お役立ちコラム

要介護認定は、高齢者やその家族にとって重要な手続きです。とくに初めての申請となると、不安や疑問も多いかもしれません。しかし、適切な情報を事前に知っておくことで、スムーズに進められます。

本記事では、要介護認定の基本的な流れや申請時の注意点について詳しく解説します。

要介護認定とは

要介護認定とは、介護保険サービスを利用するために必要な重要なステップです。この認定を受けることで、適切な介護保険サービスを選択し、利用することが可能になります。

要介護度によって利用できるサービスが異なり、認定を受けることで個々の状況に応じた支援が受けられます。なお、65歳になると市町村から介護保険証が送付されますが、介護保険証を持っているだけでは介護保険サービスを利用できないため注意しましょう。また、40~64歳の方でも特定の条件を満たす場合には、要介護認定を受けられます。

要介護認定の区分

要介護認定の区分は、「要介護認定等基準時間」という指標をもとに、以下の8つの段階に分けられます。

  • 非該当(自立)
  • 要支援1、要支援2
  • 要介護1、要介護2、要介護3、要介護4、要介護5

要介護度が高くなるほど、必要な介護のレベルが上がります。要支援者は介護予防サービスを利用可能です。

要介護度については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
要介護1とは?利用可能なサービスや限度額、要支援2・要介護2との違いを解説
要介護2とは?認定基準や利用できるサービス、他の要介護度との違いを解説
要介護3とはどんな状態?受けられるサービスや限度額、ケアプラン例を紹介
要介護4とは?要介護3・5との違いや利用できるサービス、ケアプラン例を紹介
要介護5とは?要介護4との違いや受けられるサービス、ケアプラン例を紹介

要介護認定の申請からサービス利用までの流れ

要介護認定の申請からサービスの利用開始までの流れは、初めての方にとって複雑に感じられるかもしれません。しかし、ステップを1つずつ押さえて進めることで、スムーズに手続きを進められます。ここでは、具体的な流れと各ステップでのポイントを詳しく解説します。

要介護認定申請からサービスを利用するまでの大まかな流れは、次の通りです。

  • 要介護認定の申請を行う
  • 訪問調査が実施される
  • 主治医に意見書の作成を依頼する
  • 判定・結果通知
  • ケアプランの作成
  • サービスの利用開始

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.要介護認定の申請

要介護認定を受けるためには、市区町村の地域包括支援センターや役所の高齢者福祉窓口で申請を行います。入院中で本人が申請できない場合は、家族などが代理で申請することも可能です。

申請可能なのは、次の方です。

  • 本人や家族
  • 成年後見人
  • 社会保険労務士
  • 地域包括支援センターの職員
  • 指定居宅介護支援事業者の職員
  • 地域密着型介護老人保健施設の職員
  • 介護保険施設の職員 など

要介護認定の申請に必要なものは、次の通りです。

  • 要介護認定申請書
  • 介護保険証
  • かかりつけ医のわかるもの(診察券など)
  • マイナンバーが確認できるもの
  • 健康保険証(64歳以下の場合)

申請方法は、市役所窓口、郵送、オンラインの3つから選べます。申請には「新規申請」「更新申請」「区分変更申請」「要支援者の要介護新規申請」「転入継続申請」の5つの区分があり、各自の状況に応じた区分を選んで申請を進める必要があります。各区分の詳細は、次の通りです。

  • 新規申請:初めて要介護・要支援認定を希望する方
  • 更新申請:介護認定をすでに受けていて、更新する方
  • 区分変更申請:すでに要介護1から5の認定を受けていて、区分の見直しを希望する方
  • 要支援者の要介護新規申請:すでに要支援1または2の認定を受けていて、区分の見直しを希望する方
  • 転入継続申請:転出元の区市町村で介護認定を受けていて、転入した方

2.訪問調査

訪問調査は、要介護度を正確に判定するための重要なステップです。市区町村から委託された調査員が自宅や、申請者の心身の状態や生活環境について聞き取り調査を行います。調査は通常30分から1時間程度です。

調査は全国共通の基本調査74項目をもとに進められ、身体機能や生活機能、認知機能など6つの主要なカテゴリーに分かれています。たとえば、日常生活での基本的な動作や、認知機能、社会生活への適応能力などが対象です。

また、過去14日間に受けた特別な医療についても確認されます。これにより、申請者の状態に応じた適切な介護サービスが提供されるようになります。

なお、訪問調査の日程は、申請後に市区町村の担当者から連絡があるため、事前に準備をしておくとスムーズです。

3.主治医による意見書の作成

要介護認定を進めるうえで、主治医による意見書の作成が必要です。市区町村から依頼を受けたかかりつけ医が、被保険者の健康状態や必要な介護の程度について詳しい意見書を作成します。

この意見書は、訪問調査の結果と共に要介護認定の判定資料となります。もし、かかりつけ医がいない場合は、市区町村または最寄りの地域包括支援センターに相談し、適切な医師を紹介してもらってください。

意見書の内容は、適切な介護サービスを受けるために重要なため、しっかりとした情報提供を心がけましょう。

4.一次判定

一次判定では、厚生労働省が作成した全国共通の要介護認定ソフトを使用して、客観的かつ公平な判断が行われます。このソフトでは、申請者が介護に必要な時間である要介護認定等基準時間を分析します。

基準時間の算出においては、以下の5つの介護内容にかかる時間が対象です。

  • 直接生活介助
  • 間接生活介助
  • 問題行動関連行為
  • 機能訓練関連行為
  • 医療関連行為

これらの合計に認知症加算を加えることで、要支援1から要介護5までの判定がなされます。

5.二次判定

二次判定では、一次判定の結果と主治医意見書の内容をもとに、最終的な判定を介護認定審査会で行います。介護認定審査会は、保健・医療・福祉の専門家によって構成されており、次の項目を協議して最終的な要介護度を決定します。

  • 一次判定結果
  • 主治医の意見書
  • 認定調査の特記事項

6.結果通知

要介護認定の結果通知は、通常、申請から約30日後に行われます。審査会での審査結果に基づき、要介護度が「要介護1~5」、「要支援1・2」、または「非該当(自立)」のいずれかとして通知されます。

この結果通知は、市区町村から郵送されるため、内容をしっかり確認しましょう。認定された要介護度によって、利用可能な介護サービスが異なるため、しっかりと結果を確認してください。

7.ケアプランの作成

要介護認定が下りただけでは、介護保険サービスを利用できません。要介護認定を受けたあと、介護保険サービスを利用するためには、ケアプランの作成が必要です。

ケアプランとは、介護・介護予防サービスを「いつ、どこで、どのようなサービスを、どんな目的で利用するか」を記載した計画書です。このプランは、ケアマネージャーと呼ばれる専門職が中心となって、本人や家族と相談しながら作成します。

ケアプランには、要支援1~2の認定を受けた場合に利用できる「介護予防サービス」、要介護1以上の認定を受けた場合に利用可能な「自宅で利用するサービス」「施設に入居して利用するサービス」が含まれます。作成したケアプランを自治体に提出することで、具体的なサービスを利用可能です。

8.サービスの利用開始

サービスの利用は、ケアマネージャーと相談しながら作成したケアプランの内容に沿って開始されます。なお、ケアプランに記載されていないサービスは利用できません。

もし新たに利用したいサービスがある場合は、まず担当のケアマネージャーに相談することが重要です。彼らが適切なアドバイスを提供し、必要に応じてケアプランの見直しを行ってくれます。

サービス開始後も、定期的にケアマネージャーと連携を取りながら、適切な支援を受け続けることが大切です。

要介護認定の申請における注意点

要介護認定をスムーズに進めるためには、いくつかの注意点を押さえておくことが重要です。押さえておきたい注意点は、次の5つです。

  • 訪問調査に向けた事前準備をする
  • 要介護認定には有効期間がある
  • 状態の悪化がある場合は区分変更申請を行う
  • 調査結果に納得できないときは不服申し立てができる
  • 「非該当」の人でも受けられるサービスもある

それぞれ詳しく見ていきましょう。

訪問調査に向けた事前準備をする

訪問調査に向けた事前準備は、要介護認定をスムーズに受けるうえで重要なポイントです。まず、普段の生活の様子を振り返り、困っているポイントをメモにしておくことをおすすめします。

これにより、調査員に介護の必要性を適切に伝えやすくなります。調査中に質問されない内容であっても、調査の最後に調査員へ伝えることが可能なため、しっかりと準備しておきましょう。

また、家族の立会いは必須ではありませんが、可能であれば事前に調整して同席することをおすすめします。調査対象者が緊張やプライドからできないことを「できる」と言ってしまうこともあるため、家族がいると正確な情報を伝えやすくなります。このような準備をすることで、より正確な要介護認定を受けられるでしょう。

要介護認定には有効期間がある

要介護認定の結果には有効期間が設定されています。この有効期間は自動的に更新されるものではありません。

有効期間が終了した後も介護保険サービスの継続を希望する場合、更新の手続きを行う必要があります。更新手続きの際には、再度認定調査が行われ、要介護度の見直しが実施されます。有効期限が過ぎると、認定の効力は失われるため注意しましょう。

更新手続きは、市役所や地域包括支援センターで行います。一般的に、自治体から要介護認定の有効期限満了の1~2ヶ月前に更新手続きの案内が通知されるため、届いたら速やかに更新の申請を行うことが重要です。

新規、変更申請の場合の有効期間

要介護認定の新規申請や変更申請の場合、有効期限は基本的に6ヶ月です。ただし、市町村が必要と認めた場合には、3ヶ月から12ヶ月の間で月単位で市町村が定める期間となることがあります。

この期間内に再度申請や更新手続きを行うことが求められますので、注意が必要です。

更新申請の場合の有効期間

更新申請の場合の要介護認定の有効期限は、通常12ヶ月です。ただし、市町村が必要と認めた場合には、3ヶ月から48ヶ月の間で月単位で定められます。このため、具体的な有効期限については、更新申請を行う市町村に確認することが重要です。

状態の悪化がある場合は区分変更申請を行う

すでに要介護もしくは要支援の認定を受けていて、前回要介護認定の調査したときと比べて体の状態が悪化している場合には、次回の更新時期を待つことなく区分変更申請を行えます。区分変更をすることで、利用できる介護保険サービスの種類や支給限度額が変わるため、より適切なサービスを受けることが可能です。

たとえば、介護ベッドは要介護2以上の方のみ利用できるため、区分が変更されることで新たに利用可能となる場合があります。

なお、区分変更を希望する際は、区分変更申請書の市区町村担当窓口への提出が必要です。申請書提出後、結果が出るまでには約1ヶ月程度かかります。区分変更を申請する際もかかりつけ医の意見書の提出が求められます。

調査結果に納得できないときは不服申し立てができる

要介護認定の結果に納得がいかない場合には、不服申し立てが可能です。まずは、役所の窓口や最寄りの地域包括支援センター、担当のケアマネジャーに相談することをおすすめします。

ここでは、認定結果について区分変更申請をするか、それとも「介護保険審査会」に不服申し立てを行うかのアドバイスを受けられます。不服申し立てを行うと、時間はかかるものの、認定調査をすべて最初からやり直すことが可能です。納得のいく支援を受けるためにも、適切な手続きを行いましょう。

「非該当」の人でも受けられるサービスもある

要介護認定を受けた際に「非該当」と判断された場合でも、介護予防・日常生活支援総合事業を通じて自治体が提供するサービスを利用できることがあります。この事業は、介護予防や生活支援を目的としており、「介護予防・生活支援サービス事業対象者」と認められた場合に利用可能です。

サービス内容は自治体ごとに異なるため、自分の住む地域でどのようなサービスが提供されているかを確認しておくとよいでしょう。

介護施設や自宅で活用できる介護保険サービスの利用方法

介護保険サービスは、介護施設への入居や自宅での介護をサポートするための重要な制度です。要介護認定を受けたあとは、適切なサービスを選んで利用することが求められます。

ここでは、介護施設へ入居する場合、介護予防サービスや介護サービスを自宅で受ける場合における、介護保険サービスの利用方法について解説します。

介護施設へ入居する場合

介護施設への入居は、大きく3つのステップに分かれます。

  1. 介護施設を選ぶ
  2. ケアプランの作成
  3. 入居開始

介護施設を選ぶ際には、自身にあった施設であることが重要です。施設選びの際は必ず見学を行い、サービス内容や費用面を事前に確認することをおすすめします。

次に入居する施設が決まったら、申し込みを行いましょう。特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームの場合、施設のケアマネジャーがケアプランを作成します。一方、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、ケアマネジャーを自由に選択可能です。

そして、ケアプランが整ったら、いよいよ入居開始です。これらのステップを踏むことで、スムーズに介護施設での生活を始められるでしょう。

介護予防サービスを自宅で受ける場合

介護予防サービスを自宅で受けるための流れは、次の通りです。

  1. 地域包括支援センターに連絡をする
  2. 介護予防ケアプランを作成する
  3. 介護予防サービスを利用する

まず、地域包括支援センターに連絡を取ります。要支援1、2の認定を受けた場合は、地域包括支援センターの職員とともに介護予防ケアプランを作成します。

この介護予防ケアプラン作成の際には、今後の生活についての要望をしっかりと伝えることが必要です。適切なサービスを受けるためには、自分がどのような生活を送りたいのかを明確に伝えましょう。

介護予防ケアプランが完成したら、それに基づいて介護予防サービスを利用開始します。これにより、自宅での生活を維持しながら、必要な支援を受けられるでしょう。

介護サービスを自宅で受ける場合

介護サービスを自宅で受ける際の流れは、次の通りです。

  1. 居宅介護支援事業者を選ぶ
  2. 担当のケアマネジャーを決める
  3. ケアプランを作成する
  4. 介護サービスを利用する

介護サービスを自宅で受ける際は、まず居宅介護支援事業者を選びます。居宅介護支援事業者とは、ケアマネジャーを配置しているサービス事業者のことです。市区町村のホームページなどで調べられます。

居宅介護支援事業者が決まったら、次に紹介されたケアマネジャーの中から担当を決めます。担当のケアマネジャーと相談しながら、介護が必要な方にあったケアプランを作成していく流れです。

ケアプランが完成したら、そのプランをもとに利用を希望する各通所サービス事業者と契約を行い、介護サービスの利用を開始します。

要介護認定までの流れを押さえてスムーズに申請を行おう

要介護認定を受けるためには、段階的な手続きが必要です。市区町村の窓口で申請を行ったあと、訪問調査、主治医の意見書作成、一次判定、二次判定を経て結果通知へと進みます。

結果通知後には、ケアプランの作成を通じて、個々のニーズに合わせた介護サービスが開始されます。申請からサービスの利用開始までをスムーズに進めるためにも、要介護認定までの流れをしっかりと押さえておきましょう。

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝

2011年 4月 入社 事業推進部 配属 
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長
2023年 10月 常務取締役 兼 事業本部長 兼 事業推進部 部長