お役立ちコラム

要介護度は、高齢者や障害者がどの程度の介護を必要としているかを示す重要な指標です。介護が必要な状況に直面したとき、まずは要介護認定を受け、その程度に応じて適切なサービスを利用することが求められます。

この記事では、要介護度の認定基準や利用できるサービスの種類、福祉用具のレンタルや購入の選択肢、介護保険の支給限度額の違いについて詳しく解説します。

要介護度とは

要介護度とは、必要な介護の量を客観的に数値化し、区分けしたものです。要介護度とは、公的介護保険制度において、介護の必要性を判定する指標です。要介護認定は、大きく分けて「非該当」「要支援」「要介護」の3つがあり、全体の区分は8段階あります。

要介護度によって、利用可能な介護サービスが異なるほか、介護保険制度を利用してさまざまなサービスを受ける際の介護保険利用限度額が決まります。

要介護度の認定基準と状態の目安

要介護度は、厚生労働省が定めた「要介護認定等基準時間」に基づいて決定されます。各要介護度における要介護認定等基準時間は、次の表の通りです。

介護区分 介護にかかる時間
要支援1 25分以上32分未満
要支援2 32分以上50分未満
要介護1 32分以上50分未満
要介護2 50分以上70分未満
要介護3 70分以上90分未満
要介護4 90分以上110分未満
要介護5 110分以上

参考:厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」

また、要支援と要介護における、各区分の認定目安や状態の目安は次の通りです。

介護区分 認定の目安 状態の目安
自立 ・支援が必要ない ・日常生活で支援や見守りなどを必要としない
要支援1 ・日常生活での基本動作をほとんど自力で行えるが家事などで支援が必要
・サポートがあれば要介護状態になることを防げる
・家事など一部動作に支援が必要である
要支援2 ・日常生活での基本動作を自分の力で行うことが難しい
・サポートがあれば要介護状態になることを防げる
・筋力の衰えなどがあり、歩行や立ち上がりが不安定になる
・介護が必要となるケースが要支援1と比べて増える
要介護1 ・日常生活は基本的に自分で送れるが、要支援2より日常的に介助が必要になる ・立ち上がりや歩行、入浴時や排せつに見守りや介助が必要
・認知機能の低下が少しある
要介護2 ・要介護1より日常生活における介助が必要
・自分で食事、排せつなどはできるが、生活全般で介助・見守りが必要
・自力で立ったり、歩いたりすることが難しい
・認知機能の低下が見られる
要介護3 ・日常生活動作において、全体的な介助が必要 ・食事、着替え、歯磨き、排せつなどで介助が必要
・つえや歩行器、車椅子などを使用して立ち上がりや歩行している状態
・認知機能が低下しており、見守りも必要
要介護4 ・介助がなければ日常生活を送れない ・食事、入浴、着替え、排せつなどすべてで介助が必要
・思考力や理解力が著しく低下している
・認知症の諸症状への対応も必要
要介護5 ・介助なしでは日常生活を送れない
・基本的に寝たきりの状態
・コミュニケーションをとることが難しい
・日常生活全般が自力で行えない
・意思疎通も困難

要支援1は、日常生活はほぼ自立していますが、掃除や身の回りのことに少し手助けが必要です。要支援2になると、立ち上がりや歩行でふらつくことがあり、より多くの支援が求められます。

要介護1では、排せつや入浴時に見守りや介助が必要です。要介護2になると、生活全般での見守りや介助が必要で、認知症初期症状が見られることもあります。

要介護3では、食事や着替えなどに介助が必要で、認知機能の低下が進行する場合もあります。要介護4では、日常生活において自分の力だけで移動することが難しく、全般的に介助が必要です。要介護5では、寝たきりの状態で、コミュニケーションも困難です。

要介護度については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
要介護1とは?利用可能なサービスや限度額、要支援2・要介護2との違いを解説
要介護2とは?認定基準や利用できるサービス、他の要介護度との違いを解説
要介護3とはどんな状態?受けられるサービスや限度額、ケアプラン例を紹介
要介護4とは?要介護3・5との違いや利用できるサービス、ケアプラン例を紹介
要介護5とは?要介護4との違いや受けられるサービス、ケアプラン例を紹介

要支援2と要介護1の違い

受けられる介護保険サービスの内容にあります。この違いを理解するためには、認知機能の状態と状態の安定性の2つの観点から見ることが重要です。

まず、認知機能の状態についての違いは次の通りです。

認知機能の低下の症状
要支援2 ×
要介護1

要支援2では、適切なサポートを受けることで、要介護状態になることが防げる状態です。一方、軽度の認知機能低下が見られるのが特徴です。要支援状態への回復が難しいと判断される場合には、要介護1と判定されるケースもあります。

次に、状態の安定性についてです。状態の安定性とは、厚生労働省の定める認定有効期間内(6ヶ月)で状態が変化する可能性を示しています。具体的には、病状そのものではなく、必要な介護量の変化のことです。介護が今以上に必要になることが予想される場合は、たとえ認知機能の低下がなくても要介護1認定となるケースもあります。

なお、上記はあくまで目安です。最終的な判断は、認定調査員による調査を経て判定されます。

【要介護度別】利用できるサービス

要介護度によって利用できるサービスは大きく異なります。要支援の場合は介護予防サービスが中心となり、地域包括支援センターで介護予防プランを作成してもらう必要があります。

一方、要介護認定を受けた場合は、介護サービスを利用可能です。その際には、居宅介護支援事業所でケアプランを作成してもらう必要があります。

要介護度別に利用できるサービスは、次の通りです。

介護区分 利用できるサービス
非該当(自立) 自治体による介護予防・日常生活支援総合事業
要支援1〜2 【介護予防サービス】
・介護予防訪問看護
・介護予防訪問入浴介護
・介護予防通所リハビリテーション(デイケア)
・介護予防訪問リハビリテーション
・介護予防短期入所生活介護
・介護予防短期入所療養介護
・介護予防居宅療養管理指導
・介護予防特定施設入居者生活介護
・特定介護予防福祉用具販売
・介護予防福祉用具貸与【地域密着型介護予防サービス】
・介護予防認知症対応型通所介護
・介護予防小規模多機能型居宅介護
・介護予防認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)
要介護1〜5 【施設サービス】
・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
・介護老人保健施設
・介護医療院【居宅サービス】
・訪問介護
・訪問入浴介護
・訪問看護
・訪問リハビリテーション
・居宅療養管理指導
・通所介護(デイサービス)
・通所リハビリテーション
・短期入所生活介護(ショートステイ)
・短期入所療養介護(医療型ショートステイ)
・特定施設入居者生活介護
・特定福祉用具販売
・福祉用具貸与

【地域密着型サービス】
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
・地域密着型通所介護
・地域密着型特定施設入居者生活介護
・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
・夜間対応型訪問介護
・認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)
・認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)
・療養通所介護
・小規模多機能型居宅介護
・看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)

【要介護度別】レンタル・購入できる福祉用具

要介護認定を受けると、日常生活を支援するための福祉用具をレンタルまたは購入できます。ここでは、レンタル・購入できる福祉用具を紹介します。

レンタルできる福祉用具

要介護度に応じて、レンタルできる福祉用具は異なります。介護区分に応じたレンタル可能な福祉用具は次の通りです。

介護区分 レンタル(貸与)できる福祉用具
すべての区分 手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえ、自動排せつ処理装置(排便機能なし)
要介護2〜5 車椅子、車椅子付属品、特殊寝台、特殊寝台付属品、床ずれ防止用具、体位変換器、認知症老人徘徊感知機器、移動用リフト
要介護4〜5 自動排せつ処理装置(排便機能あり)

購入できる福祉用具

福祉用具のうち、再利用に適さないものは購入の対象となります。購入の場合、要支援・要介護度に関係なく、毎年4月から翌年3月までの1年間で上限10万円の利用限度額が設けられており、1〜3割が自己負担となります。

購入できる福祉用具は、次の通りです。

  • 腰掛便座
  • 自動排せつ処理装置の交換可能部品
  • 排せつ予測支援機器
  • 入浴補助用具
  • 簡易浴槽
  • 移動用リフトのつり具部分

【要介護度別】介護保険支給限度額の違い

介護保険制度では、各区分に従って支給限度額が設定されています。この支給限度額とは、介護保険から給付される金額の上限のことです。

利用者は、所得に応じて1〜3割の自己負担でサービスを利用できますが、支給限度額を超えた分は自己負担となるため注意しましょう。ここでは、各区分における支給限度額と自己負担額を紹介します。

1ヶ月の支給限度額と自己負担額(1割負担の場合)は、次の通りです。

介護区分 支給限度額 自己負担額(1割負担の場合)
要支援1 50,320円 5,032円
要支援2 105,310円 10,531円
要介護1 167,650円 16,765円
要介護2 197,050円 19,705円
要介護3 270,480円 27,048円
要介護4 309,380円 30,938円
要介護5 362,170円 36,217円

参考:厚生労働省「サービスにかかる利用料」

介護保険のサービス費用

介護保険のサービス費用は、国が定めた介護報酬によって決まっています。サービスの内容や要介護度によって費用が異なるため、事前に確認しておくことが重要です。

介護保険サービスを利用した際にかかる基本単価の一例は、次の通りです。

<訪問介護:身体介護が中心の場合>

介護区分 利用時間 サービス費用
要介護1-5 20分未満 1,630円
20分以上30分未満 2,440円
30分以上1時間未満 3,870円
1時間以上 5,670円+30分ごとに820円加算

<訪問介護:生活援助が中心の場合>

介護区分 利用時間 サービス費用
要介護1-5 20分以上45分未満 1,790円
45分以上 2,220円

<訪問介護:通院等乗降介助の場合>

介護区分 サービス費用
要介護1-5 1回につき970円

<通所介護(デイサービス)>

介護区分 利用時間 サービス費用/1日あたり
要介護1 通常規模型
8時間以上9時間未満の場合
6,690円
要介護2 7,910円
要介護3 9,150円
要介護4 10,410円
要介護5 11,680円

参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造」

要介護レベルに応じて必要なサービスを受けよう

介護が必要な状態になると、要介護レベルに応じた適切なサービスを受けることが重要です。要介護認定は、個々の状態や必要とされるサポートの度合いによって分類されます。この分類に基づいて、利用できるサービスや支給される介護保険の範囲が決まります。適切なサービスを受けることで、日常生活の質を向上させられるでしょう。

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝

2011年 4月 入社 事業推進部 配属 
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長
2023年 10月 常務取締役 兼 事業本部長 兼 事業推進部 部長