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成年後見人制度とは?手続きや費用、メリットデメリットを詳しく解説
目次

成年後見人制度は、認知症をはじめとする判断能力が低下した方を支援するための制度です。2000年に施行されたものの、内容や利用手順は詳しく知らないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。こちらの記事では、成年後見人制度の手続きや費用、メリットデメリットについてわかりやすく解説。これまでの事例も紹介していきます。
「成年後見人制度」の基礎知識

「自分が留守のあいだに、認知症の家族が不要なサービスの契約してしまうのではないか」
「知的障害を持つ子どもには、自分たちが亡くなったあとの資産管理は難しいのでは…」
認知症患者や知的障がい者、精神障がい者を家族に持つ方は、そのように心配することもあるのではないでしょうか。
成年後見人制度は、そういった不安に対応するための公的な制度です。1999年の民法改正により、介護保険制度とともに利用が開始されました。判断能力が不十分な方に代わり、資産管理したり、必要なサービスを契約、または解約したりすることが可能になります。
2019年度(令和元年度)の調査によると、制度開始時状況の63.3%は認知症。次いで、知的障害が9.7%、統合失調症が8.9%となっています。また、発達障害やうつ病、アルコール依存症なども利用開始の状況として挙げられます。
成年後見人制度利用の目的としては、預貯金などの管理や解約が40.6%。本人を保護するためが21.8%となっています。また、その次にあげられるのが介護保険の契約です。これらの目的には、資産管理だけでなく、介護サービスの代理契約が可能となる制度の特徴が現れているといえるでしょう。
このように、成年後見人制度は障がいのある方の資産や人権を守ることができる制度です。障がいがあっても自分らしく、家庭や地域で暮らすための役割を担っています。
【参考】裁判所「平成31年1月~令和元年12月成年後見関係事件の概況」
後見人は家族以外でもなれる
「資産管理に関わる後見人には、親族だけがなれる」という印象もあるのではないでしょうか。実際には、後見人は家庭裁判所が選任し、その結果について不服を申立てることはできません。裁判所の調査によると、親族が後見人などに選任される割合は21.8%。全体の7割以上の後見人が、弁護士や社会福祉士、司法書士といった第三者なのです。
また、申立人は本人や親族に次ぎ、市区町村長が全体の約20%を占めます。都道府県別で確認すると、30%を超える地域も少なくありません。
市区町村長の申立て件数は増加傾向にあり、成年後見人制度の認知度とニーズは高まっていると考えられます。各地域では「成年後見人制度支援事業」が実施され、制度を利用したくても親族がいない方や、経費を負担できない方の申立てを市区町村長が行うことができるのです。
申立て状況の多くが認知症を占めることからも、制度の背景には超高齢化社会の問題が深く関係しているといえるでしょう。
申立てから開始までは約4か月
成年後見人制度は、必要になってもすぐに利用できるわけではありません。家庭裁判所に申立てを行い、審判を受ける必要があります。本人にとって本当に後見制度が必要なのか、医師によって鑑定される場合もあるでしょう。
そのため、申立てから開始までの期間は、およそ3~4か月になると言われています。これらの期間をふまえ、必要な場合はなるべく早めの対応を検討しましょう。
「法定」「任意」2つに分かれる後見人制度
成年後見人制度は、「法定後見制度」と「任意後見制度」に分類されます。法定後見制度はさらに「後見」「補助」「保佐」の3つに分かれ、本人の事情に応じて選択できるのが特徴です。
また、任意後見制度は、誰にでも将来訪れるかもしれない「もしものとき」に備える制度です。公正証書を作成し、本人の判断能力が低下したときに後見人が代理契約をすることが可能となります。
判断能力に応じた「法定後見人制度」

法定後見人制度は、本人の判断能力に応じ、3つの制度から選ぶことができます。
- 制度1.判断能力が欠けている方に「後見」
- 制度2.判断能力が不十分な方に「補助」
- 制度3.著しく不十分な方に「保佐」
申立てに必要な費用と合わせ、それぞれの内容を確認していきましょう。
制度1.判断能力が欠けている方に「後見」
後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などにより、正しい判断が常に困難な方が対象となる制度です。成年後見人制度のなかで、もっとも希望する方の多い制度となります。
ポイントは、法律行為に関わる契約を代理できるようになることです。また、本人に不利益な契約の取り消しも可能となります。
制度2.判断能力が不十分な方に「補助」
補助制度は、軽度の認知症や知的障害、精神障害を持つ方のための制度です。選任された「補助人」には、同意権・取消権・代理権などが与えられます。これらの権利を得ることで、本人に代わり契約を取り消したり、代理で行ったりすることが可能です。ただし、自己決定を尊重するため、食料品や衣料品の購入といった行為に関しては補助人の同意は必要ありません。
制度3.著しく不十分な方に「保佐」
保佐制度は、精神上の障害により、判断能力が著しく低下した方を守るための制度です。家庭裁判所から選ばれた方は「保佐人」と呼ばれます。保佐制度を利用すると、保証人になったりお金を借りたりといった法律行為に、保佐人の同意が必要となります。
法定後見人申立てに必要な費用
法定後見人開始の申し立てには、以下の費用が必要となります。
- 申立手数料(収入印紙) 800円
- 登記手数料(収入印紙) 2,600円
さらに、後見と保佐には、必要に応じて判断能力を確認するため医師の鑑定が必要です。2019年度(令和元年度)の調査によると、54.9%が鑑定費用にかかった額は5万円以下だったと回答しています。5~10万円以下だったという回答と合わせると、その割合は全体の約9割です。
また、申立てには戸籍謄本や登記事項証明書、診断書といった書類が必要となります。これらにも費用がかかるため、事前に用意する書類は家庭裁判所に確認しておきましょう。
【参考】裁判所「平成31年1月~令和元年12月成年後見関係事件の概況」
将来に備える「任意後見人制度」

任意後見人制度は、自分に判断能力があるうちに将来に備えて代理人を選んでおく制度です。自分の生活や介護に関する契約や、財産管理についての代理権が「任意後見人」に与えられます。
実際に代理契約をする場合には、家庭裁判所に「任意後見監督人」を選任してもらわなくてはいけません。任意後見監督人は弁護士が務めることが多く、後見監督のもと契約を行うことで、適切な保護や支援が可能となります。
任意後見人申立てに必要な費用
後見人制度と異なり、任意後見人の申立てには、公正証書作成を含む以下の費用が必要となります。
- 公正証書作成手数料 11,000円
- 登記嘱託手数料 1,400円
- 納期所に納付する印紙代 2,600円
そのほか、本人に交付する証書代や、登記嘱託書の郵送料などが必要です。原則として鑑定は義務付けられていないため、比較的費用が抑えられるといえるでしょう。
「成年後見人制度」手続きの手順

成年後見人制度の手続きは、以下のような手順で進められます。
- 手順1.診断書などの書類を揃える
- 手順2.家庭裁判所に申立てをする
- 手順3.審問・調査・鑑定を受ける
- 手順4.後見人選任の審判を受ける
申立てから開始までは4か月程度必要なため、利用を検討する際はあらかじめ手順をよく確認しておきましょう。
手順1.診断書などの書類を揃える
家庭裁判所に制度を利用したいこと伝え、申立てに必要な書類を確認します。利用する制度によって異なりますが、後見制度に必要な書類には、次のようなものがあげられます。
- 家庭裁判所から得た申立書
- 本人の戸籍謄本
- 本人の財産に関する資料
- 年金額決定通知書、給与明細書、確定申告書といった本人の収支に関する資料
- 施設利用料、入院費、納税証明書といった本人の支出に関する資料
- 本人の診断書
- 本人の住民票または戸籍附表
- 本人の介護保険認定書、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、身体障害者手帳などの写し
- 成年後見人候補者の住民補油または戸籍附票
- 裁判所で得られる本人情報シートの写し
- 法務局などで発行される成年被後見人に登記がされていないことの証明書
各制度に必要な書類は、家庭裁判所によっても異なります。申立てとともに提出しなくてはいけない書類も多いため、事前によく確認しておきましょう。
手順2.家庭裁判所に申立てをする
必要な書類を添えて、申立てを行います。申立先は後見人を希望する方ではなく、制度を利用する本人が居住する地域の家庭裁判所となるため注意しましょう。
手順3.審問・調査・鑑定を受ける
申立て後は、裁判所の職員が、申立人や後見人候補者などに事情を確認します。正確に情報を把握するため、本人の親族に候補者についての調査を行うこともあるでしょう。また、必要に応じ、裁判官から審問が行われます。さらに、後見制度や保佐制度には医師による鑑定が必要です。
手順4.後見人選任の審判を受ける
前述したように、後見人は家庭裁判所によって最も適任だと思われる人物が選ばれます。そのため、親族が後見人を希望しても、必ずしも希望が通るわけではありません。事情に応じ、弁護士や司法書士、社会福祉士などの第三者が選任されることもあります。後見人には報酬が支払われますが、仕事内容を検討したうえで、報酬額も家庭裁判所が決定することになります。
成年後見人制度のメリット

判断能力が低下した方にとって、成年後見人制度の利用は次のような3つのメリットを生むと考えられます。
- メリット1.契約の取り消しを依頼できる
- メリット2.財産管理を依頼できる
- メリット3.各種代理契約を依頼できる
それぞれの内容について、詳しく掘り下げていきましょう。
メリット1.契約の取り消しを依頼できる
認知症や精神障害など判断能力が低下した方に心配されるのが、自ら不利益な契約をしてしまうことです。家族の知らない間に、高額商品を購入するケースも見受けられます。
そのようなときにも、成年後見人制度を利用すれば後から契約を取り消すことが可能です。判断能力が低下した方を保護するという、制度の大きな目的のひとつともいえるでしょう。
メリット2.財産管理を依頼できる
成年後見人制度を利用すると、不動産や預貯金といった財産管理を後見人に依頼できます。元気なうちから後見人と契約を結んでおけば、自分の判断力が低下した場合にも資産を守ることが可能です。家庭裁判所の判断により監督人が選任されれば、身近な人が財産を使い込んでしまうというケースを防ぐこともできます。
メリット3.各種代理契約を依頼できる
身体状況に応じて介護が必要になると、介護サービスの利用を検討しなくてはいけません。在宅生活が困難になった場合には、介護施設に入所する必要もあるでしょう。
そのようなときにも、判断能力が低下した方に代わり、後見人が代理契約を行えます。ここで注意したいのが、後見人はあくまでも代理契約を行う人であり、介護者ではないということです。そのため、身の回りの世話や買い物といった、日常生活の支援はできないことを覚えておきましょう。
成年後見人制度のデメリット

成年後見人制度には、主に金銭面でのデメリットが考えられます。
- デメリット1.申立てには費用がかかる
- デメリット2.後見の報酬が必要な場合も
契約してから困惑しないためにも、制度を利用する前にあらかじめデメリットを把握しておきましょう。
デメリット1.申立てには費用がかかる
前述したように、申立てには一定の費用が必要になります。後見制度や保佐制度では、原則として鑑定手続きを行わなくてはいけません。もっとも負担が大きいのも、家庭裁判所が医師に依頼する鑑定費用となります。
費用負担が困難な方は、市区町村の支援事業を利用できる場合もあります。援助されるのは、申立てに必要な手数料や登記手数料、鑑定費用などです。
申立ては司法書士や弁護士に委任することもできますが、その場合にもまとまった額の委任料が必要となることを覚えておきましょう。
デメリット2.後見の報酬が必要な場合も
選任された後見人には、一定の報酬が必要です。報酬額は裁判官が個々の事案に応じ、事務内容や管理する財産の内容を考慮して決定します。
親族が後見人となった場合には、報酬を支払わないことも可能です。しかし、その場合、親族は無報酬で必要な事務を行わなければなりません。報酬額の目安は管理する資産額によって決定し、月額2~6万円になるといわれています。
【参考】東京家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」
成年後見人制度の事例

成年後見人制度には3つの種類があり、症状に合わせて選択できるのは前述したとおりです。さらに、場合によっては親族以外が後見人となることもあります。ここから紹介するのは、裁判所の資料をもとにした5つの事例です。
- 事例1.認知症の夫に「後見」制度を利用
- 事例2.認知症の父に「保佐」制度を利用
- 事例3.軽度認知症の父に「補助」制度利用
- 事例4.親族以外が後見人となった事例
- 事例5.任意後見制度を利用し監督人を選任
それぞれのケースについて具体的に知ることで、もしものときにも必要に応じた対処が可能となるでしょう。
事例1.認知症の夫に「後見」制度を利用
申立人の夫である男性は、数年前からアルツハイマー型認知症を患っていました。近年はだんだんと症状が重くなり、家族の顔も判別できないほどに…。そのため、ここ数年は入院生活を送っていました。
ある日、本人の弟が当然事故死し、男性が弟の財産を相続することとなります。しかし、弟に残されていたのは負債だけでした。認知症である夫には、判断することはできません。妻は後見人となり、相続放棄することを希望しました。
【参考】法務省「成年後見人制度」
このように、後見制度は相続を放棄するというケースにも利用できます。一方で、アパートのような資産を相続し、運営管理を開始することも可能です。それぞれの事情によって、司法書士や弁護士などが選任されることもあるでしょう。
事例2.認知症の父に「保佐」制度を利用
本人は住み慣れた自宅で一人暮らしをしていましたが、最近は認知症の症状が進行し、長男家族と同居することとなりました。長男の住宅は隣県にあり、これまで住んでいた自宅は老朽化しています。
そのため、長男は自宅の土地と建物を売りたいと考え、保佐開始の審判の申立てと、代理権付与の審判申立てを行いました。
保佐人となった長男には、同時に代理権が付与されます。結果、自宅を売却する手続きが可能となりました。
【参考】法務省「成年後見人制度」
こちらのケースのように、保佐制度は中程度の認知症や精神障害に利用される制度です。さらに、保佐人が代理権を得るためには、代理権付与の審判を申立てる必要があります。また、代理権を付与することについて、本人が同意していなくてはいけません。さらに、保佐人の同意なしに行った契約は、本人や保佐人があとから取り消すことが可能になっています。
事例3.軽度認知症の父に「補助」制度利用
長男と同居している男性には、最近たびたび物忘れのような症状が現れるようになりました。ある日、長男が留守の間に、訪問販売員から高額な商品を購入してしまいます。困った長男が検討したのが、補助制度です。さらに、同じようなことが起こらないよう同意権付与の審判を合わせて申立てました。同意の対象は、父の高額な買い物についてです。
補助制度が開始されると、男性は自分の意思のみでは一定額以上の買い物はできないこととなりました。また、長男の同意を得ず高額な買い物をした場合には、契約を取り消すことも可能です。
これらの補助制度が開始され同意権が付与されたことにより、長男の不在時に父が不要な買い物をしてしまうという心配が解消されました。
【参考】法務省「成年後見人制度」
補助制度を利用すると、こちらの事例のように特定の法律行為について同意権や取消権、代理権を得ることができます。判断能力の低下が軽度であり、保護や支援したい目的がはっきりしている場合に有効な制度です。
事例4.親族以外が後見人となった事例
本人は20年前に統合失調症を発症し、長期間入院生活を続けています。最近は徐々に知的能力が低下し、障害認定1級を受け障害年金を受給するようになりました。ある日、母が自宅やアパートを残し亡くなってしまいます。男性はそれらを相続することになりました。
しかし、判断能力の不確かな男性はアパートを管理することができません。また、現在の親族は、叔母(母の姉)のみです。叔母はアパートの管理を引き継ぐため、後見人になることを希望しました。
審判を行った家庭裁判所は、遠方に住む叔母に対し後見人に適していないと判断します。代わりに、成年後見人として司法書士を選任。司法書士は、不動産登記手続きの管理を行うことになりました。あわせて、一般社団法人が成年後見監督人として選任されました。
【参考】法務省「成年後見人制度」
親族ではなく、第三者が成年後見人として選任されたケースです。第三者には弁護士や社会福祉士なども考えられますが、この事例では、必要な後見事務に合わせて司法書士が選任されました。さらに、成年後見監督人が選任されたより、本人にとってより適切な保護および支援が可能となっています。
事例5.任意後見制度を利用し監督人を選任
制度を利用する男性は、長年にわたりアパートの管理をしてきた人物です。また、判断能力が低下した場合に備え、長女を後見人とした任意後見制度を完了していました。ある日、男性は脳梗塞で倒れ左半身に麻痺が残ってしまいます。さらに、認知症によりアパートの管理が難しくなってしまいました。
後見人である長女は、父に代わってアパートを管理するために申立てを決意します。任意後見制度では、家庭裁判所から監督人を選任してもらわなくてはいけません。今回のケースでは、弁護士が任意後見監督人に選任されました。
長女は任意後見人として、アパート管理や父の身上監護における事務を実施。あわせて、弁護士である任意後見監督人が、適正に事務が行われているかを監督する運びとなりました。
【参考】法務省「成年後見人制度」
判断能力があるうちに後見人と契約を結ぶ任意後見制度は、いざというときに頼りになる制度です。事例のように任意後見監督人を選任し、第三者の監督のもとより適切な支援を行うことができます。
認知症の方や家族を支える成年後見人制度

成年後見人制度は、認知症や精神障害などで判断力が低下した方を支える制度です。誤って不当な契約を結んでも、後から取り消しが可能となります。
知的障がい者や発達障がい者の子を持つ親にとっては、自分たちが亡くなった後の資産管理は不安なものです。そのようなときにも、成年後見人制度を利用すれば子どもの将来を支援していくことができます。もしもに備え任意後見人制度を結ぶことは、将来的に資産管理する方の負担軽減にもつながるでしょう。
個々のケースに応じた制度を利用するためには、内容について正しく把握しておくことが大切です。申立て先は家庭裁判所となるため、利用を希望する際は問い合わせを検討してみましょう。




