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仕事と介護の両立の実態とは?実現のために利用できるものを徹底解説
目次

仕事と家族の介護を両立するのは、決して簡単なことではありません。勤め先や家族、親族との協力が必要です。また利用できる介護保険による介護サービスや行政サービス、支援制度などもあります。
この記事では仕事と介護の両立の実態を紹介し、両立を実現するために利用できるものについて詳しく解説します。高齢の家族を持つ方は、将来に備えて参考にしてください。
介護と仕事の両立の実態

介護と仕事の両方を務めることは、心と体に大きな負担をかけます。その両立は、不可能ではないけれど難しいことです。
介護を優先して仕事を辞めたり、さまざまな介護サービスを利用しながら仕事をしたりする人も多いのが現状といえるでしょう。
離職のリスクが高いため、離職を検討する前に介護と仕事のバランスに関するさまざまな制度や情報を入手することが大切です。また、経験豊富な人から学ぶことも有意義といえます。
少子高齢化が進む日本では、仕事と介護の両立に苦労する人が増えています。今は関係ない人でも、将来に備えて実態を見ていきましょう。
介護をしている人の約6割が仕事と両立している
総務省統計局の調査によると、日本には家族の介護をしている方たちが約630万人おり、そのうち約6割が介護と仕事の両立をしています。
年齢層別では、男性の9割弱が50代後半で、女性は7割弱が40代です。つまり労働力人口が減少している日本にとっては、依然として働き盛りの世代が介護を担っていることが大きな問題といえます。
みずほ情報総研が2016年に実施した調査によると、介護のために転職した人や介護のために離職した人、介護をしながら継続して働いている人の全回答者の8割以上が、介護に負担を感じていると回答しました。
その理由は、おおむね以下のような内容です。
- 介護がいつまで続くかわからないことによる将来の不安
- 介護制度の理解および利用が難しい
- 介護による疲弊しても休息は難しい
しかし介護保険制度をよく理解して、介護負担を軽減できるサービスを利用できれば負担を軽減することができるかもしれません。
年間約10万人が介護離職する
総務省によると社会の高齢化に伴って、家族の介護のために仕事を離れる人が増えている傾向にあります。毎年10万人近くが介護のために退職を余儀なくされており、これらの介護による離職率は総離職数の約2%弱です。
将来の人口の動向を考慮すると、介護保険に関する知識と会社の理解が進まなければ、介護離職の数は増加します。また、現状ではこの約10万人の中のおよそ70%を占めるのが女性です。
働き方改革や女性の社会進出といった大きな流れの中で、介護に関して女性に多くの負担がかかっている状態は改善されるべきでしょう。
また家族の介護が発生した際に勤め先を離職する理由として多いものが、「仕事と介護の両立が困難だから」となっています。つまり家族の介護と仕事を両立することが、いかに難しいかということを示しているといえるでしょう。
1日24時間介護が必要となれば、昼も夜も関係なく定期的なケアが必要になります。家事と併行して介護を行う必要があり、とても仕事の方まで手が回らなくなることが多いようです。
ダブルケアの懸念
「ダブルケア」とは介護と育児を同時に行うことです。内閣府の発表では、2016年時点でのダブルケア人口は約25万人であるとされています。男女別では男性が約8万5,000人で女性が約16万8,000人と、女性は男性のほぼ2倍です。
ダブルケアが増加している理由には、出産年齢の高齢化や全体的な晩婚化などが挙げられます。ダブルケアに直面する人の数は、今後も増えていくと考えられるでしょう。
核家族化の影響もあり、親類縁者との関係も希薄になりがちです。それも手伝って、育児中でも介護をせざるをえないケースが増えています。
とりわけ団塊の世代が75歳を超える2025年からが要注意です。団塊ジュニアの世代では、ダブルケアが社会的な問題になるのではないかとされています。
介護離職がもたらすデメリットとは

介護離職をして生活の方向性が変わると、生活のパターンが一変します。そして、さまざまなデメリットを感じるようになるでしょう。代表的なものは主に以下のとおりです。
- 再就職が難しくなる
- 世帯収入の減少
- 離職後に心身の負担が増える
個人差はあっても、大なり小なり課題を抱えながらの介護生活になります。個々のデメリットを詳しく見ていきましょう。
再就職が難しくなる
介護生活にはいつか必ず終わりがきます。そうなれば、よほど高齢でない限り再就職を検討することになるでしょう。
しかし、介護離職の後に期間を置いてまた正社員として復帰できるケースはおおむね半分以下というのが現実です。
ブランクが長いほど再就職は難しくなり、4人に1人は無職状態ともいわれます。再就職が決まらなければ蓄えも減り、生活に困窮してしまう心配も少なくありません。
世帯収入の減少
介護離職すると安定収入が無くなるので、世帯収入が減少します。親の年金に頼ったり、自身の貯蓄を切り崩したりして生活する必要も出てくるため、切迫した状況になりかねません。
また、勤めていた頃のような厚生年金の保険料の支払いがなくなり、国民年金のみになるでしょう。つまり、将来の年金額は勤務を続けていたと仮定した額よりも、減ってしまいます。
さらに、本来もらえるはずの退職金も少なくなり、すでに受領していることも多いでしょう。つまり、介護離職が収入に与える影響は、単に一時的な減収だけに留まらず、生涯で受け取れる額面が減少することになります。
離職後に心身の負担が増える
離職をして介護に専念すると、先に述べた経済面の負担だけではありません。毎日続く介護生活は、精神面でのストレスが蓄積されていくことも多いのです。
また、肉体面でも重労働になる場合もあり、腰痛などを患ってしまうケースもあります。心身ともに負担が増えて疲弊しきってしまうこともあるようです。
介護と仕事を両立させるためのポイント

介護が始まって仕事との両立が困難に感じたら、そのままの状況で無理をすることなく、両立するためのアクションを起こしましょう。
誰にも相談しなかったために、本来利用できる介護サービスの利用などを視野に入れて両立を検討する前に離職してしまうケースも見られます。落ち着いて検討すればやりようがある場合もあるので、軽々な離職は避けたいものです。
勤め先に相談する
介護と仕事の両立が厳しいと感じたら、そのまま無理をすることなく、できる限り早い段階で勤め先に相談をするように心掛けましょう。
誰にも相談をせず、介護保険サービスの利用などを検討する前に離職してしまうケースが多くありますが、これは非常にもったいないです。
理解がある職場なら、勤務体制を見直してもらいましょう。勤務時間や出勤日の調整、リモートワークの併用など、打つ手はあるはずです。
家族で相談をする
家族との相談は重要です。従来よくあるのは、家族の中で女性に介護を押しつけて男性は仕事をするというケース。しかし今の時代、「家事も介護も女性がやるべき仕事」と決まっているわけではありません。
家族の誰かに介護が必要になった際には、まず家族内で話し合いをしましょう。役割を分担して、みんなで協力することが望ましい考え方です。
介護がいつ始まっても慌てないように、家族が元気なうちから「その時がきた場合にどうするか」を話し合っておくとよいでしょう。
職場や働き方を変えてみる
現在の職場での対応が難しい状況なら、職場や働き方を変えて、両立できるような体制を作る方法もあります。
介護に支障がないような時間帯や日数、曜日で働ける職場を探すか、現在の職場で正社員から契約社員やパートタイムに一旦変更してもらうなどです。
前者のように融通が効いて正社員扱いしてもらえる職場なら安心です。また現在の職場での契約形態の変更であれば、時期が来て正社員の復帰も難しくないでしょう。
在宅介護と仕事を両立させるために利用できるもの

以前は「介護は家族が行うもの」という考え方が主流でした。しかし、現在では必ずしもそうではありません。
年齢や性別に関係なく働ける社会となっているので、働き続けるためには使える行政サービス等を利用するのが当然といえるでしょう。
在宅介護サービスを利用すれば家族の負担が大きく軽減され、ストレスや不安の解消にも役立ちます。また、介護と仕事の両立を支援する制度も利用したいものです。
在宅介護サービス
在宅介護サービスは介護保険が適用されるものが多いので、利用者側の負担もそれほど大きくありません。介護保険制度についてしっかりと知識を持って、適切に活用していきましょう。
代表的な在宅介護サービスは以下のようなものです。
- デイサービス
- ショートステイ
- 訪問介護
それぞれの具体的なサービス内容を見ていきましょう。
デイサービス
日帰りにて介護施設で生活の介助だけでなく、レクリエーションなどのイベントにも参加できるサービスです。
楽しみながら精神を活性化し、認知機能を維持するメリットがあります。自宅にこもっているよりも楽しみながら時間を過ごせるので、積極的に使う家庭も多いです。
ショートステイ
介護施設などに数日間の短期間の宿泊をするサービスです。要介護者の気分転換にだけでなく、いつも介護している家族の休息やリフレッシュもかねて利用されます。
家族が介護に疲れてきたら、一旦ショートステイを利用し、リフレッシュするタイミングを作るのもよいでしょう。
訪問介護
ヘルパーが自宅を訪問し、身体介護(排泄・入浴・食事介助など)や生活支援をおこないます。また介護事業者が専用の浴槽を自宅に持ち込んで、入浴の介助を行うのは入浴介護です。
特に入浴は慣れていない家族が行うには、身体的負担が大きいことが懸念されます。ぜひとも有効活用しましょう。
介護と仕事の両立をサポートする制度
厚生労働省は介護離職を減らすために「介護離職ゼロ」のスローガンを掲げて、仕事と在宅介護の両立をサポートする制度を打ち出しています。
また、行政によるサポートもいろいろとあるので、ここで紹介する制度の活用を検討しましょう。
主に以下のような制度です。
- 介護休業制度
- 介護休業給付
- 勤務時間の制限義務
- 両立支援等助成金
それぞれの制度を詳しく見ていきましょう。
介護休業制度
病気やケガなどで2週間以上の期間の介護を必要とする家族のために、休暇が取得できる制度です。
同じ会社や個人事業主に1年以上継続して雇用されているなど、制度の利用には条件があります。対象となる場合は、家族1人あたり3回でトータル93日まで休暇を取得可能です。
勤め先は申し出を受けた場合に、厚生労働省に介護休業の開始予定日と終了予定日などを通知する義務があります。介護休業制度の利用を希望する場合は、早い段階から相談しておきましょう。
介護休業給付
家族を介護するために介護休業を利用する人が、休業中に受け取れる雇用保険給付のひとつです。給付金の受給資格としては、3つの条件を満たす必要があります。
- 雇用保険の被保険者である
- 介護対象の家族が2週間以上の常時介護が必要な状態である
- 職場復帰することを前提として介護休業を取得する
これらをクリアすれば、93日を限度として3回まで給付されます。
介護休業給付金の支給される額に関しての計算式は以下のとおりです。
【日額賃金×休業日数×67%】
つまり給料の67%程度が給付されると概算すればよいでしょう。
なお、給付金の申請は、介護休業の終了した次の日から2カ月後の月末までに勤め先を通してハローワークで行わなければなりません。通常は勤め先で手続きをしてもらえます。
勤務時間の制限義務
事業主は申請者の請求に応じて、勤務時間を制限する義務の規定があります。
申請者は1回の請求につき時間外労働および所定外労働で1カ月以上1年以内の期間において、また深夜勤務で1カ月以上6カ月以内の期間において勤め先での残業が制限されます。
請求回数に制限はありませんので、申請者の都合のいいタイミングで手続きが可能です。
事業主は申請者からの請求を拒否することもでき、また対象外となる場合もあります。請求する場合は、事前に要件を確認しておきましょう。
両立支援等助成金
育児・介護休業法にもとづく介護休業とは別に、家族の介護を行う必要がある従業員が有給休暇を使って介護を行えるよう取り組む中小企業事業主を支援するための助成金です。
その介護離職防止支援コースに「新型コロナウイルス感染症対応特例」が創設されました。これは従業員が直接助成されるのではありません。
しかし、企業は両立支援等助成金を受けることで介護のための休暇をサポートできます。従業員が介護と仕事の両立をする背中を押してくれる材料となるでしょう。
万が一勤め先とトラブルになった際の対応

勤め先が介護に協力的であればよいですが、中には非協力的なケースもあるかもしれません。それでも、法的に許容される範囲で介護のための対応をしてもらう権利が従業員にはあります。
それを拒否された場合は、大きな問題といえるでしょう。そのような方には「紛争解決援助制度」を活用することをおすすめします。
また、会社の理解が得られず離職を余儀なくされた場合、経済的な苦境に対応するために雇用保険を活用することも大切です。
それぞれの対応に関して、詳しく見ていきましょう。
紛争解決援助制度の活用
企業が育児・介護休業法を遵守できない場合、労使間で紛争が起こることがあります。話し合いで解決できなかった場合には、労働局の紛争解決援助制度を利用することがおすすめです。
労働局は、各地方自治体に設置されている行政機関のひとつです。公正かつ中立な立場で労使間のトラブルを解決するために、専門的な指導や助言を行います。
公的な機関なので、費用などはかかりません。プライバシーに配慮してもらえるため、関係者以外に調停に関する情報が知られることもありません。
また、従業員側がこの制度を利用して調停に入ることで、企業側が従業員を不当に扱うことも禁じられています。心配することなく、堂々と利用してください。
雇用保険の活用
勤め先とトラブルになって、離職をせざるを得なくなった場合、差し当たっての生活費を確保する必要が生じます。離職票を受け取ったらすぐにでも居住地のハローワークを訪問し、雇用保険の失業給付金の受給手続きを行いましょう。
失業保険は離職のパターンによりますが、少なくとも3カ月、最長で1年間分受け取ることが可能です。個々のケースでの失業給付を受給できる日数は、過去の雇用保険加入期間と離職理由によって決定します。
受給可能な日数については、事前にハローワークに確認しておくことが大切です。そしてその受給期間中に、介護と両立できる勤め先を探しましょう。
なお、離職票に記載される離職の理由が会社都合、つまり解雇である場合には速やかに失業給付金が支給されます。しかし、自己都合となっている場合は離職後の2カ月間は、給付制限期間となるため、失業給付金の受給はできません。
自己都合であっても、介護の必要性が生じたための離職などの正当な理由がある場合は、給付制限期間は設けられません。会社都合の場合と同じく7日間だけ待機期間があって、その後受給が開始されます。
介護と仕事の両立には前もって会社と家族と相談を

高齢の家族を持つ家庭の場合、いつ介護が必要になってもおかしくはないでしょう。そうなった際に、それまでまったく考えていなければ慌てることになりがちです。
家族の誰がどういう役割をするのか、仕事などとの兼ね合いですぐに決定しかねることもあります。それでも目の前の介護の必要性という現実があるので、対応するために離職を余儀なくされることもあるでしょう。
不本意な離職を避けるために前もって高齢の家族が元気なうちに、勤め先の会社や家族とよく相談して、その時が来たらどういう対応をするべきかを話し合っておくことをおすすめします。




