お役立ちコラム

親の介護が必要になったとき、遠方に住んでいる場合の選択肢の一つが遠距離介護です。この記事では、遠距離介護を始める前に知っておくべき事前準備と、メリット・デメリットについて紹介します。

遠距離介護が始まったら最初にやるべきことや、遠距離介護を成功させるためのポイントも紹介するので、参考にしてください。

遠距離介護とは

遠距離介護とは、高齢の親や親族が加齢や病気により日常的なサポートが必要になった際に、離れて暮らす家族が通って介護を行うことです。仕事や家庭の事情で同居による在宅介護や施設入所が難しい場合やお互いのプライバシーを尊重しつつ支え合う形で介護を行いたい場合などに選ばれることが多くなっています。

ここでは、遠距離介護をしている人の割合や遠距離介護を選ぶ理由を解説します。

遠距離介護をしている人の割合

厚生労働省の調査「国民生活基礎調査の概況」によると、別居している家族が介護をする割合は次のように年々変動しています。

  • 2013年:9.6%
  • 2016年:12.2%
  • 2019年:13.6%
  • 2022年:11.8%

2013年には9.6%だった遠距離介護の割合が、2016年に12.2%、2019年には13.6%まで増加しました。2022年には11.8%とやや減少しているものの、長期的には遠距離介護が広がっていることがうかがえます

こうした変化の背景には多様な事情や選択があると考えられます。次項で遠距離介護を選ぶ理由についても見ていきましょう。

参考:厚生労働省「平成25年 国民生活基礎調査の概況 Ⅳ 介護の状況」
参考:厚生労働省「平成28年 国民生活基礎調査の概況 Ⅳ 介護の状況」
参考:厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況 Ⅳ 介護の状況」
参考:厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況 Ⅳ 介護の状況」

遠距離介護を選ぶ理由

介護する側と介護される側、それぞれの事情によって遠距離介護が選ばれています。介護する側の理由としては、仕事や子育てなどで今すぐに住居を移すことが難しいという状況が挙げられます。

一方、介護される側の理由は、長年住み慣れた地域を離れたくないという思いなどです。ここでは、それぞれの立場から見た遠距離介護を選ぶ理由を紹介します。

介護する側の理由

介護する側の理由として、まず職場が実家から遠方にあるため、物理的に遠距離介護を選ばざるを得ないという状況が挙げられます。特に親が70〜80代となると、その子どもは50代で管理職などの重要なポジションにいることも多いため、会社を辞めるという選択肢が難しくなってきます。

また、配偶者や子どもがいる場合、現在の生活拠点を離れるのは難しい選択肢です。これらの理由から、遠距離介護を選択する人が増えています。

介護される側の理由

介護される側である親が遠距離介護を選ぶ理由としては、住み慣れた土地を離れたくないという思いがあります。住み慣れた土地を離れて子どもの暮らす知らない土地へ行くことは、高齢者にとって精神的・肉体的に大きなストレスです。

これまでの生活で築いてきた人間関係や慣れ親しんだ環境を手放すことになるだけでなく、生活環境の変化によって認知症の症状が悪化する可能性もあります。

遠距離介護を始める前に準備しておきたいこと

遠距離介護をスムーズに進めるためには、親の希望や生活リズム、交友関係の把握に加えて、介護サービスや介護施設の情報収集など、事前の準備が非常に重要です。遠距離介護の前に何をすればよいのかわからない人は、こちらを参考に計画的に進めていきましょう。

親の希望を聞く

遠距離介護を始めるにあたって、まず親の希望をしっかりと聞いておくことが大切です。親がどのような環境で過ごしたいのか、どのような介護を望んでいるのかを事前に把握しておくことで、介護が必要になった際にスムーズに対応できるようになります。

親の意見を確認せずに進めると、親の意思とは異なる方向に進んでしまうこともあり、後々のトラブルの原因にもなりかねません。

親の生活リズムや交友関係を把握する

親の生活リズムを把握することは、遠距離介護を円滑に進めるための重要なステップです。まずは、親の起床時間や就寝時間、外出する頻度など、普段の生活パターンを確認しましょう。また、日常生活で困っていることや不安に感じていること、日々の楽しみや趣味についても把握しておくと、介護サービスを利用する際の参考になります。

さらに、親の交友関係を理解しておくことも大切です。普段よく会っている友人や近所の人など、すでに信頼関係を築いている人がいれば、いざというときに頼れる存在となるでしょう。もし近所に親しくしている人がいれば、緊急連絡先を伝えるなど、問題が発生した際に連絡を取れるよう準備しておくとより安心です。

親の経済状況を確認する

遠距離介護を始めるにあたって、親の経済状況をしっかり確認しておくことも重要です。介護保険サービスの利用や施設への入所、通院・入院には、費用がかかります。これらの費用は、基本的に年金や貯蓄など、親の資産でまかなうことが一般的です。

確認すべき主なポイントは、次の通りです。

  • 年金額や預貯金の状況
  • 借金の有無
  • 加入している保険の種類
  • 介護保険証、銀行の通帳や印鑑、生命保険証書の場所

認知症になると、詐欺や悪徳業者の被害に遭うリスクが高まるため、早めの確認が安心につながります。

遠距離介護にかかる費用を把握する

遠距離介護を行う際には、遠距離介護にかかる費用もしっかりと把握しておきましょう。遠距離介護でかかる費用としては、次のようなものがあります。

  • 交通費:実家との往復にかかる交通費
  • 通信費:ケアマネジャーや医療関係者との電話代、ICT機器や緊急通報システムの設置費用や維持費
  • 介護サービス費用:各種介護サービスを受ける際にかかる費用

なかでも、交通費は遠方に住んでいればいるほど、負担が大きくなります。頻繁に訪問する必要がある場合には、費用を具体的に計算しておきましょう。

介護サービスや介護施設の情報を集める

遠距離介護を考える際、親がまだ自立しているうちに介護サービスや介護施設の情報を集めておくことが大切です。施設によって入居条件や費用、運営方針が異なるため、各施設の詳細を早めに調べておくとよいでしょう。

親の健康状態が急変したり、認知症が進行した場合にすぐ対応できるよう、事前に情報を把握しておくと安心です。

まだ介護は必要ないものの介護の相談をしたいという場合には、地域包括支援センターを活用しましょう。介護サービスの利用方法や遠距離介護に関する相談を受け付けており、専門的なアドバイスを受けられます。

ICT機器や緊急通報システムの設置、住宅リフォームを検討する

もしものときに備え、親の自宅にICT機器や緊急通報システムの設置したり、住宅リフォームも検討したりすることも重要です。

ICT機器とは、冷蔵庫や照明といった家電に通信機器を設置し、一定時間使用が確認できないと家族に通知が送られてくるというものです。緊急時のみ通知されるため、プライバシーに配慮しつつ親を見守れます。また、トラブルが発生した際にボタンを押すと警備会社が駆け付けてくれる緊急通報システムの設置も有効です。

住宅の安全性を高めるために、住宅リフォームも検討しましょう。要介護認定を受けている場合、介護リフォームに介護保険が適用され、20万円を支給限度基準額の上限として費用の1〜3割を負担するだけでリフォームが可能です。

具体的には、手すりの取り付けや段差の解消、滑りにくい床材への変更、和式から洋式トイレへの取り替えなどが対象となります。ただし、事前と事後に市役所への届け出が必要です。

参考:厚生労働省「介護保険における住宅改修」

兄弟姉妹間でサポート体制について話し合う

兄弟姉妹がいる場合、遠距離介護を始める前に、介護の役割分担についてしっかりと話し合っておきましょう。遠距離介護は精神的にも肉体的にも負担が大きいため、1人に負担が集中しないよう、協力して取り組む姿勢が求められます。

話し合いの際には、各自の生活状況や能力を考慮し、できることとできないことを明確にしてから、それぞれの役割を決めることが大切です。

遠距離介護のメリット

遠距離介護のメリットは、次の3点です。

  • 親も子も転居の必要がない
  • 介護保険サービスを利用しやすい
  • 介護ストレスを減らせる

遠距離介護をする場合は、親と子がそれぞれの住み慣れた場所から転居する必要がないため、距離を置きつつより良好な親子関係を維持しやすい点が魅力です。

親も子も転居の必要がない

遠距離介護のメリットの一つが、親も子も転居の必要がないことです。親は慣れ親しんだ自宅での生活を続けられるため、安心感を得られます。

子どもも、引っ越しや介護のために仕事を辞める必要がなく、これまでの生活を維持しながら介護を行うことが可能です。介護のために退職してしまうと、再就職が難しくなることが多く、再就職したとしても以前の収入を維持するのが難しい場合があります。遠距離介護であれば、こうした問題を最小限に抑えながら、親の介護をサポートできます。

介護保険サービスを利用しやすい

介護保険サービスを利用しやすいことも、遠距離介護のメリットです。親が認知症や脳疾患の後遺症などで要介護状態になった場合、介護施設の利用を検討することもあるでしょう。遠距離介護をしていると親の生活状況が考慮され、特別養護老人ホームへの入所の優先順位が高くなるケースがあります。

待機者の多い特別養護老人ホームへ、少しでも早く入所できることは遠距離介護の大きなメリットです。

介護ストレスを減らせる

遠距離介護では、介護ストレスを軽減できる点もメリットです。在宅介護の場合、常に親のそばにいるため、介護中心の生活になりがちで、身体的疲労に加えて精神的ストレスも増大する恐れがあります。

しかし、遠距離介護では親との間に適度な距離があるため、介護者自身の生活リズムを崩すことなく、気持ちの切り替えがしやすくなります。

遠距離介護のデメリット

遠距離介護のデメリットとしては、費用がかかることや緊急時の対応が難しいこと、介護状況を把握しづらいことなどが挙げられます。

遠距離介護のデメリットは、金銭的なものや急を要するものなど重要なものが多いため、デメリットに対しての対策をあらかじめ考えておくことが重要です。

費用がかかる

遠距離介護にはさまざまな費用が発生します。まず、通信費です。親の体調を確認するために本人やケアマネジャーと電話でやり取りする際にかかります。

飛行機代や新幹線代など遠距離になればなるほど、交通費もかさみます。さらに、介護サービス費も必要です。親の心身の状態が悪化し、日常生活に支障をきたす場合、介護保険サービスを利用することも多くなります。

遠距離介護を始める際には、これらの費用をしっかりと把握し、事前に予算を立てることが重要です。

緊急時の対応が難しい

遠距離介護では、緊急時にすぐ対応することが難しいというデメリットがあります。親が急病になったり、助けを求められたりした場合でも、すぐに対応できません。さらに、常に親の様子を確認できないため、ちょっとした変化や小さな異変を見逃してしまう可能性もあります。

異変に気づけるように普段から親とこまめに連絡を取り合ったり、緊急時に対応してもらえるようにケアマネジャーや近隣住民とコミュニケーションを図っておいたりすることが大切です。

介護状況を把握しづらい

遠距離介護では介護の場面を直接見られないため、親がどのような介護サービスを利用しているのか、日常的なケアがどのように行われているのかなど、親の介護状況を把握しづらくなります。介護サービスの質や内容について親と日頃から話したり、ケアマネジャーと定期的にコミュニケーションを取るなどして、情報収集に努めましょう。

遠距離介護が始まったら最初にやるべきこと

遠距離介護をスムーズに進めるためには、最初にいくつかの重要なステップを踏むことが大切です。遠距離からでも安心して介護を進められるように最初にやるべきことを理解しておきましょう。

要介護認定の申請を行う

介護保険サービスを受けるためには、要介護認定を受けることが必要です。要介護認定の申請は、最寄りの地域包括支援センターや役所の高齢者福祉窓口で行えます。

申請に必要な書類は、一般的に次の通りです。自治体によって別途必要な書類もあるため、申請の際は事前に確認しましょう。

  • 申請書
  • 介護保険の被保険者証
  • 健康保険の保険証(65歳以下の場合)

申請後、要介護認定の結果が通知されるまでには約1か月かかります。要介護1〜5もしくは要支援1・2と判定されると、介護サービスの利用が可能になります。

担当ケアマネジャーを決める

要介護認定を受けたら、ケアマネジャーを決めます。要介護1~5と認定されて自宅介護が希望の場合は、居宅介護支援事業者にケアマネジャーの選定を依頼しましょう。

要支援1・2の判定が出た場合は、地域包括支援センターのケアマネジャーが担当になります。遠距離介護をスムーズに進めるためには、それぞれの状況に応じて適切なケアマネジャーを選ぶことが重要です。

ケアプランを作成してもらう

担当のケアマネジャーが決定したら、ケアプランを作成してもらいます。ケアプランとは、親が自分らしい生活を続けるために必要な介護保険サービスを計画的に利用するための計画書のことです。

プラン作成にあたっては、親の健康状態や生活環境、家族が離れて暮らしていること、そして帰省できる頻度など、親を取り巻く状況を詳細に伝えることが重要です。これにより、ケアマネジャーが親にとって必要なサービスと不必要なサービスを適切に判断できるようになります。

遠距離介護を成功させるポイント

遠距離介護を成功させるためには、親との継続的なコミュニケーションや事前の準備が重要です。まずは親との定期的なコミュニケーションを心掛け、親の状況を把握するようにしましょう。

また、介護における負担を軽減させるためには、近所の人やかかりつけ医と連携をとったり、高齢者向けサービスや交通費割引サービスを活用したりすることも大切です。遠距離介護を成功させるポイントを5つ紹介します。

親と定期的にコミュニケーションをとる

遠距離介護を成功させるためには、親と定期的にコミュニケーションをとるように心がけましょう。離れて暮らしていても、気にかけてくれる子どもがいることは親にとって大きな安心感につながります。普段から何気ない会話を心がけることで、親の健康状態や生活の変化に気づきやすくなります。

また、親が受けている介護サービスの状況についても確認するようにしましょう。サービスが親の状況に合っていないと感じた場合は、ケアマネジャーに相談して改善を図ることが大切です。

近所の人やかかりつけ医と連携をとる

遠距離介護を成功させるためには、親と日頃から関わりのある近所の方やかかりつけ医の協力も欠かせません。時々、近所の方に親の様子を見に行ってもらえると、親と連絡がつかない場合などに安心感を得られます。

また、ケアマネジャーやかかりつけ医は、親の健康状態を把握する上で欠かせない存在です。定期的に連絡を取り合い、少しでも気になることがあれば相談するようにしましょう。

高齢者向けサービスを利用する

遠距離介護において、介護保険サービスだけでは親の生活全般をサポートするのは難しいこともあります。そこで、見守りサービスや配食サービスなど高齢者向け民間サービスの活用も検討しましょう。

  • 見守りサービス:高齢者の体調不良などの異変があった際に警備会社が迅速に対応してくれるサービス
  • 配食サービス:お弁当を自宅へ配達してくれるサービス。対面で手渡すことで安否確認も行ってくれる業者もある

これらのサービスを活用することで、遠距離に住む親の生活をより安全かつ快適にサポートできます。

交通費割引サービスを活用する

遠距離介護における出費では、交通費が大きな割合を占めます。飛行機代や新幹線代など、遠方になればなるほどかかる交通費も高額になりがちです。少しでも費用を抑えたいときには、交通費割引サービスの活用がおすすめです。

航空各社には、親や祖父母の介護のために航空機を利用する際に料金が割引になる介護帰省割引制度があります。また、鉄道会社では早めに予約することで料金が割引になる早期割引サービスがあります。予定が決まったら、早めにチケットの予約を行うようにしましょう。

勤務先の介護休暇について確認する

遠距離介護を始める際には、勤務先の介護休暇制度について確認しておきましょう。また、介護が始まったら、早めに職場の人事担当や上司に相談しておくことも重要です。それにより、介護休暇の取得や働き方の調整がスムーズになり、同僚からの理解や協力も得やすくなります。

介護休暇では、要介護状態の家族が1人の場合は年間5日、2人以上の場合は年間10日まで取得可能です。介護休業では要介護状態の家族1人に対して通算93日、最大3回に分けて取得できます。

制度をしっかりと理解し、必要なときに適切に活用しましょう。

参考:厚生労働省「介護休暇とは」
参考:厚生労働省「介護休業とは」

遠距離介護の成功には事前準備が大切

遠距離介護を成功させるためには、しっかりとした事前準備が欠かせません。親の希望や生活リズムを把握することはもちろん、経済状況や介護にかかる費用についても確認しておくことが重要です。

また、介護サービスや施設の情報収集、ICT機器の導入、兄弟姉妹とサポート体制を話し合うなど、多角的な準備が必要です。これらの準備を怠らずに行うことで、介護がスムーズに進み、親も安心して過ごせるようになるでしょう。

 

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝

2011年 4月 入社 事業推進部 配属 
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長
2023年 10月 常務取締役 兼 事業本部長 兼 事業推進部 部長