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お役立ちコラム
2025年11月1日
親の介護における兄弟姉妹間での役割分担は?トラブルの原因や回避方法を紹介

親の介護は、特に遠方に住む子どもにとって大きな課題です。親元を離れた自分と、実家近くに住む弟や妹たちとの間で、どのように役割分担をすればスムーズに進められるのでしょうか。
本記事では、兄弟姉妹間での介護に関するよくあるトラブルやその原因、そしてそれらを回避するための方法について詳しく紹介します。
目次
親の介護は子どもの義務?

親の介護については、民法で直系血族および兄弟姉妹は互いを扶養する義務があると規定されています。ただし、すべての介護を義務づけられているわけではありません。経済的支援や生活援助を介護の基本内容としています。
ここでは、親の介護が子どもの義務である理由や介護をしない場合にどうなるのかということについて解説します。
子どもは親の扶養義務があると民法で定められている
日本の民法第877条では、直系血族および兄弟姉妹は互いに扶養する義務があると定められています。そのため、子どもには親を扶養する義務が生じます。
ただし、この「扶養義務」は必ずしも直接的な介護を意味するものではありません。主に経済的支援や生活援助を指すため、兄弟姉妹間では、各自の経済状況や生活状況に応じて役割分担や費用負担を考えることが大切です。
ただし、子ども自身の生活に余裕がない場合は、扶養義務が発生しないこともあり、その判断は家庭裁判所によって行われます。したがって、親の介護における役割分担を検討する際には、兄弟姉妹で十分に話し合い、法律を踏まえたうえで現実的な方策を考えることが重要です。
親の介護をしないとどうなる?
親の介護をしない場合、法律上の問題や家族内での関係悪化が考えられます。民法上、子どもには親を扶養する義務がありますが、この義務は自分の生活を脅かさない範囲での支援を求めるものです。そのため、無理をしてまで介護を行う必要はありません。
しかし、経済的に余裕があるにもかかわらず支援を拒むと、法的な問題に発展する可能性があります。また、介護をしないことが原因で兄弟姉妹間や親との関係が悪化し、家族内での信頼関係が損なわれることも少なくありません。
兄弟姉妹間で多い介護トラブル

親の介護における兄弟姉妹間でのトラブルを未然に防ぐためには、事前の話し合いや役割分担の明確化が重要です。特に、誰が主に介護を担当するのかや、介護費用の負担をどうするかで意見が分かれ、揉めるケースも少なくありません。
ここでは、実際に多い介護トラブルについて紹介するので、話し合いの際の参考にしてください。
誰が介護をするかで揉める
兄弟姉妹間で親の介護が必要となった際、誰がその役割を担うかで揉めることが少なくありません。特に、仕事や子育てを理由に全員が介護に非協力的な場合、話し合いが難航することがあります。
また、昔ながらの風習で長男やその妻に介護が押し付けられるケースも見受けられます。さらに、「実家の近くに住んでいる」「働いていない」「独身である」といった理由で、特定の兄弟姉妹に介護の負担が集中することも多いです。
1人に押し付ける形になるとさらなるトラブルに発展する可能性があるほか、介護を担う側は肉体的にも精神的にも疲弊してしまい、生活自体に支障をきたす恐れもあるため注意が必要です。
誰が介護費用を負担するかで揉める
親の介護には、多くの費用がかかります。基本的には、親の預貯金から介護費用をまかなうことになりますが、不足する場合に誰が負担するのかは、介護における兄弟姉妹間での大きな問題です。
また、親の預貯金の管理をめぐる不信感も問題を複雑にします。管理を任された兄弟姉妹が、他の兄弟姉妹に十分な説明をしないまま介護費用に充当すると、金銭の使途に疑念が生じ関係が悪化する恐れがあります。
兄弟姉妹間で介護トラブルが発生する原因

兄弟姉妹間における介護トラブルを回避するためには、トラブルが発生する原因についても理解しておくことが大切です。「親がまだ元気だから」と介護に向けての準備が整っていない家庭も多いことでしょう。しかし、介護トラブルの原因の一つが突然始まる介護に対する準備不足です。
また、急に始まる介護に対してかける時間や金銭的余裕がないということも重なって、各家庭間での意見の衝突を生みます。ここでは、兄弟姉妹間で介護トラブルが発生する原因について解説します。
親の介護が突然始まり準備ができていない
親の介護についての事前準備ができていないことで、トラブルに発展するケースが考えられます。親の介護は突然始まることが多いです。そのため、事前準備ができていない状態から誰かが介護をすることになり、結果的に兄弟姉妹間で押し付け合いのトラブルへと発展してしまうケースも少なくありません。
また、できる人がとりあえず介護を引き受けてしまうことも多いですが、介護の条件を曖昧にしたまま始めると、後々大きなトラブルの原因になりやすいため注意してください。
介護にかける時間や金銭的余裕がない
兄弟姉妹が介護にかける時間や金銭的余裕がないことも、トラブルの原因の一つです。特に、職場で責任ある立場にある人や、子どもにまだ手やお金がかかる人にとって、親の介護は大きな負担となります。
さらに、遠方に住んでいる場合や、既に義理の親の介護を行っている場合も想定されます。このような状況では、介護に協力したいという気持ちがあっても、現実的には困難が伴うでしょう。
介護トラブルを回避するためにできること

介護トラブルを回避するためには、事前の準備と情報共有が重要です。具体的にやっておきたいことは、次の4つです。
- 親の介護に対する考え方を事前に聞いておく
- 親の経済状況を確認しておく
- 兄弟姉妹間で役割分担をする
- 公的機関・介護サービスを利用する
内容を理解してスムーズな介護体制を築けるようになりましょう。
親の介護に対する考え方を事前に聞いておく
親の介護を円滑に進めるためには、親自身の考えを事前に確認しておくことが重要です。親が今後どのように介護されたいかについて、具体的な希望を知ることで、兄弟姉妹間でのトラブルを未然に防げます。
例えば、親が住み慣れた家に住み続けたいのか、誰に介護をしてもらいたいのか、介護サービスや施設入居を考えているのかなど、親の希望を聞いておくとよいでしょう。
元気な親に対して介護の話題を切り出すのは気が引けるかもしれません。そんなときは、自然な会話の流れで話題を振ることがポイントです。
例えば、「親戚の○○さんが介護サービスを利用し始めたらしいよ」といった話題を通じて、親の考えを聞き出すのも一つの方法です。重要なのは、親の意見に対して否定的にならないことです。まずは親の考えをしっかりと聞き、どのような希望を持っているのかを理解することから始めましょう。
親の経済状況を確認しておく
親の経済状況については、できるだけ早めに確認しておくようにしましょう。介護には多くの費用がかかるため、親の預貯金だけでまかなえるのか、兄弟姉妹で費用を分担する必要があるのかを見極める必要があります。
親の経済状況を曖昧にしたまま介護に突入すると、お金をめぐるトラブルに発展するリスクが高まります。通帳や印鑑、権利証などの重要書類や資産についても、親に「いざというときにはわかるように整理しておいてほしい」と伝えておくようにしましょう。
兄弟姉妹間で役割分担をする
介護が必要になる前から、兄弟姉妹で定期的に集まって意見交換をしておくなどの対策を取っておくことが大切です。また、介護が必要になったらできるだけ早く兄弟姉妹会議を開き、次の項目についても決めましょう。
- 誰が介護主体者になり、他の兄弟姉妹はどのようにサポートするのか
- 費用はどのように分担するのか
役割分担を決める際には、誰か一人に負担が集中しないようにすることがポイントです。話し合いの際には、トラブルを回避するためにもメモや録音などで記録を残しておくことをおすすめします。
公的機関・介護サービスを利用する
自分たちだけで介護の問題を抱え込むと、話し合いが進まないこともあります。そんなときには、公的機関や介護サービスの利用を検討しましょう。
介護について相談したいことがある際の相談先は、次の2つです。
- 市区町村の窓口
- 地域包括支援センター
市区町村の窓口や地域包括支援センターは、介護に関する相談に応じてくれる専門機関です。なかでも、地域包括支援センターは福祉専門の相談窓口となっており、経験豊富な職員が介護保険サービスの利用方法や家族間の調整など、広範囲にわたって支援してくれます。
親の介護の分担を決める際のポイント

親の介護は、兄弟姉妹間でのコミュニケーションを通じて円滑に分担することが求められます。まずは本音を話し合う場を設け、全員のできることとできないことを明確にすることが大切です。そのうえで主介護者や費用分担のルールを決め、家族全員が納得できる分担方法を探りましょう。
ここでは、親の介護の分担を決める際のポイントについて解説します。
本音を話し合う場を設ける
親の介護において、兄弟姉妹間での役割分担を決める際には、本音を話し合う場を設けることが重要です。
介護ができるかどうかという話を始める前に、親の介護に対する正直な気持ちをそれぞれが共有することからスタートしましょう。そのとき、介護を避けたいがために、自分の生活の「大変さ自慢」をしてしまうと、意見の衝突に発展する可能性があるため注意してください。
また、介護の方向性についても話し合っておきましょう。例えば、在宅介護を中心に考えるのか、それとも施設入居を目指すのか、状況に応じて両者を組み合わせるのかなどについてです。
兄弟姉妹間で意見が分かれることが少なくないため、親の希望を確認している場合は事前に共有しておきましょう。
全員のできること・できないことを明確にする
互いの本音や状況が少しわかってきたところで、各自が具体的に何ができて、何ができないかを確認し合いましょう。
仕事の関係で頻繁に実家に通うことが難しい方もいれば、遠方に住んでいるために緊急時の対応ができない方もいます。一人ひとりのできること・できないことを明確にすることで、現実的な話し合いができるようになります。
その際、親との関係性の違いについても考慮しましょう。日頃から親と頻繁に連絡を取り合っている方もいれば、たまにしか会わないという方もいます。親との信頼関係の度合いは、介護における役割の決定に無関係ではないためです。
主介護者を決める
親の介護において、誰が中心となって介護を行うかを明確に決めることは非常に重要です。中心となる介護者の負担が大きくなるため、他の兄弟姉妹もその負担を理解し、協力体制を整える必要があります。
例えば、日中の身体介護は主介護者が担当し、週末や夜間は他の兄弟姉妹が分担するなど、具体的な役割分担を行います。「介護用品やおむつの購入は○○が」「病院の付き添いは△△が」など、役割をできる限り細分化し、それぞれが責任を持って取り組むことが大切です。
また、会社の介護休暇や介護休業、独自の介護サポートを利用できる兄弟姉妹がいる場合は、これらの制度を活用して協力するとよいでしょう。
費用分担のルールを決める
介護には多くの費用がかかることがあるため、兄弟姉妹間で費用分担のルールもしっかりと決めておきましょう。介護保険制度を利用して仮に自己負担が1割の場合でも、介護度によっては月に10万円以上かかることもあります。
また、施設に入所する場合はさらに高額になることが多いです。親の年金や貯蓄だけではまかなえない場合もあるでしょう。
このため、誰がどのように補填するかを事前に話し合うことが求められます。例えば、遠方に住む親族が直接介護をできない分、経済的な援助を申し出ることで不公平感を解消できます。
兄弟姉妹・親族・夫婦間での役割分担の例

ここでは、兄弟姉妹・親族・夫婦間での役割分担の具体的な例を紹介します。兄弟姉妹が多ければ、分担することで1人あたりの負担を減らせますが、一人っ子の場合などは親族にも協力を依頼することになるでしょう。
急な介護で慌てないためにも、役割分担の仕方について理解しておくことが重要です。
兄弟姉妹間
兄弟姉妹がいる場合、親を介護する義務は平等です。しかし、実際には独身か既婚か、子どもの有無、経済状況によって介護への関わり方や負担の感じ方に違いが生じることがあります。そのため、仕事や家庭の事情で頻繁に親の元に行けない場合は、経済的なサポートを強化するなど、各自の状況を考慮した対応が必要です。
具体的な役割分担の一例は、次の通りです。
<3人兄弟の場合の分担例>
- 長男:既婚・実家と同じ県住まい:休日のみ実家で介護サポート・介護費用負担3割
- 次男:未婚・実家住まい:主介護者・介護費用負担2割
- 三男:既婚・遠方住まい:長期休み以外は介護サポート不可・介護費用負担5割
重要なのは、互いの状況を尊重し各自の「できること」に焦点を当てて協力することです。「チーム」として親を支える意識を持ち、負担を抱え込まずに外部の支援も積極的に活用することが、スムーズな介護の実現につながります。
親族間
一人っ子で兄弟姉妹がいない場合、おじやおば、またはいとこといった親族に協力を求めるようにしましょう。また、一人っ子の場合は全責任を1人で背負わなければならないという心理的プレッシャーを感じやすいものです。親が元気なうちから、両親と介護についての話し合いを行っておくこともおすすめします。
そのうえで、地域の介護サポート体制や公的な介護サービスを活用して負担を軽減する方法も検討しましょう。
夫婦間
親の介護において、結婚している場合は配偶者の協力を得られるかどうか確認することも重要です。特に、入浴やトイレなどの身体介護は、異性の親に対して直接介助することにためらいを感じる人も多いため、配偶者が手伝ってくれると助かることがあります。
ただし、法律上、配偶者には結婚相手の親に対する介護義務や遺産相続権はありません。そのため、協力してくれる場合には感謝の気持ちを伝えたり、「無理のない範囲で」といった配慮を示したりすることが大切です。
また、親の介護に大きく貢献した場合、相続人に対して「特別寄与料」を請求できる制度があるため、必要に応じて検討するとよいでしょう。
介護トラブルを回避するためにも兄弟姉妹間で意見をまとめておこう

親の介護は、兄弟姉妹間での考え方や価値観の違いが原因でトラブルに発展しがちです。円滑な介護を実現するためには、兄弟姉妹全員で事前に意見をまとめ、介護に対する考え方や役割分担を明確にしておくことが重要です。トラブルを避けるためにも、事前の話し合いを通じて、全員が納得できる形での協力体制を整えておきましょう。
あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝
2011年 4月 入社 事業推進部 配属
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長
2023年 10月 常務取締役 兼 事業本部長 兼 事業推進部 部長
