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お役立ちコラム
2024年11月1日
看護施設における看取り介護とは?ケアの種類や内容、流れについて解説
看取り介護は、人生の最終段階を迎えた方々が安心して過ごせるようにするための重要なケアです。この記事では、看護施設における看取り介護について、ケアの種類や具体的な内容、ケアの流れについて詳しく解説します。
目次
看取りとは
看取りとは、無理な延命治療を行わず、高齢者が自然に亡くなるまでの過程を見守ることです。この過程においては、食事や排泄などの日常生活のケアを行いながら、最期の瞬間まで穏やかに過ごせるようサポートします。
元々は、介護や看病といった世話をする行為そのものを指す言葉でした。しかし、現在では介護の有無に関係なく、最期を見守ることを意味するようになっています。看取りは介護施設において重要な役割を果たすため、利用者とその家族に寄り添った支援が必要です。
看取り介護とは
看取り介護とは、人生の終末期にある人々に対して、その人らしい最期を迎えられるよう支援する介護の形態です。これは、避けられない「死」に直面した方に対し、身体的・精神的苦痛を和らげることを目的としています。
延命治療を施すのではなく、医師の指示のもとで痛みを和らげ、日々の生活の質(QOL)を高めるためのケアを行うのが特徴です。たとえば、痛みや症状の緩和を優先し、家族や友人と一緒に過ごす時間を支援することで、穏やかで尊厳のある最期を迎えられるようにします。
看取りと似た用語の違いや定義
看取り介護に関連する用語には、ターミナルケア、緩和ケア、エンゼルケアがあります。これらの用語は似た目的を持つものの、それぞれ異なる側面を持っているため、違いを理解することが重要です。
ターミナルケア
ターミナルケアは、生命を脅かす病気の終末期にある患者に対して行われる医療的ケアのことです。医療機関での痛みや不快な症状を最小限に抑えることを目的としており、酸素吸入や点滴といった具体的な医療行為が含まれます。
このケアは「終末期医療」や「終末期看護」とも呼ばれ、治療による回復が難しいと判断された段階で開始されることが一般的です。ターミナルケアを行う際には、患者の症状や苦痛を緩和するための治療が中心となり、その開始時期は慎重に選定されます。
看取り介護との違いは、ターミナルケアは医療行為が主体である点です。
緩和ケア
緩和ケアは、がんをはじめとした重い病気の治療と並行して行われるケアのことです。病気の診断や治療開始からほぼ同時に始められるのが特徴で、治療に伴う痛みや身体的、精神的苦痛を和らげることを目的としています。
ターミナルケアが死へ焦点を当てているのに対し、緩和ケアは単に症状を和らげるだけでなく、患者の「生き方」に焦点を当てるケアです。医師や看護師だけでなく、医療ソーシャルワーカーや社会福祉士、栄養士など多職種の専門家が連携し、チームとして包括的に支援を行います。
エンゼルケア
エンゼルケアは、亡くなった方に対する死後のケアを指し、その目的は故人が穏やかで自然な表情でお別れできるようにすることです。
具体的には、体を清潔に保つための保清や、故人の表情を整えるためのメイクが含まれます。これらの処置は、故人への敬意を示すだけでなく、遺族が安心してお別れできるようにするためにも重要です。
また、エンゼルケアは逝去時ケアとも呼ばれ、施設スタッフが丁寧に行うことで、看取り介護の一環として故人とその家族に寄り添う役割を果たします。
看取り介護の内容
看取り介護は、終末期にある利用者とその家族を支える重要なケアです。このセクションでは、看取り介護の具体的な内容について紹介します。
身体的ケア
身体的ケアでは、基本的に医療行為は行いません。本人の意向を尊重しながら、苦痛やストレスを和らげるサポートを提供します。
具体的には、入浴介助や排泄介助、栄養や水分の補給、口腔ケアなどです。また、室温や照明を適切に整える環境整備や、体位を変えることで床ずれを防ぐことなども含まれます。
食事介助では、飲み込みが難しい方への対応として、食べ物を細かくしたり、ペースト状にしたりするなどの工夫が求められるでしょう。これらのケアは、本人の体の状態や動ける範囲に合わせて柔軟に行います。
精神的ケア
看取り介護における精神的ケアでは、プライバシーを尊重しつつ、本人が抱える孤独感や不安を和らげ、穏やかに過ごせる環境を提供することを目的としています。死期が近づくと、多くの方が不安や恐怖、孤独を感じるようになるものです。介護者はコミュニケーションやスキンシップを通じて、本人の気持ちに寄り添い、安心感を与えることが欠かせません。
具体的な精神的ケアの方法としては、まず継続的にコミュニケーションを図り、傾聴や声がけを通じて不安や悩みを軽減していきます。また、スキンシップを適度に行い、安心感を提供することも必要です。
さらに、今いる場所が安心だと思えるように室内環境を整備し、生活の質を保ちます。
家族へのサポート
終末期において、家族は不安と心配に包まれることが多くあります。看取り介護では、家族と密に連絡を取りながら、本人の意向をしっかりと伝えることが重要です。さらに、家族が抱える感情に寄り添って精神的なサポートも提供します。
具体的には、現状と予後についての説明を行い、いつでも相談に応じる体制を整えることが求められるでしょう。また、亡くなった後には、家族が喪失感から立ち直るためのグリーフケアを提供し、必要に応じて専門機関の紹介を行うことも大切です。
これらのサポートを通じて、家族が安心して大切な人の最期を見守れるように支援します。
看取り介護の流れ
看取り介護は、いくつかの段階に分かれており、それぞれの段階で求められるケアが異なるのが特徴です。
適応期から始まり、安定期、不安定・低下期、終末期、そして看取り期へと進むなかで、利用者とその家族が穏やかな最期を迎えられるよう、身体的ケアや精神的サポートが必要とされます。それぞれの段階について解説します。
流れ1.適応期
適応期は、介護施設に入居してから生活に慣れるまでの段階であり、看取り介護の最初のステップです。この期間は、本人が新しい環境に慣れるために重要で、生活リズムや介護スタッフとの人間関係に適応する必要があります。
しかし、慣れない環境でストレスが溜まりやすく、時には「自宅に帰りたい」といった感情を抱くこともあるでしょう。施設のスタッフやケアマネージャーは、本人の心身の状態や希望をよく理解し、適切なサポート体制を整えることが求められます。
流れ2.安定期
安定期は、施設の新しい環境や生活リズムに慣れ、精神的に落ち着きを取り戻す時期です。この期間では、最初に設定したケアプランの有効性を確認し、必要に応じて見直しを行っていきます。入居者の状況を細かく観察し、適切なケアが提供されているかどうかをチェックしましょう。
この時期では、日常生活をできるだけ維持することが大切です。たとえば、入浴や会話といった日常的な活動を通じて、心身の安定を図りましょう。
また、食事に関しては、少量であっても本人が好きなものを提供することで、生活の質を向上させられます。
流れ3.不安定・低下期
不安定・低下期は、看取り介護において特に注意が必要な段階です。この時期には、症状の悪化や衰弱傾向が顕著になり、食欲低下や体重減少が見られることが多くなります。身体的には、歩行が困難になり、車いすの使用が増えるほか、転倒の頻度も増加するため、適切な身体的ケアが求められます。さらに、緩和ケアを通じて痛みや不快感を和らげる取り組みが重要です。
精神的な面でも不安定さが増し、本人の精神状態が悪化することがあります。そのため、看取りケアの方針を見直し、本人や家族と相談することが重要です。この時期には、ケアの内容や方法について柔軟に対応し、より良いケアを提供するための見直しが行われることが多いです。
流れ4.終末期
終末期は生命の終わりが近づいている段階であり、死期が近いと考えられる状態です。この時期には、利用者は目を閉じている時間が多くなり、眠っている時間も長くなります。反応が少なくなり、言葉を発することも減少し、食事や水分の摂取がほとんどできなくなることが一般的です。
終末期では、家族に連絡を取って最期の看取りに向けた準備を行います。また、積極的な治療は行わず、生活の質の向上や精神的なサポートに重点を置くのも終末期の特徴です。
医師が回復が見込めないと判断した場合、看取り期に移行します。
流れ5.看取り期
看取り期は、衰弱が進み回復が見込めないと診断される段階で、最期の時間をどのように過ごすかを具体的に決定する重要な時期です。医師や介護スタッフ、家族とともに、急変時に延命治療を行うかどうかなどの対応を事前に共有しておくことが求められます。
また、最期のときには家族や友人が立ち会えるよう、必要な連絡を取ることも大切です。この時期には、看取り後の家族のサポートや葬儀会社への連絡も行い、穏やかな最期を迎えられるよう細やかなケアを心がけます。
看取り介護を行う3つの場所
看取り介護は、介護施設、病院、自宅の3つの場所で提供されることが一般的です。それぞれの場所の特徴について解説します。
場所1.介護施設
介護施設での看取り介護は、居住施設としての環境を活かし、利用者ができる限り穏やかに最期を迎えられるようサポートすることを目的としています。近年では、介護施設で看取りケアをするケースも増えてきており、看取りに対応しているのは、主に特別養護老人ホームや有料老人ホーム、介護老人保健施設などです。
介護施設では24時間体制で介護スタッフが常駐しているため、家族の介護負担の軽減につながります。病院と比べると限定的ではあるものの、看護師が常駐している施設であれば医療行為も可能です。
ただし、本人や家族が施設での看取りを希望していても、施設の体制や本人の容体によっては難しい場合もあるため注意が必要です。
場所2.病院
病院での看取り介護は、医療設備が整っているため、緊急時の対応が迅速に行えることが特徴です。
厚生労働省の調査によると、2000年には8割近くの方が病院で最期を迎えていたものの、その数は減少し、2021年には7割程度となっています。病院のベッド数が減少傾向にあるなか、今後は自宅や介護施設での看取りが選択肢として重要になってくると考えられるでしょう。
基本的に「療養型病院」で入院しながら看取りケアを行います。ただし、病院は緊急度の高い患者を優先するため、入院が難しいケースがあることは理解しておきましょう。
参考:厚生労働省「厚生統計要覧(令和5年度) 第1編 人口・世帯 第2章 人口動態 第1-25表」
場所3.自宅
自宅での看取りは、住み慣れた環境で最期を迎えたいという希望から、多くの人に選ばれています。
厚生労働省の「令和4年度人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」によると、43.8%の方が自宅での看取りを望んでいます。しかし、実際に自宅で最期を迎える方は、1990年代後半以降20%にも満たないのが現状です。
自宅での看取りには、ケアマネージャーや医師、介護士との緊密な連携が欠かせません。家族が中心となって24時間体制のケアを行うため、精神的・肉体的な負担が大きくなることも考えられるでしょう。このため、家族が適切にサポートを受けられる体制を整えることが重要です。
参考:厚生労働省「令和4年度人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」
参考:厚生労働省「厚生統計要覧(令和5年度) 第1編 人口・世帯 第2章 人口動態 第1-25表」
看取りのために必要な施設体制
看取り介護を適切に行うためには、施設内での体制整備が不可欠です。必要な施設体制について解説します。
職員向けの研修
職員向けの研修も看取り介護においては重要です。人の死に直面する機会が少ない職員も多く、看取りに対する理解を深めるための教育が欠かせません。
研修では、看取りについての考えやイメージを共有し、職員がそれぞれ考える機会を設けることが求められます。これにより、看取りを行う際に、本人が穏やかに最期を迎えるための支援が可能になります。
また、看取り後の職員の精神的ケアも忘れずに行うようにしましょう。
看取りについての意思確認
看取り介護においては、本人の意思に基づいた最期の迎え方が重要です。医師や医療従事者からの情報提供を受け、家族と話し合いを重ねることで、本人の希望が最大限に尊重されるケアを進められます。
また、本人が意思を伝えられない場合も想定し、事前に家族や親族を交えて継続的に話し合いを行うことが大切です。時間の経過や健康状態の変化に伴い、意思が変わる可能性もあるため、その都度話し合いをし、内容を文書に残しておくことが必要です。
家族の意向については、介護者だけでなく、遠方の親族とも意見をまとめておくとよいでしょう。
医療との連携
看取り介護において、医療との連携も欠かせません。希望や意向を尊重しつつ、最善の治療とケアを提供するためには、定期的な情報共有や連絡体制の整備が求められます。
医療チームが薬物療法を行うことで本人の苦痛を軽減しつつ、最期への支援を行います。これにより、本人の尊厳が守られた看取りケアが実現に近づくでしょう。
看取り介護で穏やかな最期を迎えてもらおう
看取り介護は、人生の最終段階にある方々に対し、その人らしい穏やかな最期を迎えるサポートを行う重要なケアプロセスです。身体的な苦痛を和らげるだけでなく、精神的な安心感を提供し、家族と共に大切な時間を過ごせるよう支援します。
個々のニーズに合わせたケアを提供できるように、看取り看護についての理解を深めておきましょう。
あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝
2011年 4月 入社 事業推進部 配属
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長