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エピソード07もう一度、食べる喜びを—支えられた私の再出発
私は長い間、食事をほとんど取れず、栄養は総合栄養食品を飲むことで補っていました。それだけの生活が続き、体力も落ち、以前のような元気はすっかりなくなっていました。
入居後も、最初のうちは総合栄養食品を飲んでいましたが、次第に飲むのも難しくなっていきました。そんな私を見て、家族は「延命治療はしない」と考えていたものの、施設で過ごす私の表情が穏やかになっているのを見て、「まだできることがあるのでは」と思うようになったそうです。そして、医師と相談し、点滴を受けるために入院することになりました。
入院中は熱が出ることが多く、なかなか点滴のためのCⅤポートを作ることができませんでした。気づけば、体力はますます落ち、ベッドに座ることすらできない状態になっていました。それでも、ようやくCⅤポートの処置が終わり、再び施設での生活が始まりました。
退院後は経腸栄養剤(高カロリー飲料)と点滴を併用しながらの生活。正直、自分でも「これからどうなるのだろう」と思っていました。でも、施設のスタッフの皆さんが「せっかくなら、食堂で他の方とお話ししながら飲んでみませんか?」と声をかけてくれました。最初は気が進まなかったものの、話し相手がいると少し気が紛れることに気づきました。話が弾むうちに、「もっと元気になりたい」「もう一度、自分らしく過ごしたい」という気持ちが少しずつ湧いてきたのです。
そして、ある日、自分から「食事を食べてみたい」と言いました。スタッフの方が嚥下状態を確認しながらお粥を準備してくれ、私は1年ぶりにスプーンを口に運びました。たった3口のお粥でしたが、私にとっては大きな一歩。食堂にいたスタッフの皆さんが拍手をしてくれた時、思わず涙がこぼれました。「また食べられるかもしれない」と思った瞬間でした。
そこから少しずつ食事量が増え、やがてお粥をすべて食べられるようになり、副菜も半分ほど食べられるようになりました。そして、ついに点滴が不要に。さらに、起き上がりや車いすへの移動も一部の介助でできるようになり、自分でも驚くほど身体が動くようになりました。
今では、食堂で過ごす時間が私にとっての楽しみになっています。話し相手ができ、笑顔が増え、まるで別人のようだと家族も驚いています。これからも、自分のペースで前向きに過ごし、いつか家族と一緒に外食に行ける日を夢見ています。
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