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お役立ちコラム
2025年6月15日
介護医療院とは要介護者向けの介護施設!メリット・デメリットや費用を解説
介護医療院は、要介護者が安心して生活を送るための施設です。医療と介護の両方を提供する施設で、特に医療ケアが必要な方に適しています。
本記事では、介護医療院の概要や提供されるサービス、メリット・デメリット、費用について解説します。介護医療院への理解を深めて、要介護認定を受けた方に適した施設を選べるようになりましょう。
目次
介護医療院とは
介護医療院は、要介護者の長期療養と生活支援を目的とした施設です。2017年度に廃止が決定した「介護療養型医療施設(療養病床)」の主な転換先として、新たに設立されました。
この施設では、日常生活の身体介助や生活支援に加え、日常的な医学管理や看取り、ターミナルケアといった医療ケアも提供されます。介護保険施設の一つとして、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)と並び、要介護者が安心して生活できる環境を整えています。
介護医療院の種類
介護医療院には、I型とII型の2つの形態があります。I型は、比較的病状が重く、急変のリスクがある入所者のための施設です。このため、I型では医師や看護師が多く配置されており、手厚い医療ケアを受けることが可能です。
一方、II型は比較的容体が安定した入所者を受け入れており、人員基準は介護老人保健施設(老健)と同等以上となっています。
それぞれの施設は、医師や看護職員、介護職員、栄養士など、施設内で担う役割ごとに細かく人員基準が規定されているのが特徴です。そのため、入所者の状態に応じた適切なケアが提供されるようになっています。
介護医療院の設備基準
介護医療院の設備は、身体の不自由な方が快適に日常生活を送れるよう、厳格な基準を満たしています。厚生労働省によって定められている施設基準は、次の通りです。
- 療養室:定員4人以下、1人あたりの床面積8平方メートル以上
- 診察室:医師の診察室、臨床検査施設、調剤施設を有すること
- 処置室:処置が適切に行われる広さを有する、規定に合致するX線装置を備える
- 機能訓練室:原則として40平方メートル以上の面積を有し、必要な機器類を備える
- 談話室:入所者同士の交流や入所者とその家族が談話を楽しめる十分な広さがある
- 食堂:入所者1名あたり1平方メートル以上の広さがある
- 浴室:一般浴槽と、介助が必要な方向けの特別浴槽を有する
- レクリエーションルーム:レクリエーションに必要な広さと設備がある
- 洗面所:身体が不自由な方でも使える設備である
- 便所:身体が不自由な方でも使える設備である
介護医療院で義務づけられている人員配置
介護医療院では、医療機関に近い職員数が配置されており、医療ケアにも対応できる体制が整っています。医師については、入所者の人数に応じて1名以上の医師が必要です。
看護師は、入所者6人に対して1人の割合で配置されており、日常的な健康管理や医療ケアを提供します。さらに、介護職員は入所者5~6人に対して1人が配置され、日常生活のサポートを行います。
入所者の機能回復を支援するリハビリ職員は、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といった国家資格を持った専門職の配置が必要です。また、介護医療院には薬剤師や栄養士なども勤務しており、薬の管理や食事の栄養バランスの調整を行います。
さらに、ケアマネージャー(介護支援専門員)が入所者一人ひとりに適したケアプランを作成し、総合的な支援を提供してくれる点も特徴です。このように、介護医療院では多職種が連携して入所者の生活を支えています。
介護医療院の入所条件
介護医療院に入所するためには、要介護1から5に認定されていることが必要です。
これは、介護医療院が医療と介護の両面から支援を提供する施設であり、一定以上の介護が必要な方を対象としているためです。要支援1から2に該当する方は利用できないため、注意しましょう。
入所を検討する際は、まず市町村の担当窓口で要介護認定を受け、その後介護医療院への申し込みが必要です。
介護医療院で提供されるサービス
介護医療院では、医療ケア、介護サービス、そして生活支援サービスの3つの主要なサービスを提供しています。ここでは、介護医療院で提供される各サービスの詳細について解説します。
医療ケア
介護医療院では、さまざまな医療ケアが提供されます。たとえば、喀痰(かくたん)吸引や経管栄養(胃ろう、経鼻経管栄養、腸ろう)、点滴、在宅酸素療法などのほか、床ずれのケアや注射を含む薬の処方も行われます。
さらに、人生の最終段階におけるケア、つまり看取りやターミナルケアも対応可能です。これらのサービスにより、日常的な医療ケアが必要な方でも、安心して生活を送れるようになります。
介護医療院は、医療と介護が一体となったサービスを提供することで、要介護者の生活を手厚くサポートできることが魅力です。
介護サービス
介護医療院では、他の介護施設と同様に、日常生活に必要な基本的な介護サービスが提供されます。具体的には、食事介助、排泄介助、入浴介助といった日常の生活動作に関するサポートです。
また、介護医療院では、リハビリテーションやレクリエーション活動も活発に行われており、入所者の心身の機能維持に役立っています。さらに、健康管理を目的とした定期的な健康チェックも行われ、入所者の健康状態を常に把握し、必要に応じて適切な対応が取られます。
施設選びの際には、具体的なサービス内容やスタッフの対応を確認することが大切です。
生活支援サービス
介護医療院では、入所者が安心して生活できるよう、さまざまな生活支援サービスが提供されます。居室ではプライバシーが確保されるように配慮されており、自宅にいるかのような快適な空間が整っています。
また、介護医療院では地域社会とのつながりを大切にしている点も特徴です。地域住民やボランティアとの交流イベントが定期的に開催されるため、社会的な孤立感を抱くことなく、豊かな日々を過ごすことができます。
介護医療院に入所するメリット・デメリット
介護医療院に入所すると、介護や医療ケアを受けられたり、日常生活のサポートを受けられたりする点がメリットです。一方で、デメリットとしては、他の施設と比べて費用が高くなる場合があることや、入所の条件が厳しい場合があることが挙げられます。
ここでは、介護医療院に入所するメリット・デメリットについて解説します。
メリット
介護医療院に入所することで得られる大きなメリットが、介護サービスだけでなく医療ケアも同時に受けられる点です。入所者はリハビリも受けられ、身体機能の維持や向上を目指せます。
また、看取りやターミナルケアにも対応しており、病院に併設されている施設も多いため、体調が悪化した際にも安心でしょう。医療機関に近い職員体制が整っており、24時間医師が常駐する施設もあるため、高い安心感を得られます。
さらに、他の介護施設では難しい喀痰吸引や経管栄養といったケアも対応可能です。生活施設としての機能も充実しており、レクリエーションルームや談話室などがあり、生活の質を高める工夫がされています。
デメリット
介護医療院に入所するデメリットとして、まず費用面が挙げられます。介護医療院では、介護保険サービス費用以外にも食費や居住費がかかり、さらに医師や看護師が多く配置されているため、利用料が高額になる傾向があります。入所を検討する際には、長期間にわたって支払い続けられるかどうかを考慮するようにしましょう。
また、介護医療院自体の数が少なく、選択肢が限られているという点もデメリットです。年々介護医療院の数は増加していますが、有料老人ホームなどと比べるとまだまだ少ないのが現状です。希望するエリアに施設がない可能性もあるため、入所を希望する場合は早めに情報収集するように心がけましょう。
さらに、プライバシーの面でもデメリットを感じることがあるかもしれません。介護医療院には多床室(2〜4人部屋)があり、パーティションで仕切られているだけの場合もあるため、完全なプライバシーが確保されないことがあります。このような環境が気になる方は、事前に施設の見学を行い、設備や部屋の状況を確認することをおすすめします。
介護医療院への入所でかかる費用
介護医療院への入所を検討する際、費用は重要な要素の一つです。介護医療院はI型とII型に分かれており、それぞれの形態によって費用が異なります。
基本的な介護サービス費や食費、居住費に加えて、入所者の状態に応じた追加の介護費用がかかることがあります。費用を正確に把握するためには、事前にI型とII型のどちらに入所するかを確認し、それぞれの料金体系を理解することが大切です。
入所を希望する際には、これらの費用を考慮したうえで、適切な選択を行うことが求められます。
I型介護医療院
I型介護医療院は、重篤な疾患や合併症を抱えている認知症高齢者を主な対象としています。この施設では、医療と介護が一体となったサービスが提供されており、特に医療ケアが必要な方に適しています。
I型介護医療院に入所する費用は、次の表のように要介護度や部屋の種類によって異なるため、注意しましょう。
I型介護医療院における介護サービス費(1日あたりの費用) | ||
---|---|---|
従来型個室 | 多床室 | |
要介護1 | 721円 | 833円 |
要介護2 | 832円 | 943円 |
要介護3 | 1,070円 | 1,182円 |
要介護4 | 1,172円 | 1,283円 |
要介護5 | 1,263円 | 1,375円 |
※算定要件(I)の場合で計算
たとえば、従来型個室で要介護1の人の場合、1日あたり721円の介護サービス費がかかります。一方、多床室の場合は833円です。
要介護度が高くなるにつれ、費用も増加するため、具体的な費用を把握しておくことが大切です。
II型介護医療院
II型介護医療院は、I型と比較して比較的症状が安定している高齢者を対象とする施設です。利用者の健康状態が安定しているため、医療的なケアが少なくても安心して過ごせる環境が整っています。I型同様に、要介護度や部屋の種類によって費用が異なるため、注意しましょう。
具体的な介護サービス費は、次の表の通りです。
II型介護医療院における介護サービス費(1日あたりの費用) | ||
---|---|---|
従来型個室 | 多床室 | |
要介護1 | 675円 | 786円 |
要介護2 | 771円 | 883円 |
要介護3 | 981円 | 1,092円 |
要介護4 | 1,069円 | 1,181円 |
要介護5 | 1,149円 | 1,261円 |
※算定要件(I)の場合で計算
たとえば要介護1の場合、従来型個室で1日あたり675円、多床室で786円の介護サービス費がかかります。要介護度が高くなるにつれて費用も上がり、要介護5の場合、従来型個室で1,149円、多床室で1,261円です。
加算項目
介護医療院では、基本的な介護サービスに加えて追加のサービスを受けた場合、次のような料金が加算されます。
- 初期加算:入所日から起算して30日以内の期間に適用され、I型では60円/日、II型では30円/日加算される
- 栄養マネジメント加算:基準に適合する介護医療院の管理栄養士が継続的に入所者ごとの栄養管理を行うもので、11円/日が加算される
- 経口移行加算:医師、歯科医師、管理栄養士などが共同で入所者ごとの経口移行計画を作成し、それに基づいて支援を行う場合に28円/日が加算される
上記に挙げたものは、一例です。他にもさまざまな加算項目があり、利用者のニーズに応じて提供されます。
介護保険施設や医療施設との違い
介護医療院は、要介護者のための専門施設ですが、他の介護保険施設や医療施設とどのように異なるのでしょうか。ここでは、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)、介護付き有料老人ホーム、介護療養型医療施設(療養病床)との相違点について解説します。
特別養護老人ホーム(特養)との違い
特別養護老人ホーム(特養)と介護医療院では、対象となる要介護者の条件や提供される医療サービスに違いがあります。特別養護老人ホーム(特養)は、在宅での生活が困難になった要介護3以上の高齢者を対象とした生活施設です。終身利用が可能であり、看取りにも対応していますが、医療サービスは必要最低限に限られています。
一方、介護医療院は、医療の必要性がある要介護1以上の高齢者を対象としています。必要な医療ケアを提供できるようになっており、特別養護老人ホーム(特養)よりも高度な医療ケアを必要とする方が対象です。
また、特別養護老人ホーム(特養)に入所している高齢者の容態が悪化し、特別養護老人ホーム(特養)での生活が難しくなった場合には、介護医療院がその引き受け手となることが多くなっています。
介護老人保健施設(老健)との違い
介護老人保健施設(老健)と介護医療院の違いは、施設の目的と利用期間にあります。介護老人保健施設(老健)は、主に病院からの退院後にリハビリや介護を必要とする高齢者が、在宅復帰を目指すための施設です。
原則として3か月の入所期間が設けられており、リハビリで改善や回復が見られた場合は退去する必要があります。また、介護老人保健施設(老健)は看取りには原則対応していません。
一方、介護医療院は、より高度な医療ケアを必要とする方を対象とした施設です。生活施設としての性格が強く、長期入所が前提となっています。また、介護医療院では看取りやターミナルケアにも対応しており、利用者の最期までを支援することが可能です。これにより、利用者の家族は安心して介護を任せられます。
介護付き有料老人ホームとの違い
介護付き有料老人ホームと介護医療院は、提供されるサービスや施設の性質において大きく異なります。介護付き有料老人ホームは民間施設で、介護サービスに加えて、リハビリやレクリエーションなどが充実しており、それぞれの施設が独自の特徴を持っています。そのため、自分のニーズに合った施設を選びやすいのが魅力です。
一方、介護医療院は公的施設で、医療ケアが必要な方に向けたサービスを提供しています。介護医療院は比較的少ない負担で利用できるのが特徴ですが、レクリエーションやイベントの数は少なめです。
医療ケアが優先事項である場合には介護医療院が適しているといえますが、日常生活の楽しみや活動を重視する場合には介護付き有料老人ホームが適しているでしょう。
介護療養型医療施設(療養病床)との違い
介護医療院と介護療養型医療施設(療養病床)は、ともに医療と介護を提供する施設ですが、入所する方の「医療区分」に違いがあります。
療養病床は、主に医療区分3と医療区分2の患者が入院することを想定しており、人工呼吸器を使用している状態や特定の疾患を持つ方が対象です。一方、介護医療院は医療区分1の方も入所可能で、医療の必要性が比較的低い方でも利用できます。そのため、医療ケアの必要性に応じて施設を選ぶことが大切です。
介護医療院へ入所する流れ
介護医療院への入所を検討する際には、次のようなステップを踏む必要があります。
- 要介護認定を受ける
- 介護医療院を探す
- 介護医療院の見学をする
- 入所申込書・必要書類を提出する
- 入所判定を受ける
- 本人・家族と担当者が面談する
- 入所日を決定する
介護医療院に入所できるのは要介護1〜5に認定された方のため、まずは要介護認定が必要です。要介護認定を受けたら、自分に合った介護医療院を探して、見学を行います。
その後、入所申込書や必要書類を提出し、入所判定を受けましょう。入所が決まった場合、本人や家族と担当者との面談を経て、正式な入所日が決定します。
介護医療院への入所をスムーズに進めるためにも、一連の流れをしっかりと理解しておきましょう。
介護医療院を探す方法
介護医療院を探す際には、厚生労働省が提供する「介護サービス情報公表システム」を利用すると便利です。このシステムを使えば、住んでいる地域や隣接する市区町村まで範囲を広げて、介護医療院を検索できます。
ただし、地域によっては介護医療院がない場合もあるため、その場合は市区町村役場に問い合わせてみるとよいでしょう。また、入院中であれば、病院のソーシャルワーカーに相談することもおすすめです。
介護医療院は医療ケアが必要な人におすすめ
介護医療院は、医療ケアが必要な要介護者にとって非常に適した施設です。特に、日常的な医療処置が必要な方や、慢性的な病状を抱える方にとって、適切な医療サービスを受けながら生活できる環境が整っています。
介護医療院を探す場合には、厚生労働省の提供している「介護サービス情報公表システム」を活用するとよいでしょう。介護医療院の数自体がまだまだ少ないため、地域によってはない場合もあります。市区町村役場に問い合わせたり、院のソーシャルワーカーに相談したりして、自分に合った介護医療院を見つけましょう。

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝
2011年 4月 入社 事業推進部 配属
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長
2023年 10月 常務取締役 兼 事業本部長 兼 事業推進部 部長