お役立ちコラム

要介護1と認定されると、介護保険を利用してさまざまなサービスを受けられます。しかし、具体的にどのようなサービスが利用でき、利用限度額がどの程度なのかを理解することは、家族にとって重要です。
この記事では、要介護1の認定基準や、要支援2・要介護2との違いについて詳しく解説し、適切な介護サービスの選び方をサポートします。

要介護度について

要介護度とは、「どれくらい介護が必要なのか?」を客観的に数値化し、区分けしたものです。大きく分けて非該当、要支援、要介護の3つの区分があります。
認定された要介護度が「非該当」である場合、それは自立している状態を意味するものです。つまり、要支援や要介護の状態には当てはまらないことを示します。ここでは、要支援と要介護の違いについて、詳しく解説します。

要支援と要介護の違い

要支援と要介護は、介護保険制度における支援の必要度を示す重要な区分です。要支援は、日常生活の基本的な行動は自力で行えるものの、家事など一部の活動に支援が必要な状態を指します。これには「要支援1」と「要支援2」の2つの段階があり、部分的なサポートを提供することが主な目的です。

一方、要介護は、日常生活における基本的な動作が困難で、継続的な介護を必要とする状態を指します。要介護には「要介護1」から「要介護5」までの段階があり、数字が大きくなるほど支援の必要度が高く、受けられるサービスの内容や給付額も変わります。

したがって、要支援と要介護の区分は、受けられるサービスや給付額を決定するための重要な基準といえるでしょう。

参考:厚生労働省「要介護認定に係る制度の概要」

要介護認定の流れ

要介護認定を受けるための流れは、以下の通りです。まず、市区町村の窓口で申請書を提出します。その後、認定調査員が自宅や病院を訪問し、本人や家族からの聞き取り調査を実施します。

次が、主治医による意見書の作成です。この際、事前に主治医に依頼しておくとスムーズに進むでしょう。

その後、一次判定がコンピューターによって行われ、続いて介護認定審査会で医療や福祉の専門家による二次判定が行われます。最終的に、非該当、要支援、または要介護のいずれかの結果が通知される流れです。なお、不服がある場合は、不服申立てを行えます。

要介護1とは

要介護1は、日常生活の一部において部分的な手助けが必要な状態を指します。具体的には、掃除や洗濯といった家事、排泄や入浴時に介助が求められることが多いです。

要介護1に認定されることで、介護保険を利用してさまざまなサービスを受けることが可能になります。ここでは、要介護1の具体的な認定基準や、利用できるサービスの内容について詳しく解説します。

要介護1の認定基準

要介護1は、要介護認定等基準時間が32分以上50分未満、またはそれに相当する状態と定義されています。この基準時間は、直接的および間接的な介護の必要性を時間で測るものであり、実際の介護時間と必ずしも一致するわけではありません。

具体的には、日常生活の中で部分的な介助が必要とされる状態を指し、立ち上がりや歩行、入浴などで一部介助が求められることが多いです。

要介護1に認定されると、利用できる介護保険サービスの範囲や保険での費用負担が決まります。

要介護1と要支援2・要介護2との違い

要支援2は、基本的な日常生活は自立していますが、部分的な支援が必要な状態です。要介護1になると、日常生活においてもう少し手厚い介護が求められます。

要介護2は、要介護1よりも介護の必要性が高く、日常生活全般での介助が必要です。たとえば、移動や衣服の着脱、入浴において、より多くの支援が求められます。また、認知症の症状が進行している場合も多く、より頻繁な見守りやサポートが必要です。

ここでは、要介護1と要支援2・要介護2との違いについて解説します。

要支援2との違い

要支援2と要介護1の主な違いは、身体的な衰えや認知機能の低下の程度にあります。要介護1では、要支援2よりも日常生活において多くの手助けが必要とされる状態です。

とくに、状態の安定性と認知症高齢者の日常生活自立度が大きな判別要素となります。状態の安定性は、今後の介護量の増加可能性を示し、再評価が必要な場合には要支援2から要介護1に移行することがあるため注意しましょう。

また、認知症高齢者の日常生活自立度が高い場合、要介護に判定される可能性が高まります。

要介護2との違い

要介護1と要介護2の主な違いは、日常生活におけるサポートの度合いです。要介護1では、食事は一人で行えるものの、トイレや入浴、歩行時に一部のサポートを必要とします。

一方、要介護2になると、これらに加えて食事の際も手助けが必要となり、身だしなみや家事など多くの場面で見守りやサポートが必要です。さらに、要介護2では思考力や判断力の低下が見られ、日常生活でできないことが増えるため、より細やかな支援が欠かせません。

また、利用できる福祉用具にも違いがあり、要介護2ではより多機能な福祉用具を利用することが可能です。

要介護1の利用限度額と利用可能なサービス

要介護1に認定されると、介護保険制度を利用してさまざまなサービスを受けることが可能です。しかし、これには利用限度額が設定されており、限度額内でサービスを選択する必要があります。

ここでは、要介護1の利用限度額や利用可能なサービスについて解説します。

要介護1の利用限度額

要介護1に認定された方は、介護保険制度を利用して最大167,650円分の介護サービスを受けることが可能です。この金額は「区分支給限度額」と呼ばれ、要介護度ごとに設定されています。利用者はこの限度額内であれば、サービス費用の1〜3割を自己負担するだけで済みます。

ただし、限度額を超える分は全額自己負担となるため、計画的なサービス利用が大切です。

介護サービスを利用開始する流れ

介護サービスの利用を開始するには、まず市区町村の窓口で要介護認定の申請を行います。その後、認定調査が行われ、審査判定を経て、認定結果が通知されます。

認定結果が届いたら、居宅介護支援事業所を選び、ケアマネジャーと相談しながら、必要なサービスを盛り込んだ介護サービス計画書(ケアプラン)を作成しましょう。施設サービスを希望する場合は、希望する施設との直接契約が必要です。

計画書が完成したら、いよいよ介護サービスの利用が始まります。

要介護1で利用可能なサービス

要介護1の方が利用できるサービスは多岐にわたります。大きく分けると、次の6つです。

  • 在宅で利用できるサービス
  • 施設に通って利用するサービス
  • 宿泊して利用できるサービス
  • 生活環境を改善するサービス
  • 施設などに入居して利用できるサービス
  • 地域密着型のサービス

それぞれ詳しく見ていきましょう。

在宅で利用できるサービス

要介護1の状態にある方が自宅で利用できるサービスには、訪問型サービスがあります。これは、看護職員や介護職員などの有資格者が自宅に訪問し、必要な支援を提供する形態です。

具体的なサービスとしては、訪問介護(ホームヘルプ)や訪問入浴介護があり、日常生活のサポートや入浴の支援を受けられます。

また、訪問看護や訪問リハビリテーションでは、健康管理や機能訓練を目的としたサービスが提供されます。さらに、夜間対応型訪問介護や定期巡回・随時対応型訪問介護看護では、夜間や緊急時にも対応できる安心のサポートが受けることが可能です。

これらのサービスを活用することで、在宅での生活をより安心かつ快適に過ごせるようになるでしょう。

施設に通って利用するサービス

要介護1に認定された方が施設に通って利用できるサービスは「通所型サービス」と呼ばれています。このサービスの目的は、利用者が可能な限り自立した日常生活を送れるよう支援することです。とくに、他者との交流を通じて心身機能の維持を図り、家族の介護負担を軽減する効果が期待されます。

具体的には、以下のようなサービスがあります。

  • 通所介護(デイサービス):日帰りで施設を利用し、食事や入浴、レクリエーションなどを受ける
  • 通所リハビリテーション:医療機関や介護老人保健施設などに通って、専門スタッフによるリハビリを実施し、身体機能の維持・向上を図る
  • 地域密着型通所介護:日帰りで食事や入浴などの日常生活上の支援、生活機能向上のための機能訓練などを受ける
  • 療養通所介護:看護職員による観察が必要な難病や認知症など、医療ニーズのある方に対し、看護や機能訓練を行う
  • 認知症対応型通所介護:認知症の方に特化したケアを提供するサービス

これらのサービスを活用することで、要介護1の方でも充実した生活を送ることが可能です。

宿泊して利用できるサービス

要介護1の方が宿泊して利用できるサービスは、「短期入所型サービス」として知られています。このサービスは利用者が可能な限り自宅で自立した生活を続けられるように、孤立感の解消や心身機能の維持・回復を目的としています。また、家族の介護負担を軽減し、介護者が不在の際の安全確保としても利用されるのが特徴です。

具体的には「短期入所生活介護」と「短期入所療養介護」があり、それぞれの施設で専門的なサポートが受けられます。

生活環境を改善するサービス

要介護1に認定された場合、日常生活をより快適にするための生活環境を整えるサービスが利用可能です。これには、福祉用具の貸与や購入、住宅改修費の支給が含まれます。

福祉用具の購入費は年間10万円まで支給され、手すりやスロープ、歩行器、歩行補助つえといった福祉用具の貸与も利用可能です。これらのサービスは、基本的に自己負担が1割で、所得に応じて最大3割まで負担が増える場合もあります。

適切な福祉用具や住宅の改修を通じて、要介護1の方が自宅で安全に生活を維持できるようになるサービスです。

施設などで利用できるサービス

施設などで利用できるサービスもあります。特定施設入居者生活介護は、有料老人ホームや軽費老人ホーム(ケアハウス)、養護老人ホームなどに入居している方が対象です。

これらの施設では、日常生活のサポートとして食事や入浴、排泄の介護を受けられるほか、身体機能の維持・向上を目的とした機能訓練も提供されます。とくに認知症の方に対しては、専門スタッフが日々の生活を支えることで、安心して生活を送ることが可能です。また、サービス付き高齢者向け住宅も有料老人ホームに該当し、同様のサービスを受けられます。

地域密着型のサービス

地域密着型のサービスは、住み慣れた地域でできる限り自分らしい暮らしを続けるための包括的なケアシステムを提供するものです。市町村が指定した事業者から提供され、地域に根ざした支援が受けられます。

要介護1の方が利用できる地域密着型サービスは、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、小規模多機能型居宅介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、地域密着型特定施設入所者生活介護などです。これらのサービスは、地域とのつながりを大切にしながら、介護が必要な方々が安心して生活できる環境を整えることを目的としています。

要介護1で入れる介護施設

要介護1に認定された場合、さまざまな介護施設を利用することが可能です。たとえば、介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホームでは、日常生活のサポートを受けながら安心して生活できます。

また、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)では、認知症の方に特化したケアを提供しています。さらに、介護老人保健施設(老健)や介護医療院では、リハビリテーションや医療ケアを受けることが可能です。

そのほか、介護型ケアハウスやサービス付き高齢者向け住宅も選択肢に挙げられます。こうした施設は、それぞれのニーズに応じたサポートを提供するため、要介護1の方やその家族にとって大きな助けとなるでしょう。

要介護1の認定基準で利用可能なサービスを把握しよう

要介護1に認定されると、日常生活の一部で介助が必要となります。具体的な認定基準には、認知症の影響で日常生活に支障が出る場合や、身体機能が低下しているが自力での移動が可能な場合などが含まれます。

また、要介護1では訪問介護やデイサービス、福祉用具のレンタルなど多様なサービスが利用可能です。これらのサービスを理解し、適切に利用することで、介護する方もされる方もより安心した生活を送れるようになるでしょう。

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝

2011年 4月 入社 事業推進部 配属 
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長