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エピソード07夫婦で過ごす時間をつなぐ—パーキンソン病と向き合いながら
父と母が福山市の施設にお世話になることになったのは、突然の出来事でした。母はパーキンソン病を患い、長年暮らしてきた滋賀県での生活が難しくなっていました。そして、父が白血病と診断され、余命数ヶ月と宣告されたとき、母をひとりにすることはできないと強く思いました。
父の病状が悪化する中、母が身寄りのある福山市で暮らせるようにと、家族で施設を探しました。しかし、母は症状が重く、移動手段の確保が大きな課題でした。介護タクシーの利用も難しい状況の中、施設のスタッフの方々が公共交通機関を使った移動を提案し、新幹線や在来線を使いながら、母を無事に福山市へ迎え入れてくださいました。
母が施設に入居したのは、父と再び一緒に過ごすためでした。父の退院が許可されれば、夫婦で施設での生活を始める予定でした。しかし、その矢先、父の病状が急変し、医師から「あと1週間も持たないかもしれない」との知らせを受けました。
「もう一度、夫に会いたい」
母の願いを叶えたいと思いながらも、再び長距離移動をすることに不安がありました。しかし、施設のスタッフの皆さんは迷うことなく母に付き添い、再び滋賀へ向かう準備をしてくださいました。JRの職員の協力を得ながら、母はなんとか父の元へ到着しました。
父と母が最後に顔を合わせたとき、母の表情は安堵に満ちていました。父の手を握り、わずかに言葉を交わすことができたことで、母は「もう大丈夫」と少しだけ前を向くことができたようでした。
福山に戻った後、母の症状はさらに悪化し、パーキンソン病の専門医療機関で治療を受けることになりました。その間に父は息を引き取りましたが、最期に会えたことが母にとっても家族にとっても、何よりの救いになりました。
退院後、母の生活をどう支えるかが新たな課題となりました。施設の皆さんは母の「自分でできることを周囲に認めてほしい」という気持ちを尊重しながら、治療やリハビリを支えてくださいました。最新のセンサー技術を活用し、バイタル管理や睡眠、食事量などを細かく記録することで、より適切なケアを受けることができるようになりました。
現在、母は地域のパーキンソン病の会に参加し、リハビリやデイサービスを通じて少しずつ前向きな生活を取り戻しつつあります。
施設の皆さんが、単なる介護の枠を超えて、母の「ありたい姿」を支え続けてくださっていることに、家族として心から感謝しています。
ご不明な点は、お気軽にお問い合わせください。