お役立ちコラム
介護施設(老人ホーム)の医療対応はどこまで?介護施設ごとの医療行為を解説
目次

親の介護中に、医療対応が必要な状況に直面することは少なくありません。そんなとき、どのような介護施設を選べばよいのか、悩む人も多いでしょう。
本記事では、介護施設(老人ホーム)ごとに提供される医療行為や医療ケアについて詳しく解説します。
医師、看護職員、介護職員がそれぞれどのような医療行為を行うのか、また介護施設の種類によってどのような医療対応が可能なのかを知ることで、最適な施設選びにつながります。
医療行為・医療ケアとは

医療行為とは、主に医師が医学的な判断や技術を用いて行う行為のことを指します。ただし、特定の条件下では、介護職員による一部の医療行為が許可されるケースもあります。
一方、医療ケアは日常生活に必要な医療的な生活援助のことです。例えば、血圧測定や服薬管理などが医療ケアに含まれます。これらは医療系の免許がない人でも、家庭や老人ホームで行える処置です。
そのうえで、介護施設で提供される医療行為や医療的ケアは、次の3つに分けられます。
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医師が行う医療行為
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看護職員が行う医療行為
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介護職員が行う医療的ケア(特定行為など)
次項で、これらの医療行為・医療ケアについて詳しく解説します。
介護施設(老人ホーム)で受けられる一般的な医療行為・医療ケア

介護施設(老人ホーム)では、入居者の健康を維持するためにさまざまな医療行為や医療ケアが提供されています。これらは医師、看護職員、介護職員といった職種ごとに専門性に応じた内容が法的に定められています。
特に介護施設(老人ホーム)によって提供可能な医療ケアの範囲は異なるため、入所を検討する際には事前に施設の医療対応について詳しく確認することが重要です。
医師が行う医療行為
介護施設で医師が行う医療行為は、「診察および経過の観察」「注射・点滴」「人工透析」「処方せんの発行」「応急処置」の5つです。これらは、医師にしか認められていない専門的な行為です。
しかし、介護施設では、医師であってもこれらの医療行為は極めて限定的にしか実施できません。病院での専門的な医療行為は施設内では受けられないため、持病で注射や点滴などが日常的に必要な場合は、施設内に病院やクリニックが併設されている施設を選ぶようにしましょう。
看護職員が行う医療行為
施設に配置されている看護職員に認められている医療行為は、主に次の9種類です。
■インスリン注射
インスリン注射とは、血糖値を下げるインスリンを注射する治療法です。入居者の状態に応じて、異なる種類のインスリンを1日につき1~4回注射します。そのほか、投与前後に血糖値管理も行います。
■中心静脈栄養
中心静脈栄養とは、食事での経口栄養摂取が困難な場合で、かつ消化器官の機能も衰えている場合に、心臓付近の静脈に点滴から栄養を注入する方法のことです。高カロリー輸液を注入し、1日に必要なエネルギーを摂取できます。
■経管栄養(胃ろうなど)
経管栄養とは、胃や腸に設置したカテーテルに栄養剤などを注入する行為です。嚥下機能が低下している状態で口から飲食物を無理に摂ろうとすると、誤嚥性肺炎につながる恐れがあるため、経管栄養によって胃や腸に直接栄養剤を注入します。
■痰(たん)の吸引
痰の吸引とは、専用の吸引機を使って定期的に痰を排出する行為です。痰が詰まることによる窒息を防ぐために行います。
■人工呼吸器の管理
HMV(在宅人工呼吸器)とは、自宅・老人ホームで使用する人工呼吸器のことです。心肺機能や筋肉、神経などの持病を持つ人などの生活の質改善が主な目的です。
■床ずれ・褥瘡(じょくそう)への処置
褥瘡はいわゆる床ずれのことです。寝たきりなどでベッドと接触する身体部位の血流が悪化することで、皮膚や皮下組織、筋肉などが壊死してしまう症状を指します。
■在宅酸素療法(HOT)
在宅酸素療法はHOTとも呼ばれ、慢性心不全や慢性呼吸不全などの影響で、体内に酸素を自力で取り込めなくなった場合に利用する治療法です。酸素ボンベを自宅や老人ホームに設置し、鼻のチューブから酸素を吸引します。
■ストーマ装具の貼り替え
ストーマとは人工肛門・人工膀胱のことで、専用の袋(パウチ)に排泄物を溜めます。
■導尿・膀胱留置用カテーテルの管理
導尿・膀胱留置用カテーテルとは、排尿障害に対する対処法で、尿道にカテーテルを挿入し、膀胱内の尿を排出します。
介護職員が行う医療的ケア
介護職員が行う医療的ケアは、主に日常生活のサポートに関連したものが中心です。
具体的には、体温測定や自動血圧測定器を使用した血圧測定、軟膏の塗布、湿布の貼付、軽い傷への絆創膏の貼付、内服薬を飲む際の介助、目薬の点眼、座薬の挿入、鼻腔に薬を噴射する際の介助が含まれます。
これらのケアは、介護職員が日常的に提供するケアの一部として、利用者の健康をサポートします。また、認定特定行為業務事業者の認定を受けた介護福祉士であれば、痰の吸引や経管栄養といった医療行為も行うことが可能です。
医療行為・医療ケアが可能な介護施設(老人ホーム)

介護施設(老人ホーム)を選ぶ際、医療行為や医療ケアがどの程度可能であるかは重要なポイントです。施設の種類によって、提供される医療サービスには大きな違いがあるためです。
ここでは、介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)、介護医療院、有料老人ホームなど、医療行為・医療ケアが可能な介護施設(老人ホーム)の特徴について解説します。施設ごとの特徴を把握して、必要な医療ケアが受けられる環境を選べるようになりましょう。
介護老人保健施設(老健)
介護老人保健施設(老健)は、退院後すぐに在宅生活に戻るのが難しい高齢者が利用する施設で、リハビリを重視しています。在宅復帰を目的としているため、他の介護施設に比べて入所期間は短いのが特徴です。
医師や看護師、理学療法士などの専門職が常駐しており、質の高いリハビリを受けられます。医療行為の充実度も高く、医師や看護師の人員配置基準が整っているため、医療対応が必要な方にも適しています。
<医師・看護師の人員配置基準(入居者に対して配置すべき介護職員の人数を定めた指標)と医療行為の充実度>
| 医師 | ○ |
|---|---|
| 看護師 | ○ |
| 医療行為の充実度 | ○ |
特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホーム(特養)は、主に要介護3以上の高齢者を対象とした介護施設です。医師や看護師が配置されており、医療対応が比較的充実しています。ただし、医師は配置義務があるものの、常勤しているとは限らないため、施設の選定時には確認が必要です。
また、特養では看取り対応が可能な場合が多く、終末期ケアにも対応しています。要介護度1~2の人が入所するには特別な許可が必要なため、事前に相談することをおすすめします。
<医師・看護師の人員配置基準(入居者に対して配置すべき介護職員の人数を定めた指標)と医療行為の充実度>
| 医師 | ○ |
|---|---|
| 看護師 | ○ |
| 医療行為の充実度 | ○ |
介護医療院
介護医療院は、2018年4月に創設された新しいタイプの施設で、介護が必要な高齢者が長期にわたって療養・生活するための施設です。要介護1から5の認定を受けた人が対象で、特定の疾病がある方は64歳以下でも利用可能です。
多くの介護医療院では、医師が24時間常駐している場合があり、特別養護老人ホーム(特養)に比べて手厚い医療ケアを受けられます。親の体調がすぐれない場合や、医療対応が必要な状況では、介護医療院の入居を検討することをおすすめします。
<医師・看護師の人員配置基準(入居者に対して配置すべき介護職員の人数を定めた指標)と医療行為の充実度>
| 医師 | ○ |
|---|---|
| 看護師 | ○ |
| 医療行為の充実度 | ○ |
有料老人ホーム
有料老人ホームは、介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)に比べると、比較的費用が高い傾向にあります。しかし、その分、充実した介護サービスを受けられるメリットがあります。多くの施設では看取り対応が可能です。
施設によって提供されるサービス内容は異なり、リハビリテーションを重視する施設や設備が充実している施設など、希望に沿った選択ができます。医師の常駐はありませんが、看護師が配置されており、日常の健康管理や緊急時の対応がなされます。ただし、医療行為の充実度には施設によって差があるため、事前に確認が必要です。
有料老人ホームの種類によっても人員基準が異なるため、入居を検討する際は、具体的な介護内容や医療対応の詳細を確認し、自分の希望に合った施設を選びましょう。
<医師・看護師の人員配置基準(入居者に対して配置すべき介護職員の人数を定めた指標)と医療行為の充実度>
| 医師 | × |
|---|---|
| 看護師 | ○ |
| 医療行為の充実度 | △ |
介護施設(老人ホーム)に入所して医療行為・医療ケアを受けるメリット・デメリット

介護施設(老人ホーム)に入所すると、継続的な医療ケアが受けられるため、親の体調がすぐれない場合でも安心です。
医師や看護師が常駐している施設では、急な体調変化にも迅速に対応できます。ただし、施設によっては医療対応が限定される場合もあり、医療機関との連携が重要です。
ここでは、介護施設(老人ホーム)に入所して医療行為・医療ケアを受けるメリット・デメリットについて解説します。
メリット
介護施設(老人ホーム)に入所して医療行為・医療ケアを受けるメリットには、次のようなものがあります。
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介護だけでなく医療ケアも受けられる
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リハビリが受けられる
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レクリエーションや季節の行事がある
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看取りまで対応してもらえる
介護施設(老人ホーム)では、介護だけでなく医療ケアも受けられる点が大きなメリットです。特定の施設では、看護師が24時間常駐しており、入所者は健康状態の安定や急な体調変化にも迅速に対応してもらえます。
緊急時には病院との連携により適切な対応が可能です。そのほか、医療スタッフによる継続的な体調管理も行われ、必要な治療やケアが適切に提供されるため、入所者とその家族にとって大きな安心感をもたらします。
さらに、看取りまで対応してもらえる施設もあり、最期まで必要な医療と心のケアが提供される環境が整っています。
また、施設内ではレクリエーションや季節の行事が行われるため、入所者は楽しみながら社交性や生活の質を向上させることが可能です。
デメリット
介護施設(老人ホーム)に入所して医療行為・医療ケアを受けるデメリットには、次のようなものがあります。
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施設生活における制約がある
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経済的な負担がかかる
施設に入居すると、自宅で過ごすように自由に行動できるわけではありません。入所先のルールに従う必要があるため、なかにはストレスを感じる人もいます。さらに、自宅で過ごすように家族といつでも自由に交流できるわけではないため、孤立感を抱く人もいます。
また、介護施設での医療行為には費用が必要です。費用が高額になると、家計に影響を及ぼす場合もあることはあらかじめ理解しておきましょう。
医療行為・医療ケアを重視した介護施設(老人ホーム)を選ぶ際のチェックポイント

医療行為・医療ケアを重視した介護施設(老人ホーム)を選ぶ際に、押さえておきたいポイントがあります。主なポイントは、次の6点です。
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医師・看護職員の人員配置基準
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医療機関との連携体制や距離
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送迎サービスの有無
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服薬支援の有無
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入院した場合の対応
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看取り対応の有無
親の体調が不安定な場合、迅速な対応が求められます。これらの要素をしっかりとチェックし、安心して任せられる施設を選びましょう。
医師・看護職員の人員配置基準
介護施設(老人ホーム)を選ぶ際には、医師や看護職員の人員配置基準を確認することが重要です。人員配置基準とは、適切な介護サービス・ケアを提供するために入居者に対して配置すべき介護職員の人数を定めた指標のことです。
職員の配置基準は介護施設(老人ホーム)の種類ごとに異なります。どのような医療行為を必要としているかによって、適切な施設も変わるため、医師・看護職員の人員配置基準をあらかじめ確認したうえで施設を選ぶことが大切です。
医療機関との連携体制や距離
介護施設(老人ホーム)を選ぶ際には、提携する医療機関との連携体制や距離が重要なポイントです。
入居者の健康状態が施設で対応できない場合、速やかに治療や入院が必要になります。提携先の医療機関がどの程度の治療を提供できるのか、入院が可能かどうかを事前に確認しておくことが重要です。
また、提携医療機関が施設の近くにあると、緊急時の対応が迅速になり、安心感が増します。特に医療機関が併設されている場合、夜間や緊急時の対応が可能なケースが多く、医療対応の充実度が高まります。
送迎サービスの有無
介護施設(老人ホーム)によっては、医療機関への送迎サービスを提供しているところがあります。送迎サービスがない場合には、家族が送迎を担当したり、介護タクシーを手配したりする必要が出てきます。
その点、送迎サービスがあれば、通院にかかる費用や手間を軽減できるため、便利です。ただし、施設によっては送迎サービスが有料の場合もあるため、事前に確認するようにしましょう。
特に、持病や人工透析などで定期的に医療機関への通院が必要な場合には、施設が送迎サービスを提供しているかどうかを確認しておくことが重要です。
服薬支援の有無
介護施設(老人ホーム)では、入居者の持病や健康状態に応じて、薬の管理や服薬支援を行っているところもあります。具体的には、次のような支援が挙げられます。
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入居者のお薬手帳を確認し、薬の飲み忘れや過剰摂取を防ぐために、お薬カレンダーを作成する
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軽度の要介護者に「お薬を飲みましょう」といった声かけを行う
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重度の人や認知症の人の場合には、直接介護を行い薬を確実に服用できるようにする
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誤嚥を防ぐために、服薬前に水を飲んでもらうようにする
これらの支援があることで、入居者の安全な服薬が可能になります。
入院した場合の対応
入居中に大きな病気や怪我をした場合は、病院への入院が必要です。その際、入居者の家族が日用品を届けたり、洗濯物を交換したりする必要がありますが、一部の介護施設(老人ホーム)では、こうした生活支援を代行してくれることがあります。生活支援を代行してくれると、家族の負担軽減にもつながります。
ただし、施設によっては「入院期間が3か月以上になる場合、契約を解除する」といった規定を設けているところや、退院後に医療ケアが必要となった場合は、別の施設への住み替えが求められる可能性もあるため、事前に確認しておくことが大切です。
看取り対応の有無
介護施設(老人ホーム)で最期を迎えたいと考えている場合は、看取り対応が可能な施設を選ぶことが重要です。看取りとは、延命治療を行わず、自然な形で死を迎えるためのケアを指します。
看取り対応ができない施設では、入居者の健康状態や病状が悪化した際には退去を求められることが一般的です。看取りは本人にとっても家族にとっても大切な瞬間のため、安心してその時を迎えられるよう、事前に施設に確認をしておくことをおすすめします。
医療行為・医療ケアを受けられる介護施設(老人ホーム)の探し方

医療行為・医療ケアを受けられる介護施設(老人ホーム)の探し方には、いくつかの方法があります。具体的な方法は、次の3つです。
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自治体に問い合わせる
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病院の医療連携室で相談する
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インターネットを活用する
適切な介護施設(老人ホーム)をスムーズに見つけられるように、それぞれの方法について理解を深めておきましょう。
自治体に問い合わせる
介護施設への入所を検討する際には、まず自治体に問い合わせることが重要です。公的な施設に入るためには介護認定が必要であり、その手続きや相談は地元の自治体の窓口や地域包括支援センターで行います。
特に、介護保険課やケアマネジャーに相談することで、介護認定の取得や介護度の変更が必要かどうかを確認できます。
病院の医療連携室で相談する
入院中であれば、病院の医療連携室で相談する方法もあります。医療連携室にはソーシャルワーカーが常駐しており、状況に合った介護施設の案内や手続きのサポートを受けられます。
具体的には、施設の選び方や入居に必要な書類についてなど、個別の状況に応じたアドバイスを得られるため、退院後の生活に不安がある場合は早めに相談してみましょう。
インターネットを活用する
インターネットを活用する方法も有効です。インターネット上では、施設の口コミや評価を簡単に確認できるため、実際の利用者の声を参考にしながら選べます。
また、民間の紹介サイトを利用するのも一つの方法です。これらのサイトでは、施設の特徴や提供される医療ケアの内容を比較でき、希望に合った施設のサポートになります。
さらに、新聞や折り込みチラシ、パンフレットなどを活用することもおすすめです。これらの媒体からは、地元の介護施設に関する情報を得ることができるため、生活エリアに合った条件の施設を見つけやすくなります。
介護施設(老人ホーム)で受けられる医療行為・医療ケアについて理解しておこう

介護施設(老人ホーム)における医療行為や医療ケアは、入居者の健康状態を維持し、生活の質を向上させるために欠かせません。ただし、施設ごとに提供される医療サービスは異なるため、あらかじめ具体的な内容について確認しておくことが重要です。
また、自分に合った介護施設(老人ホーム)にたどり着くためには、自治体への問い合わせや病院の医療連携室での相談が有効です。医療行為・医療ケアの違いや医療行為・医療ケアが可能な介護施設(老人ホーム)の特徴を踏まえ、スムーズに施設選びを進めていきましょう。




