お役立ちコラム

介護で起こる腰痛の原因とは?手軽にできる予防策とストレッチを紹介

介護職に就くスタッフの方々にとって、腰痛は深刻な職業病のひとつです。利用者さんを抱えて移動したり中腰の姿勢で長時間作業したりすることが多く、腰痛に悩む介護スタッフはたくさんいるでしょう。この記事では腰痛が起こる原因や効果的な予防策、起こった際の対応について詳しく紹介します。

介護職と腰痛の深い関係

厚生労働省の調査によると、2019年の介護を含む保健衛生業界において「業務上で起こった病気や怪我によって休業を4日以上した」という報告が1,930件ありました。

怪我による休業1,750件のうち、1,648件は腰痛が原因となっているのです。また同じく厚生労働省の発表した介護現場の状況では、29.9%の介護スタッフが「腰痛や体力に不安がある」あるいは「身体的負担が大きい」と答えています。

介護の現場で働く人たちのおよそ3割が、腰痛を含む身体的な不安を抱えていることが浮き彫りになっているのです。職員の腰痛を少しでも軽減するために、国は介護補助器具(介護ロボットやリフト)の導入を助成しています。

ほかにも腰痛予防セミナーや実際に腰痛を起こした職員をサポートするなどの対策を進めていますが、いまだ解決には至っていません。

このように介護職と腰痛は深い関係にあり、職業病といえるでしょう。利用者さんを支えたり抱き上げたりするといった介護者の腰に大きな負担がかかる動作が多いため、腰痛を訴える介護スタッフが後を絶ちません。

腰痛が悪化したことが原因となり、職場を去らざるを得ない方もいます。継続して介護の仕事を続けるためには、腰痛との深い関係性をよく理解し、対策を施しながら取り組むのが賢明でしょう。

介護で起こる腰痛の原因

介護の業務によって起こる腰痛の原因には、主に以下の3つが考えられます。

  • 原因1.負担になる動作や姿勢
  • 原因2.介護現場の環境
  • 原因3.介護者の属性

個々の原因について、詳しく見ていきましょう。

原因1.負担になる動作や姿勢

介護の業務では、腰痛を起こしやすい動作や姿勢をする場面が多く見られます。代表的なものは以下の4つです。

  • 1.持ち上げる際の動き
  • 2.腰をひねる動き
  • 3.中腰前かがみの姿勢
  • 4.同じ姿勢の持続

1.持ち上げる際の動き

利用者さんがトイレに行く際や車椅子から降りてベッドに移動する際などには、介護スタッフが利用者さんを抱え持ち上げる動作が発生します。介護業務につきものである移乗介助は、腰に負荷がかかり、腰痛の原因になりやすい動きです。

2.腰をひねる動き

食事をサポートする食事介助では、介護スタッフが利用者さんの隣に腰掛けて介助を行います。利用者さんの方に体を向けて行うのでどうしても腰をひねる動きになり、腰に負担がかかります。入浴介助や移乗介助も、腰をひねる動きが必要な業務です。

3.中腰前かがみの姿勢

介護スタッフは利用者さんの入浴介助やトイレ介助、おむつ交換、体位交換などで中腰の前かがみになることが多いでしょう。中腰前かがみの姿勢も、腰に負担がかかります。

4.同じ姿勢の持続

長時間にわたって同じ姿勢でいることも、腰に負担がかかる原因のひとつです。介護の現場ではなかなか休憩を取ることができず、長時間にわたって立ち仕事を続ける場合などが当てはまるでしょう。

原因2.介護現場の環境

「職場の温度が低く、足腰が冷える」「室内での配置が移動しづらく、体勢に無理がかかる」「室内の照明が暗く、足元の状態を確認しにくい」「職場の床材が滑りやすく、足腰に負担がかかりやすい」というような現場の環境も腰痛につながります。

原因3.介護者の属性

年齢や性別、既往歴、基礎疾患の有無、体格、筋力など、個人の属性に関わることが腰痛を引き起こすこともあります。そのほかにも職場の中での人間関係や心理的、社会的な要因も関係している場合もあるでしょう。

介護スタッフが腰痛を起こす場合、原因はどれかひとつというよりも複数の原因が重なっている場合が多いです。

介護で起こる腰痛予防策

ここまでで述べたように、介護職が働く現場には腰痛を引き起こす引き金となる要素がたくさんあります。しかしそれらが具体的にわかっていれば、あらかじめ予防策を施すことができるでしょう。

主に以下の5つの予防策が想定できます。

  • 予防策1.介助姿勢を意識して改善する
  • 予防策2.環境を整える
  • 予防策3.福祉用具を活用する
  • 予防策4.休息を十分にとる
  • 予防策5.腰痛予防の体操を毎日行う

それぞれの予防策について、詳しく見ていきましょう。

予防策1.介助姿勢を意識して改善する

介護スタッフには、姿勢が不自然になってしまうような場面が日々あるでしょう。介助姿勢を意識的に改善するだけでも、腰痛予防の効果が期待できます。

腰への負担をできるかぎり減らすためには、適切な介護技術にもとづいて介助姿勢を改善しましょう。普段から正しい姿勢を意識することで、腰痛の発症リスクを確実に減らしていくことが可能です。

予防策2.環境を整える

車椅子のグリップやベッドの高さが低すぎると、無理な前傾姿勢になりがちです。前もって高さを調節するなどして、業務環境を整えましょう。

また滑りやすい場所やせまい場所などでの介助は、どうしても無理な姿勢になりがちです。その場合も通路を整理して、広さをたっぷり確保しましょう。段差はできるかぎり解消し、床には滑り止めのマットを使用するなどの工夫も効果的です。

そのほか、足元の安全確認ができるように照明を明るくし、足腰が冷やさないような適切な室内温度を保つこと、滑りにくい靴や動きやすい衣服も腰痛予防に役立ちます。

予防策3.福祉用具を活用する

利用者さんの起き上がり時の介助や車椅子への移乗時の介助、あるいはおむつ交換などの場面では、無理な前傾姿勢や利用者さんを抱き上げる動作が往々に発生します。介助姿勢の改善をしても、それだけで完璧に腰痛を防ぐことは難しいといえるかもしれません。

福祉用具を上手に活用することで、介助の負担を減らすことが可能です。福祉用具は介護保険を使えるものが多いため、担当のケアマネジャーにも相談してみましょう。

腰痛予防に有効な福祉用具

腰痛予防に役立つ福祉用具の代表的なものは、以下の4つです。

  • リフト
  • 持ち手付き補助ベルト
  • スタンディングマシーン
  • スライディングボード
  • スライディングシート

なお複数の福祉用具を併用する場合に、福祉用具間の相性も大変重要です。導入する前には、福祉用具の組み合わせの相性についてもよく確認しましょう。

予防策4.休息を十分にとる

筋肉疲労が蓄積することで起きる腰痛を防ぐためには、十分な休息が必要です。休日にはじゅうぶんにリフレッシュをし、慢性的な疲労を回復することを心がけましょう。業務中でもこまめに休憩をとり、ストレッチなどで体をほぐすことも有効です。

予防策5.腰痛予防の体操を毎日行う

腰痛予防の体操を毎日行うことも、おすすめできる予防策のひとつです。

ストレッチを中心とした腰痛対策となる体操は、腰痛予防以外にもリラクゼーションや疲労回復の効果もあります。ポイントは伸ばす筋肉を意識しながら、ゆっくり静かに行うことです。

入浴中や入浴後、就寝前などにルーティンとして行うとより効果的ですが、無理のないようできるときに行いましょう。

簡単にできる腰痛予防ストレッチ

腰痛を予防するための体操として、腰痛予防のストレッチを紹介します。以下の4パターンをこなしましょう。

  • 腰痛予防ストレッチ1.腰
  • 腰痛予防ストレッチ2.背筋
  • 腰痛予防ストレッチ3.太もも
  • 腰痛予防ストレッチ4.ふくらはぎ

ストレッチは決して息を止めないで、ゆっくりと呼吸をしながら行うのが基本です。身体が温まっている風呂上がりなどに行うと、柔軟性が増すため効果が高まるでしょう。

また、仕事の前のストレッチもおすすめです。起床後に行うストレッチは、身体がほぐれるのでとくにおすすめです。座ってできる太もものストレッチなどは、休憩中などにも行うことができるでしょう。

それぞれの詳しいやり方を紹介します。

腰痛予防ストレッチ1.腰

  1. 床に仰向けで寝そベリます
  2. 左膝を90度に曲げる立て膝のポーズをとり、それを右に倒しながら自然に腰をねじります
  3. 左膝を右手で軽く押さえこみます
  4. 左肩が浮かないように気をつけて、顔を左に向けます
  5. ゆっくりと呼吸をしつつ20秒間姿勢を保ちます
  6. 同様のことを反対側と交互に、それぞれ3回ずつ行います

腰痛予防ストレッチ2.背筋

  1. 床に仰向けで寝そベリます
  2. 両手で右膝を抱え込み、ゆっくり息を吸ってから顔を起こしつつ、20秒ほどかけて息を吐きながら背中を丸めます
  3. ゆっくりと息を吸いながら元に戻します
  4. 同様のことを反対側と交互に、それぞれ5回ずつ行います
  5. 次に、両手で両膝を抱えます
  6. ゆっくり息を吸って両膝を顔に近づけるように起こしつつ、20秒ほどかけて息を吐きながら背中を丸めます
  7. ゆっくりと息を吸いながら元に戻し、「丸める」と「戻す」を5 回行います

腰痛予防ストレッチ3.太もも

  1. 椅子にきちんと座り、両足を肩幅くらいに開きます
  2. 右足を手で持ち上げ、右ふくらはぎを左の太ももに乗せます
  3. 右足の膝に右手を乗せ、上半身を前に倒しながらゆっくりと体重を前にかけていきます
  4. 痛みが出る直前まで倒し、ゆっくりと呼吸をしながら20秒間姿勢を保ちます
  5. ゆっくりと戻し、左右交互に2回行います

腰痛予防ストレッチ4.ふくらはぎ

  1. 動かないもの(椅子・テーブル・壁・手すりなど)を支えにして、太ももやふくらはぎを左右それぞれ20秒ほど伸ばします
  2. 1の動作をあと1〜2回繰り返します
  3. 次に仰向けになって両ひざを両手で抱えこみ、背筋を伸ばします
  4. その姿勢でゆっくりと呼吸をしながら、20秒間姿勢を保ちます
  5. 息をゆっくりと吐きながら、両ひざを伸ばします
  6. 無理のない範囲で数回繰り返します

腰痛になった際の対応

日々の介護業務の中で、腰痛はいつ起こるかわかりません。腰痛が起こってしまった際にどのような対応をすべきなのか、あらかじめ認識しておくことが賢明です。

急性的な腰痛の場合と慢性的な腰痛の場合にわけて、詳しく見ていきましょう。

急性的な腰痛の場合

急に腰痛が起こってしまった場合には、以下のように対応しましょう。

  • 柔らかいソファーは避け、固い床面にひざを曲げて横になる
  • 横になれない環境なら、壁に寄りかかるなどで楽な姿勢になる
  • 痛みのある部分を冷やす
  • 腰の筋肉を極力動かさないように安静にする

慢性的な腰痛の場合

慢性的な腰痛が悪化してしまった場合には、以下のように対応しましょう。

  • 立ち作業は控える
  • 無理な姿勢をとらない
  • 十分な休息をとる
  • 腰を入浴などで温める
  • ストレッチやマッサージで腰の筋肉をほぐす
  • 寝るときは仰向けを避けて横向きで脚を曲げる姿勢をとる

労災が適用される腰痛の種類

介護現場では職業病ともいえる腰痛を起こした場合に労災は適用されるのか、気になっている方も多いでしょう。

介護の仕事が原因で腰痛が起こったと証明できれば、労災に認定されます。ただし介護現場で労災認定されるのは「災害性腰痛」と「非災害性腰痛」の2種類です。

それぞれを詳しく見ていきましょう。

業務中のアクシデントによる災害性腰痛

災害性腰痛とは「仕事中に怪我をしてしまった」というような突発的な事象による腰痛のことです。「利用者さんを車椅子からベッドに移乗する際に、ギックリ腰になってしまった」「入浴介助をしていて、急に腰が痛くなった」「重い荷物を運んでいた際に転倒し、腰を強く打ってしまった」などというケースなどが当てはまります。

業務上でのアクシデントが原因であることがはっきりしており、普段と違う動作が原因となり腰痛を発症した場合には、災害性腰痛として労災認定されるでしょう。

長期間の負担による非災害性腰痛

「非災害性腰痛」とは腰に過度な負担がかかる業務を、長期間に渡り行ったことによる慢性的な腰痛のことです。介護業務での日常的な動作が慢性腰痛の原因であると認められれば、労災が適用されるでしょう。

実際の介護現場では、非災害性腰痛が多い傾向にあります。ただし腰痛には筋力不足や加齢といった業務以外の要因も考えられるため、労災認定が難しい場合もあるようです。

医師の診察を受ける際には「介護の仕事を始めた時期はいつ頃か」「どんな腰痛がいつ頃から続いているのか」「日常的に腰にかかる負荷はどれくらいか」「腰に負担のかかる業務はそれくらいの頻度なのか」などを整理しておき、できるだけ具体的に医師に伝えましょう。

日頃の予防対策で介護による腰痛を防ごう

介護の仕事に携わる人たちにとって、つねに腰痛のリスクはつきまといます。しかし腰痛の特性を理解し、日頃からの予防策や福祉器具の活用などで気をつけることにより、発症のリスクを確実に減少させることも可能です。

介護スタッフのみなさんは、ここで紹介した情報を参考にして、腰痛を予防しながら介護の仕事が継続できるように取り組んでください。

小夫 直孝

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝

2011年 4月 入社 事業推進部 配属 
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年 11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長
2023年 10月 常務取締役 兼 事業本部長 兼 事業推進部 部長