お役立ちコラム

要介護4は日常生活において多くの支援が必要とされる状態です。要介護3と5の中間に位置し、身体的・精神的な介助が欠かせません。

本記事では、要介護4の具体的な状態や認定基準、受けられるサービス、そしてケアプランの例について詳しく解説します。

要介護度について

要介護度とは、介護保険制度において要介護認定を受けた方がどれくらい介護が必要かを客観的に数値化したものです。要介護度は、次のように区分されています。

  • 自立
  • 要支援1・2
  • 要介護1~5

要介護度の認定は、厚生労働省が定める「要介護認定等基準時間」をもとに日常生活の動作能力や認知症の有無などで判定されます。段階によって利用できるサービスや支給される給付の内容が異なるのが特徴です。

要介護度や要支援と要介護の違い、要支援・要介護認定を受けるまでの流れなどは、次の記事で詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

要介護1とは?利用可能なサービスや限度額、要支援2・要介護2との違いを解説
要介護2とは?認定基準や利用できるサービス、他の要介護度との違いを解説
要介護3とは?受けられるサービスや限度額、ケアプラン例を紹介

要介護4の状態について

要介護4とは、日常生活のほとんどの場面において介助が必要な状態を指します。この段階では、身体機能の低下が著しく、自力での移動や食事、排泄などが難しいことが多いです。

ここでは、要介護4の状態や認定基準、要介護4でも一人暮らしや自宅介護が可能なのかについて解説します。

要介護4の状態とは

要介護4の状態では、日常生活のほとんどの場面で介助を必要とします。自力で立ったり歩いたりすることが難しく、座っている姿勢を保つことも困難です。

そのため、食事や入浴、着替え、移動、トイレの利用など、基本的な生活動作を一人で行うことができず、家族や介護者の協力が欠かせません。さらに、認知機能が低下している場合も多く、徘徊や妄想、誤食、不潔行為といった認知症の症状が見られることもあります。これらの状態により、昼夜を問わず常時介護が必要です。

要介護4の認定基準

要介護認定は、厚生労働省が定める「要介護認定等基準時間」に基づいて決定されます。要介護認定等基準時間とは、日常生活の中で必要な介護サポートに要する時間を示したものです。

要介護4と認定されるためには、要介護認定等基準時間が90分以上110分未満に認定される必要があります。さらに、要介護4では認知機能にも大きな低下が見られる場合が多いため、要介護認定等基準時間に加えて認知症の進行も認定基準の一つです。

要介護4で一人暮らしは可能?

要介護4の状態では、日常生活を自力で送ることが非常に困難なため、一人暮らしは現実的ではありません。たとえ訪問介護(ホームヘルプ)や通所介護(デイサービス)を組み合わせて利用したとしても、ベッドから自力で起き上がることが難しいケースが多いため、日常の身の回りの世話を自分一人でこなすのは厳しい状況です。

また、家族が遠距離介護を行う場合でも必要なケアを十分に提供するのは難しいため、施設入居の検討がおすすめといえます。

要介護4は自宅で介護可能?

要介護4の状態は、昼夜を問わず常時介護が必要であり、食事、移動、着替え、入浴、排泄など日常生活において全面的な介助が求められます。

また、認知症による問題行動も見られる場合が多く、思考力や判断力の低下からコミュニケーションが難しくなり、自宅での介護には限界が生じることがあります。

介護者の負担が非常に大きくなるため、在宅介護だけで対応するのは難しいといえます。

自宅で介護を続けるのであれば、訪問介護(ホームヘルプ)や通所介護(デイサービス)といった専門の介護サービスの活用を検討しましょう。それにより、介護する家族の身体的負担や精神的疲れを軽減できます。

要介護3と要介護5との違い

要介護3と要介護5は、どちらも介護が必要な状態ですが、その程度には大きな違いがあります。ここでは、要介護4と要介護3、要介護4と要介護5の違いについて解説します。

それぞれ利用できる介護サービスの種類や必要なサポート度合いも異なるため、違いをしっかりと理解しておきましょう。

要介護3との違い

要介護3と要介護4の主な違いは、必要とされる介護の度合いにあります。

要介護3では、トイレや入浴、食事、着替えなどの日常生活のほぼすべてにおいて介護が必要です。また、足腰の不安定さから自力での立ち上がりやスムーズな歩行が難しい状態でもあります。

要介護4は寝たきりに近い状態で、介助なしで日常生活を送ることが困難です。洗顔や整髪、車いすへの移動、姿勢の変更などに介助が必要なほか、座った状態を保ち続けたり、両足で立ったりすることも難しいため、より高度な介護が求められます。

さらに、要介護4では身体機能の低下に加えて思考力や理解力にも著しい低下が見られるため、要介護3よりも複雑なケアと見守りが必要です。要介護4のほうが、より手厚い介護サービスが必要といえるでしょう。

要介護5との違い

要介護4と要介護5の違いは、言葉や表現の理解のしやすさにあります。要介護4ではある程度の意思疎通が可能です。しかし、要介護5になるとほぼ寝たきりとなり、日常生活のほぼすべてに介助が必要になります。

また、要介護5の状態では認知機能の低下により意思表示が難しくなることもあり、介護施設や医療機関での専門的なケアが必要になることが多くなります。

要介護4の支給限度額

要介護4に認定された場合に介護保険から給付される1か月あたりの支給限度額は、309,380円です。この限度額内でサービスを利用する場合は、費用の1割を自己負担(一定以上所得者の場合は2割、または3割)し、超過した分のサービス費用は全額自己負担になります。

具体的には、1割負担の場合は30,938円、3割負担の場合は92,814円が自己負担額です。

要介護4で受けられる給付・助成制度

要介護4と認定されると、さまざまな給付や助成制度を利用することが可能です。これにより、介護にかかる経済的な負担の軽減につながります。ここでは、要介護4で受けられる給付・助成制度について解説します。

福祉用具のレンタル・購入

要介護4と認定されると、福祉用具をレンタルしたり購入したりする際に、介護保険の適用を受けられます。

レンタル時に介護保険が適用できる福祉用具には、次のようなものがあります。

  • 介護ベッド
  • スロープ(工事を伴わないもの)
  • 車いす
  • 床ずれ防止用具
  • 体位変換器
  • 認知症老人徘徊感知機器
  • 移動用リフト(工事を伴わないもの・つり具部分を除く)
  • 自動排泄処理装置(尿のみ吸引するもの)

一方、購入時に介護保険が適用できる福祉用具としては次のようなものがあります。

  • 腰かけ便座
  • 自動排泄処理装置の交換可能部品
  • 入浴補助用具
  • 簡易浴槽
  • 移動用リフトの吊り具部分
  • ポータブルトイレ

費用は自己負担割合に応じて変わります。1割負担の方の場合、5,000円の福祉用具を購入する際の自己負担額は500円です。

高額介護サービス費制度

高額介護サービス費制度は、1か月の介護保険サービス費用の自己負担額が高額になる場合に、その超過分を払い戻す制度です。この制度は、月内の自己負担額が所定の負担上限額を超えた場合に適用されます。

負担上限額は、個々の所得水準によって異なり、所得に応じた設定がされています。

おむつ代助成制度

要介護認定を受けている方に対して、おむつ代を助成する制度が設けられている自治体もあります。おむつ代助成制度では、「おむつの現物給付を行う」場合と「おむつを購入した際に助成金が支給される」場合の2つがあります。

制度の内容や助成額、利用条件については地域によって異なるため、詳細についてはお住まいの自治体の行政窓口にお問い合わせください。

障害者控除

障害者控除は、所得税や住民税の負担を軽減するための制度で、本人または同一生計の配偶者や親族に障害がある場合に適用されます。控除対象者は「障害者」「特別障害者」「同居特別障害者」に分けられ、それぞれ控除額が異なります。

要介護4の状態では、税法で定められている「障害者」の条件を満たすことが多く、障害者控除を活用することで、介護にかかる費用負担を軽減することが可能です。控除を受けるためには、市町村長や福祉事務所長からの認定が必要です。

各自治体が発行する「障害者控除対象者認定書」を取得後、年末調整や確定申告時に申請を行いましょう。

居宅介護住宅改修にかかる介護保険給付

居宅介護住宅改修にかかる介護保険給付とは、要介護認定を受けた方の自宅環境を改善するための制度です。支給額の上限は20万円で、自己負担割合に応じた金額を支払うことになります。

具体的には、手すりの設置や段差の解消、床材の滑り止め加工など、バリアフリー化を進めるための工事などが対象になります。要介護4の方にとって自宅での安全な生活をサポートする制度となっているため、ぜひ活用を検討してみましょう。

住宅特定改修特別税額控除

住宅特定改修特別税額控除とは、所有する住宅でバリアフリー改修工事を行った際に一定の要件を満たすことで、所得税の控除を受けられる制度です。控除を受けるためには、確定申告書に必要な書類を添付し、所轄の税務署に提出する必要があります。

要介護4で受けられる介護サービス

要介護4に認定されると、さまざまな介護サービスを受けられます。具体的には、自宅での生活を支えるための訪問介護(ホームヘルプ)や訪問入浴、施設に通うことで専門的なケアを受けられる通所介護(デイサービス)などです。

ここでは、要介護4の方が利用できるサービスについて紹介します。

在宅で利用できるサービス

要介護4の方が在宅で生活を続けるためには、多様な訪問型サービスを活用することが重要です。具体的なサービスとしては、次のようなものが挙げられます。

  • 訪問介護(ホームヘルプ)
  • 訪問入浴
  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 居宅療養管理指導
  • 夜間対応型訪問介護
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護

訪問介護(ホームヘルプ)では、日常生活のサポートを受けられます。たとえば、食事の準備や掃除、洗濯といった家事の支援です。訪問看護では、看護師が定期的に訪問し、健康管理や医療的ケアを提供します。

これらのサービスを組み合わせて活用することで、安心して在宅生活を続けることが可能です。

施設に通って利用できるサービス

要介護4の方が施設に通って利用できるサービスには、次のようなものがあります。

  • 通所介護(デイサービス)
  • 通所リハビリテーション(デイケア)
  • 地域密着型通所介護
  • 療養通所介護
  • 認知症対応型通所介護

通所介護(デイサービス)では、日中に介護サービスやレクリエーションを受けられ、心身の機能維持が図れます。また、通所リハビリテーション(デイケア)では、専門職によるリハビリテーションが受けられ、身体機能の改善を目指します。

施設に入居して利用できるサービス

要介護4に認定された方が施設に入居して利用できるサービスとしては、次のようなものがあります。

  • 特別養護老人ホーム(特養)
  • 介護老人保健施設(老健)
  • 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム、軽費老人ホーム等)
  • 介護医療院

特別養護老人ホーム(特養)とは、在宅での生活が困難な要介護状態の高齢者が入居できる介護保険施設で、日常生活全般のサポートが受けられます。介護老人保健施設(老健)では、リハビリテーションを中心に、在宅復帰を目指したケアが行われます。

各施設では利用者の状態やニーズに応じたサービスを提供しているため、安心して生活を送ることが可能です。

訪問・通所・宿泊を組み合わせたサービス

訪問・通所・宿泊を組み合わせたサービスとしては、次のようなものがあります。

  • 小規模多機能型居宅介護
  • 看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)

小規模多機能型居宅介護サービスは、訪問介護、デイサービス、ショートステイを一体化したもので、利用者のニーズに応じて柔軟にサポートを提供できます。また、看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)では、医療的ケアが必要な方にも対応可能です。

施設に短期間宿泊して利用できるサービス

要介護4の方が利用できる短期入所サービスには、次の2つがあります。

  • 短期入所生活介護
  • 短期入所療養介護

短期入所生活介護は、特別養護老人ホーム(特養)などの施設に短期間宿泊し、日常生活上の支援や機能訓練を受けるサービスです。

一方、短期入所療養介護とは、介護老人保健施設(老健)などの施設において、看護やリハビリテーションを中心にしたケアを受けるサービスです。

これらのサービスは、在宅介護の負担を軽減し、家族の休息や緊急時の対応にも役立ちます。

地域密着型サービス

地域密着型サービスは、住み慣れた地域での生活を支え、要介護度が高くなった場合でも安心して暮らせるように設計されたサービスです。

要介護4の方が利用できる地域密着型サービスには、次のようなものがあります。

  • 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  • 地域密着型特定施設入所者生活介護

地域密着型サービスでは地域社会との繋がりを大切にしながら、より快適な生活をサポートします。

要介護4のケアプラン事例

要介護4は、日常生活の多くで介護を必要とする状態であり、適切なケアプランの作成が重要です。特に、在宅介護と施設介護の選択が重要になってきます。以下では、在宅介護と施設介護の場合のケアプラン事例を紹介します。

在宅介護の場合

在宅介護で要介護4の方を支援する際には、さまざまなサービスを組み合わせて利用することが重要です。在宅介護で利用可能なサービスを組み合わせたケアプラン事例と費用の目安について紹介します。

【ケアプラン事例と費用の目安】

サービス名 利用回数/月 月額利用料金
訪問介護(ホームヘルプサービス) 8回 25,360円
訪問看護 8回 43,680円
訪問入浴 4回 57,120円
訪問リハビリテーション 4回 13,480円
通所介護(デイサービス) 8回 84,480円
認知症対応型通所介護 4回 54,960円
短期入所生活介護 2日 20,540円
福祉用具貸与 定額 20,100円
合計 319,720円
自己負担額 1割負担 31,972円
2割負担 63,994円
3割負担 95,916円

月額利用料金については、「厚生労働省のシミュレーション」をもとに算出しています。サービスの利用回数を入力するだけで、1か月にかかる介護サービス費用の目安を算出できます。

施設介護の場合

要介護4の方が施設で介護を受ける場合、特別養護老人ホーム(特養)などが選択肢となります。今回は、特別養護老人ホーム(特養)でサービスを受ける場合の月額利用料を例として紹介します。

  • 施設サービス費 29,517円(1割負担の場合)
  • 食費 約4万円
  • 家賃・管理費など 約1.1万~6万円
  • 合計 約6万~15万円

介護施設へ入居した際には、月額利用料以外にもさまざまな費用がかかります。次の記事では、介護施設へ入居した際にかかる費用について解説していますので、あわせてご確認ください。

老人ホームの入居に必要な費用は?介護施設ごとの入居費相場や月額料金を解説

要介護4の場合は施設利用を視野に入れた介護が求められる

要介護4に認定された場合、日常生活全般にわたって常に介助が必要な状態であり、家族による自宅介護が難しくなることが多いです。このため、施設利用を視野に入れた介護が求められることがあります。

施設では、専門的なケアを受けられるだけでなく、介護者の負担も軽減されます。本記事を参考に、どのような施設やサービスが適しているか、具体的に検討してみましょう。

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝

2011年 4月 入社 事業推進部 配属 
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長
2023年 10月 常務取締役 兼 事業本部長 兼 事業推進部 部長