お役立ちコラム

高齢化社会が進む中、親の介護や自分自身の将来について考える機会が増えています。

特に、老人ホームや介護施設の選び方は、多くの方にとって大きな悩みのひとつです。そのため、どのようなポイントに注目して施設を選ぶべきか、また施設の種類や特徴を理解することが重要です。

本記事では、老人ホームの選び方や、介護施設の種類について詳しく解説します。大切な家族に適した環境を提供するための参考にしてください。

老人ホーム・介護施設の選び方のポイント

老人ホームや介護施設を選ぶ際には、いくつかの重要なポイントを押さえておくことが大切です。施設は一度入居すると長期間過ごす場所になるため、自分や家族にとって適した環境を選ぶことが求められます。

老人ホーム・介護施設を選ぶ際のポイントについて詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

種類

老人ホームや介護施設にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。大きく分けると「公的施設」と「民間施設」の2つです。

公的施設には、特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設、ケアハウス、介護医療院などがあります。これらの施設は、比較的費用が抑えられることが多く、特に特養は入居条件が「要介護3以上」と要介護度が高い方を対象にしているのが特徴です。

民間施設には、介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、グループホームなどがあります。民間施設の特徴は、設備やサービスの選択肢が多く、個々のニーズに合わせやすいという点です。

また、入居基準や提供されるサービスが施設ごとに異なるため、事前にしっかりと確認する必要があります。これらの選択肢を理解することで、ご自身やご家族に合った施設を見つける手助けとなるでしょう。

介護施設・老人ホームの種類や違いについて詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてください。

介護施設・老人ホームの種類や違いは?施設の特徴や費用、選び方を解説

立地条件

立地条件は老人ホームや介護施設を選ぶ際の大きな判断材料となります。本人が住みたいと思う場所を選ぶことが重要ですが、特に介護が必要な方の場合、家族が無理なく訪れられる距離にある施設を選ぶとよいでしょう。体調が急変した場合など、緊急時にも駆け付けやすい距離に施設があると、本人も家族も安心です。

立地条件を調べる際には、公共交通機関のアクセスや最寄り駅からの距離、タクシーを利用した場合の所要時間と料金も確認しておくとよいでしょう。

また、衣替えや差し入れ、運営懇談会への参加など、面会が必要な場面が多いため、周辺に日常の買い物ができる商業施設があるかどうかも重要です。施設の近くにスーパーやドラッグストアがあれば、必要なものをすぐに購入できて生活の利便性が向上します。

さらに、自然に囲まれた場所や静かな住宅街に位置する施設であれば、入居者が安心して過ごせます。

費用

入居費用を考える際には、おおよその入居年数の見通しを立てることが重要です。平均余命をひとつの指標にして考えるとよいでしょう。現在の年齢に合った平均余命を入居年数として考えることで、将来的な費用の見通しを立てやすくなります。

月額費用についても注意が必要です。パンフレットに記載されている金額だけでなく、医療費やオプションのサービス費などもかかる場合があります。これらの費用は事前に確認しておくことが大切です。

入居一時金や月額利用料は、公的介護施設と民間介護施設で大きく異なるため、各施設での費用の内訳や相場をよく理解したうえで、選択を進めるとよいでしょう。

なお、公的施設と民間施設における入居一時金と月額利用料の相場は、以下の通りです。

<各施設における料金相場>

施設 入居一時金 月額利用料
公的施設 0円~1,000万円程度 6万円~20万円
民間施設 0円~数千万円 15万円〜50万円

入居・退去条件

老人ホームを選ぶ際には、入居条件や退去条件を事前に確認しておくことが重要です。

まず、現在の介護度で入居が可能かどうかを確認しましょう。施設ごとに対応可能な介護度が異なるため、特定の疾病や感染症に罹患している場合、入居が制限されることがあります。

また、他地域からの入居が可能かどうかも確認が必要です。特にグループホームや特別養護老人ホームの一部では、地域の住民票が必要な場合があります。

退去条件についても確認を怠らないようにしましょう。どの程度の介護度や医療依存度であれば住み続けられるのか、認知症になった場合の対応、そして長期入院の際に戻って来られるかどうかなど、事前に把握しておくことが大切です。

さらに、退去に関するトラブルについてもあらかじめ確認しておくと安心です。これらの条件を確認することで、安心して長く住み続けられる施設を選べるでしょう。

介護・医療体制

老人ホームを選ぶ際には、介護・医療体制の確認が重要です。

まず、施設のスタッフの人員体制を確認しましょう。理学療法士や作業療法士、看護師などの配置状況や、夜間の最少人数についても確認が必要です。

次に、提携医療機関の内容をチェックします。往診の頻度や診療科目など、緊急時にどの程度の対応ができるかを把握しておくことが大切です。

そのほか、在宅介護で行っていたケアを継続できるか、看取りや認知症ケアへの取り組み状況などについても、あらかじめ確認しておきましょう。これらを総合的に考慮して、適切な介護・医療体制が整った施設を選ぶことが重要です。

認知症への対応

認知症の方を受け入れる施設を選ぶ際には、その施設がどの程度認知症に対応できるのかを確認することが重要です。認知症専門のケアを提供している施設では、専門知識を持つスタッフが常駐しており、個々の症状に合わせた対応を期待できます。

認知症の方は認知症の進行度に応じて必要なケアが異なるため、進行度合いや身体状況を考慮したうえで、対応力の高い施設を選ぶことが大切です。認知症の有無によっては入居が制限される施設もあるため、事前に施設の受け入れ条件をしっかり確認しましょう。

看取り対応

入居者が最期を迎える際に、施設がどのようなサポートを提供してくれるかを確認することは非常に重要です。安心して最期の時を過ごせる環境であるかどうかを事前に確認しておきましょう。

まず、施設の看取りの実績について確認してください。実績が豊富な施設であれば、安心して任せられます。

また、家族へのサポート体制についても、施設がどのようにコミュニケーションを取り、支援を行ってくれるのかを確認しておくとよいでしょう。看取り期には、家族も精神的なサポートが欠かせません。緊急時に家族が施設に宿泊できるかどうかも確認しておくと安心です。

設備

老人ホームや介護施設を選ぶ際には、設備の充実度が非常に重要です。居室は、本人が過ごしやすい空間であることが求められます。広すぎず、狭すぎず、手すりなど必要な設備が整っていることが望ましいです。

また、自宅から慣れ親しんだ家具を持ち込めるかどうかも確認しましょう。これにより、入居者が新しい環境にスムーズに適応しやすくなります。

あわせて、施設内の設備についてもチェックが必要です。館内の廊下が広く、車椅子でスムーズに移動できるか、入居者に配慮されたドアの形状や床材が使用されているか、浴室設備が充実しているかなどを確認しましょう。

食事

老人ホームでの生活において、食事は大きな楽しみのひとつです。施設を選ぶ際には、医療食や介護食への対応が整っているかを確認しましょう。入居者からの意見を取り入れている施設であれば、より満足度の高い食事が提供されている可能性があります。

さらに、管理栄養士によるミールラウンドが実施されているかも確認してください。ミールラウンドとは、管理栄養士や歯科衛生士、リハビリ職が食事の様子を観察し、摂食状況を維持・改善する取り組みです。咀嚼や飲み込みに不安がある方は、この点を特に重視するとよいでしょう。

また、味付けが好みに合うか、あらかじめ施設見学をした際に試食ができれば試食しておくことをおすすめします。

施設の雰囲気

施設への入居を検討する際、見学は欠かせません。まず、入居者の介護度や男女比を確認し、レクリエーションやイベントがどの程度盛んに行われているかをチェックしましょう。スタッフの年齢構成や勤続年数、入居者に接する際の態度も忘れずに確認してください。

施設の見学をするおすすめの時間帯は、人が多い時間帯です。人が多い時間帯であれば、より日常的な施設の雰囲気を感じ取れます。その際、スタッフや入居者に普段のレクリエーション内容などについて尋ねてみましょう。

また、施設全体の清潔さも確認が必要です。廊下や共有スペースの清掃状況やゴミの有無をチェックしてください。

さらに、職員の態度や対応が親切で丁寧であるかも観察しましょう。入居者に対する言葉遣いや笑顔での対応が見られるかどうかは、安心して過ごせる施設かを見極める重要なポイントとなります。

老人ホーム・介護施設へ入居するまでの流れ

老人ホームや介護施設への入居を検討する際、どのようなステップを踏むべきか把握しておくことが重要です。老人ホームや介護施設へ入居するまでの流れは、次の通りです。

  1. 相談
  2. 資料請求
  3. 施設見学
  4. 仮申し込み
  5. 面談
  6. 審査
  7. 体験入居
  8. 最終確認
  9. 契約・入居

まずは、専門の相談窓口を利用して必要な情報を集めましょう。次に、興味を持った施設の資料を請求し、詳細を確認します。その後、実際に施設を見学し、雰囲気や設備を直接確認するという流れです。

入居する施設を決めたら、仮申し込みを行い、施設との面談を経て入居者としての審査を受けます。場合によっては体験入居を行い、最終的な確認を済ませたあと、契約を締結します。それぞれのステップで注意すべきポイントを意識し、スムーズな入居を目指しましょう。

【パターン別】おすすめの老人ホーム・介護施設

老人ホームや介護施設を選ぶ際には、入居者の状態やニーズに応じた施設を選ぶことが大切です。ここでは、介護が常に必要な方や認知症ケアが必要な方など、パターン別におすすめの施設を紹介します。それぞれの施設が持つ特徴を理解し、適切な選択をできるようになりましょう。

介護が常に必要な方

介護が常に必要な方には、「介護付き有料老人ホーム」がおすすめです。これらの施設では、24時間の介護サービスを受けられ、看取りにも対応しています。

看護師が常勤しているため、手厚い介護・医療ケアを受けることが可能です。基本的に個室が用意されており、プライベートな空間も確保されています。

また、特別養護老人ホームでも介護・看護サービスを受けられますが、入居希望者が多いため、すぐに入居できないこともある点には注意が必要です。

認知症ケアが必要な方

認知症ケアが必要な方には、グループホームがおすすめです。グループホームは、認知症の方を対象とした入所施設で、入居者は数人から9人のユニットごとに共同生活を送ります。

この施設の目的は、家事活動を通じて脳を活性化させ、認知症の進行を和らげることです。入居者は可能な範囲で家事に取り組むことで、日常生活の中で脳を刺激します。

グループホームのメリットとして、定員数が少ないため職員の目が届きやすいこと、地域密着型施設であるため、慣れ親しんだ地域で暮らし続けることなどです。また、慣れ親しんだ地域にあるため、家族や友人・知人も訪ねやすい点も魅力といえます。

また、費用も比較的安価であるため、入居費用を抑えたい方にも適しています。

費用を抑えたい方

費用を抑えたい方には、ケアハウスがおすすめです。ケアハウスは、自立から要介護まで幅広く対応できる入所施設であり、比較的安価に利用できます。

入居一時金がかかる場合もありますが、30万円程度と他の施設に比べて抑えられているのが特徴です。また、月額利用料も6万~17万円と、他の高齢者施設と比較してもリーズナブルになっています。

老人ホーム・介護施設に関するQ&A

老人ホームや介護施設の選び方には多くの疑問がつきものです。特に、生活保護を受給している方や年金のみで生活している方にとっては、入居可能な施設があるのかどうかが大きな関心事でしょう。

ここでは、生活保護でも入居できる施設や年金だけで入居可能な施設があるのかについて解説します。

生活保護でも入れる施設はある?

生活保護を受けている方でも入居できる施設として、まず挙げられるのが特別養護老人ホームです。この施設は公的なものであり、低費用での入居が可能です。ただし、入居条件として要介護3以上が求められます。

その他の選択肢としては、有料老人ホームやグループホーム、サービス付き高齢者向け住宅も考えられます。これらの施設は、生活保護を受けている方でも対応可能な場合が多いため、事前にそれぞれの施設に問い合わせて確認するようにしましょう。

施設ごとに対応が異なるため、しっかりと情報収集を行い、自分に合った選択をすることが大切です。

年金だけで入居できる施設はある?

受け取る年金の受給額にもよりますが、年金だけで入居できる老人ホームは存在します。特に地方の施設では、比較的安価な料金設定がされている場合が多く、年金だけでも入居可能なことがあります。

しかし、東京のような大都市圏では家賃が高く、年金だけで入居費用をまかなうことが難しいケースも少なくありません。そのため、施設の選択時には、地域の費用相場を確認し、実際にかかる月額費用をしっかりと見積もることが重要です。

年金受給額に応じた施設選びをすることで、経済的に無理のない入居が可能になります。

施設選びの失敗例と施設選びで役立つチェックリスト

施設選びの際には、失敗例を把握したうえで自分に合った施設を選ぶことが重要です。まずは、過去にあった失敗例を紹介します。

失敗例のひとつとして、施設の料金体系がわかりづらく、予想外の費用が発生したケースが挙げられます。安さ重視で選ぶと、あとになって介護度が上がった際に対応できない施設だった、という事態に陥ることも少なくありません。

また、知名度だけで施設を決めたり、入居者の意向を無視して施設を決めたりすることでも入居後の不都合が生じる可能性が高いでしょう。知名度を重視するあまり、施設見学を重点的に行わなかった結果、入居後に施設の課題に気づくこともあります。

入居者の意向を無視して決めると、家族や親族間での不都合が生じることもあるため注意しましょう。

そうした失敗を避けるためには、施設選びの際に役立つチェックリストの活用がおすすめです。施設選びの際には、以下のチェックリストをぜひご活用ください。

チェック欄 チェック項目
施設の種類は、入居者の介護状態に合っているか?(要介護度、認知症、医療的ケアなどに対応しているか)
入居者本人の希望や意思を確認して選んでいるか?(本人が「ここに入りたい」と納得しているか)
施設見学を行い、実際の雰囲気を確認したか?(見学せずに決めるのはトラブルのもと)
料金体系はわかりやすく、総額を把握できているか?(入居一時金、月額費、追加費用の説明を受けたか)
今後、介護度が上がっても対応できる施設か?(将来的なケアや看取りに対応しているか)
立地は、家族が無理なく通える距離にあるか?(通いやすさ、緊急時の対応も含めて検討したか)
医療・看護体制に安心できるか?(夜間対応・提携病院の有無・看護師の常駐など)
食事や居室の内容に満足できるか?(試食や居室の広さ・設備などを確認済みか)
契約前に、退去条件や注意点を確認したか?(途中退去、長期入院、認知症進行時の対応など)
複数施設を比較したうえで、納得して選んだか?(候補を1つに絞る前に、比較検討したか)

選び方を理解して自分にあった老人ホーム・介護施設を見つけよう

老人ホームや介護施設を選ぶ際には、数多くのポイントを考慮することが重要です。施設の種類や立地、費用、介護体制など、それぞれの要素が生活の質に大きく影響します。

特に、将来的な介護ニーズや予算に応じて適切な選択をすることで、入居後の安心感を得られるでしょう。今回紹介したポイントをしっかりと押さえて、自分に合った施設を見つけてください。

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝

2011年 4月 入社 事業推進部 配属 
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長
2023年 10月 常務取締役 兼 事業本部長 兼 事業推進部 部長