活に関する情報を提供はします。訪問介護やデイサービスなどの介護サービスは、それぞれ契約して提供を受けます。賃貸住宅のように各居室にはトイレ・洗面台・浴室が備わっており、台所もあるため自炊も可能です。
基本的に自立性の高い高齢者向けのサービスであるため、認知症などによって自立生活が難しくなると、共同生活に支障が出始め、転居を求められる場合があります。
転居できる介護施設は、グループホームや有料老人ホームなどです。
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは、自立度が高めの高齢者を対象とする施設です。食事提供や居室の掃除、洗濯、買い物といった生活支援や健康管理のサービスを利用できます。
入居基準は施設によって異なる場合がありますが、おおむね60~65歳以上です。一般的には、自立していても介護認定を受けていても入居できるとされています。ただし介護サービスについては、個別に外部の介護事業者と契約しなくてはなりません。
病気やけがによって医療的ケアが必要になると、転居が求められることもあります。転居先として想定されるのは、医療的ケアの対応ができる有料老人ホームや介護施設です。
介護付有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームでは、24時間常駐する施設スタッフによる介護サービスを受けられます。入居基準は原則として65歳以上とされていますが、次のような施設タイプごとの基準があるのが一般的です。
- 自立型:自立している高齢者のみ
- 介護専用型:要介護1以上の高齢者のみ
- 混合型:自立・要支援・要介護いずれの高齢者も入居可能
入浴や排せつの介助や通院の付き添いといった介護サービスのほかに、家事全般や健康管理などが含まれます。認知症の進行などにより、転居を求められる場合があります。
転居できる介護施設は、より手厚い介護サービスが可能な有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などです。
後悔しない!介護施設選び2つのポイント

介護施設の種類は多いうえに、施設によって対応できるサービスに違いがあります。そのため、検討にはかなり細かな情報収集が必要であり、適切な施設選びの難しさがわかるでしょう。入居者の状況や介護施設の概要を知ること以外にも、おさえておきたいポイントは2つです。
- ポイント1.転居先に介護施設に「何を求めるか」を把握する
- ポイント2.多方面から老人ホームに関する情報を集める
以下で解説します。
ポイント1.転居先の介護施設に「何を求めるか」を把握する
重要なのは、必要な介護サービスを受けることができ、安全安心に生活を送れることです。入浴や排泄に介助が必要なら、24時間介護付きの施設でなくてはなりません。体を動かすことが好きなら、レクリエーションなどのアクティビティが充実していることが求められます。
この他に何を求めるかも、かなり重要です。「騒音でよく眠れない」「毎日体操するのに一人でするしかなかった」などの不満は、解決したいところです。スタッフとの相性や雰囲気に合うかどうかも、長く生活するなら無視はできません。
介護施設は、入居者が生活する場所です。安心安全はもちろん、快適でなくてはなりません。入居者を含めた家族全員で、何を求めるかよく話し合うのもよいでしょう。
ポイント2.多方面から老人ホームに関する情報を集める
介護施設にどのような種類があるか、どのようなサービスがあるかについて詳しく知る人は多くありません。担当のケアマネジャーやソーシャルワーカーには、すぐに相談しましょう。知人に介護施設利用の経験者がいれば、経験談を聞くのがおすすめです。
近年は、インターネットや介護施設の紹介サービスもあります。パンフレットをもらえるのであれば取り寄せ、検討する情報に加えましょう。近くであれば電話で問い合わせ、施設の責任者やスタッフに話を聞くという方法もあります。
介護施設の情報は、できるだけ多方面から集めることが得策です。
介護施設を転居する際の注意点

介護施設の利用は、契約に基づく取引です。入居はもちろん、退去の際にも発生する手続きはあり、適切なタイミングもあります。
退去に関連する手続きとして挙げられるのは、入居一時金の返還と居室の原状回復です。入居一時金を預けていた場合、途中退去すれば返還金があります。施設によって計算方法が違うことがありますが、一般に入居日数分の家賃が差し引かれた残りの金額が返還されることになるでしょう。
利用していた居室の原状回復費用は、主に入居者による損傷を賄うための費用です。自然劣化による費用は施設が負担するとされています。
また退去のタイミングも重要です。転居が決まったら、まず施設に通知しましょう。転居先に合わせる必要もあるため、それまでの期間で退去の準備を進め、荷物の運搬や支払いの精算の段取りもつけなくてはなりません。
スムーズに転居するためにも、転居先とも詳しく打ち合わせる必要があるでしょう。
施設探しに困ったらケアマネジャーに相談しよう

介護施設の転居を考えたときに頼りたいのは、担当するケアマネジャーです。ケアマネジャーは、利用者にあった介護サービスの調整をするスペシャリストです。利用者の状況や特徴を把握し、介護内容や計画を立案します。複数の利用者を担当するためさまざまな施設やサービス事業者と連携するためさまざまな情報に精通できるため、施設探しの頼れる存在です。
介護施設の情報は、多角的に集める必要があります。重要なのは、入居者が安心して安全に快適に暮らせることです。専門家としてのケアマネジャーにもしっかり協力してもらいながら、ベストな施設を選ぶようにしましょう。




