お役立ちコラム

災害はいつ起こるかわかりませんが、特に高齢者が避難する際には特別な配慮が必要です。

この記事では、介護施設で働く方々に向けて、高齢者が安全に避難するために準備しておきたい避難グッズの一覧を紹介します。日常の備蓄から、具体的な避難用グッズ、そして高齢者特有の必要品まで、幅広くカバーしています。

施設の利用者が安心して避難できるよう、ぜひ参考にしてください。

避難(防災)グッズの準備の仕方

災害時に備えて避難グッズを準備することは非常に重要です。避難グッズは「日常用」「備蓄用」「避難用」の3段階に分けて準備することで、緊急時にも柔軟に対応できるようになります。まずは、避難(防災)グッズの準備の仕方についてご紹介します。

日常用

日常的に持ち歩ける防災ポーチには、災害発生直後に命を守り、自宅や避難所にたどり着くまでの数時間から一晩を過ごすために必要なものを含めると良いでしょう。

普段使っているバッグに入る大きさのポーチを選びましょう。ポーチの素材は防水性があり、できるだけ軽量でコンパクトなものが理想的です。

身分証明書のほか、持病の薬などがある場合は、忘れずに入れておきましょう。

備蓄用

ライフラインが途絶えた際に、3~7日分の備蓄を用意しておくことが重要です。長期的な避難生活に備えて、さらに多めに備蓄しておくと安心でしょう。

日常用よりも長い期間の避難を想定しているため、食品・飲料水であれば栄養価の高い食品や飲み物が必要です。保存がきく缶詰やレトルト食品、乾パンなどが適しています。

衛生用品では、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、ウェットティッシュ、消毒液などの衛生用品も備えておきましょう。

避難用

避難用のグッズは、避難リュックにまとめて玄関などの出やすい場所に置いておくと便利です。1~2日分の最低限のアイテムを用意しておきましょう。

基本的な考え方は、「自分が」「自宅から避難所まで」「緊急時に」「持ち出せるか」という点に重きを置くことが重要です。具体的には、非常用のヘルメットや水、非常食、貴重品(現金、身分証明書のコピー)などが挙げられます。

日頃からこれらをリュックにまとめておけば、緊急時にすぐに持ち出せて安心です。

高齢者が避難するタイミング

高齢者が避難するタイミングは、一般的には「警戒レベル3」の「高齢者等避難」が推奨されています。

警戒レベル4の「避難指示」では、全員が避難をするべきタイミングですが、高齢者の方々や妊婦さん、乳幼児がいる家庭は避難に時間がかかることが予想されるため、レベル3のタイミングで早めに避難を開始することが望ましいでしょう。

また、警戒レベル3になってから準備をするのではなく、警戒レベル1〜2のタイミングや、天気予報で数日後に大雨が予想される場合には、早めの準備や避難を心がけると、安全に避難ができます。

参考:政府広報オンライン「「警戒レベル4」で危険な場所から全員避難!5段階の「警戒レベル」を確認」

防災グッズの収納方法

防災グッズの収納方法は、いざというときにすぐに取り出せるようにすることが大切です。特に高齢者がいる場合は、使いやすさや安全性を考慮した収納が求められます。

次に紹介する方法を参考にして、効率的に防災グッズを管理しましょう。

備蓄用はパントリーなどで管理する

備蓄品は、パントリーなどの食料品や生活用品をストックする場所で管理するのが理想的です。パントリーに食料や水、生活必需品を整理しておくことで、非常時にもすぐに取り出せるようになります。

また、消費期限がわかるように日付の付箋を貼り、古いものから順に普段の生活で消費する「ローリングストック」の方法を取り入れると良いでしょう。これにより、常に新鮮な備蓄品を保てます。

避難用は玄関に置いておく

避難時には迅速な行動が求められるため、避難用の防災グッズは玄関に置いておくことが重要です。玄関の近くに防災袋を置くことで、家の中から避難する際に最短距離で持ち出せます。

また、避難経路となる玄関付近に防災袋を配置しておけば、慌てずに行動できるため安心です。高齢者の場合、重い荷物を持ち運ぶのが難しいことが多いため、軽量で持ち運びやすいリュックタイプの防災袋が適しています。

避難グッズとしては、持ち出し用のリュックに必要最低限のアイテムを常備しておき、枕元にはスマートフォンや懐中電灯などの緊急時にすぐに使えるものを置いておくと良いでしょう。

このように、高齢者が避難しやすいように工夫することで、いざというときにスムーズに避難ができます。

一般的な避難(防災)グッズ一覧

まずは、一般的な避難グッズについて確認してみましょう。

服装関連

避難時の服装は、動きやすさと安全性を重視して選びましょう。一般的には、以下のアイテムが役立ちます。

  • 上着
  • 軍手
  • リュックの防水カバー(防水仕様のリュックでない場合)
  • はきなれた靴(長靴×)
  • マスク
  • レインコート
  • ヘルメット
  • ヘッドライト
  • 防災用の笛
  • 帽子

靴は、はきなれた靴であることが大切です。避難中に足を痛めないよう、普段からはき慣れているものを準備しておきましょう。長靴は避け、歩きやすいスニーカーや防水機能のある靴を選びましょう。また、防災用の笛は、万が一の救助要請に効果的です。

貴重品関連

防災の際に重要なものの一つが貴重品です。以下のアイテムを用意しましょう。

  • 本人確認書類・保険証のコピー
  • 現金(公衆電話用に硬貨を多めに)
  • 家族の写真+家族の連絡先を書いたメモ
  • 健康保険証のコピー

本人確認書類や健康保険証のコピーを用意してください。これらの書類は、避難先での身分証明や医療機関の利用時に必要となるため、必ず携帯するようにしましょう。

また、家族と連絡が取れなくなった場合に備え、家族の写真や連絡先を書いたメモも持っておくと安心です。

次に、現金も忘れずに用意しましょう。特に、公衆電話や自動販売機で使える硬貨を多めに持っておくと便利です。電子マネーやクレジットカードが使えない状況を想定し、現金を分けて保管することをおすすめします。

衛生用品&小物関連

避難グッズにおいて、衛生用品と小物は非常に重要です。以下のアイテムを用意しましょう。

  • 暑さ・寒さ対策できるもの(冷却グッズ・防寒シートやカイロなど)
  • ビニール袋(大・小)、ジッパー付き袋
  • トイレットペーパー(芯を抜いてつぶすと体積を減らせる)
  • 消臭タイプのビニール袋(汚物を入れるため)
  • 除菌スプレー
  • ウエットティッシュ
  • 使い捨て不織布マスク
  • 汗拭きシート
  • 救急用品(ばんそうこう等)
  • 歯ブラシ(歯磨きシートやマウスウォッシュなど推奨)
  • はさみ
  • タオル
  • 下着
  • 靴下
  • アルミブランケット
  • 寝袋または簡易マット
  • アイマスク
  • 耳栓

まず、暑さ・寒さ対策には冷却グッズや防寒シート、カイロを準備しましょう。ビニール袋(大・小)やジッパー付き袋は、汚れたものやゴミを分けるために便利です。特に消臭タイプのビニール袋は、汚物の処理に役立ちます。

次に、除菌スプレーやウエットティッシュは、手や物品の消毒に必須です。使い捨て不織布マスクや汗拭きシートも、清潔を保つために必要です。救急用品(ばんそうこう等)、歯ブラシ(歯磨きシートやマウスウォッシュなども推奨)も忘れずに準備してください。

その他には、はさみやタオル、下着、靴下も必要です。アルミブランケットや寝袋、簡易マットは、避難所での快適な睡眠をサポートします。アイマスクや耳栓も、静かな環境を作るために役立ちます。

飲み物・食べ物関連

避難時には、飲み物と食べ物も準備しておくことが大切です。以下のアイテムを用意しましょう。

  • 飲み物(500mlのペットボトル3本くらい)
  • 1~2日分(3~4食分)の非常食(アルファ化米、レトルトパウチ、缶詰パンなど)
  • 食べ慣れたお菓子
  • 皿になる容器(準備した非常食に応じて)
  • スプーンや箸(使い捨て)
  • 紙コップ

非常食としては1~2日分、つまり3~4食分を目安に用意します。具体的には、アルファ化米やレトルトパウチの食材、缶詰パンなどが適しているでしょう。これらは長期間保存が可能で、調理の手間も少ないためです。

食事に必要なスプーンや箸は使い捨てのものを準備しておくと便利です。紙コップや、非常食に応じて皿になる容器も忘れずに用意しましょう。

安全・情報収集関連

安全を確保し、必要な情報を迅速に収集するためのアイテムも欠かせません。以下のアイテムを用意しましょう。

  • 懐中電灯
  • モバイルバッテリー(乾電池式がおすすめ)
  • 充電用ケーブル
  • 携帯ラジオ
  • 予備の電池(ライト・ラジオ・モバイルバッテリーなど用)
  • イヤホン
  • ハザードマップ
  • 自治体等が出している防災冊子
  • メモ帳&油性ペン

懐中電灯は、停電時に役立つ必須アイテムです。使いやすいものを選び、電池の交換が簡単なタイプがおすすめです。また、モバイルバッテリーも現代においては欠かせないものとなっています。

携帯ラジオも災害時の情報収集に欠かせません。電波の入りやすいものを選びましょう。あわせて、ハザードマップも用意しておくことが重要です。ハザードマップとは、地域の危険区域や避難場所を確認できる地図で、自治体や国土交通省のホームページから入手できます。その他、災害時の行動指針や連絡先が記載されている、自治体等が出している防災冊子も貴重な情報源となるでしょう。

もしもの場合に備えて、重要な情報や連絡先を書き留めるためにメモ帳や油性ペンもあると便利です。水に強く、文字が消えにくい油性ペンを選びましょう。

高齢者向け避難(防災)グッズ一覧

高齢者の方の場合は、一般的な防災グッズだけでなく、持病の薬や健康保険証、老眼鏡などの自身の体調や環境にあわせたグッズも忘れないようにすることが重要です。必ず持参したい高齢者向けの避難グッズを紹介します。

持病の薬・健康保険証・お薬手帳のコピー

高齢者が避難する際に特に重要なのが、持病の薬や健康保険証、お薬手帳のコピーです。持病の薬が不足すると命にかかわることもあるため、非常用に最低3日分、できれば7日分を備えておくようにしましょう。

また、避難先で薬が足りなくなった場合、お薬手帳を持っていればいつもと同じ薬を出してもらえます。普段から通院し処方されている薬のページをコピーし、健康保険証のコピーと一緒にビニール袋などで包んで防災リュックに入れておくと便利です。

老眼鏡・メガネ

目が見えにくくなると、避難行動が遅れたり避難生活が不便になったりするため、老眼鏡やメガネは高齢者にとって重要なアイテムです。常にメガネをかけているという方でも、予備を用意しておくと安心できます。

また、就寝中に枕元に老眼鏡やメガネを置いている場合、大地震の揺れで紛失してしまう恐れもあるでしょう。そのため、防災セットには普段使いの老眼鏡やメガネとは別に、必ず予備を1本備えておくことをおすすめします。

成人用おむつ・簡易トイレ

高齢者の場合、トイレの頻度が多いため、断水時には成人用おむつや簡易トイレが必須です。在宅避難中にトイレが使えなくなることを想定し、1日あたり10回のトイレ使用を基準にして、夫婦で7日間分の約140回分の簡易トイレセットを用意するようにしましょう。

あわせて、成人用おむつも準備しておくと安心です。これにより、迅速かつ衛生的に対応できます。

歯ブラシ・入れ歯洗浄シート

高齢者にとって口腔ケアは、非常に重要です。口の中に細菌が増えると、虫歯や歯周病の悪化だけでなく、誤嚥性肺炎のリスクも高まります。そのため、災害時にも歯ブラシや入れ歯洗浄シートは欠かせません。

特に水が使えない状況では、水のいらない入れ歯洗浄シートがあると便利です。これらのアイテムがあれば、避難中でも口腔内を清潔に保ち、全身の健康を守るのに役立ちます。

はきなれた靴・杖・笛など

高齢者が避難する際には、はきなれた靴を用意しておくことが重要です。長靴は水が内部に入ってきて足元が重くなり、移動が困難になる恐れがあります。

また、長靴は紐がないものが多く、脱げやすいため転倒のリスクも高まります。そのため、普段はき慣れている靴を準備しておくと安心です。

また、いつも使用している杖を持ち出せない場合も考慮して、折りたたみの杖を用意しておくと良いでしょう。

さらに、笛も重要なアイテムです。がれきの下敷きになってしまった場合や、身動きが取れなくなった場合、自分の居場所を知らせるために役立ちます。

暑さ・寒さ対策グッズ

高齢者は体温調節が難しく、低体温や熱中症になりやすいです。そのため、避難グッズには暑さや寒さ対策のアイテムを多めに入れておくようにしましょう。

使い捨てカイロや冷却剤、断熱シートなど、さまざまな季節・気候でも対策できるものを多めに入れておくと安心です。

あらかじめ避難グッズを用意しておこう

高齢者の防災対策として、避難グッズの準備は非常に重要です。日常用、備蓄用、避難用といったカテゴリーに分けて、それぞれの必要なアイテムをリストアップしましょう。

また、避難のタイミングや防災グッズの収納方法も考慮に入れることで、スムーズな避難が可能になります。特に高齢者向けの避難グッズとして、持病の薬や健康保険証、老眼鏡、成人用おむつ、入れ歯洗浄シートなどを忘れずに準備しておくことが大切です。これらの準備を事前に行っておくことで、いざというときに安心して対応できるようになります。

施設での避難グッズの購入を検討する際には、この記事の内容を参考にして、適切な対策を講じてください。

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝

2011年 4月 入社 事業推進部 配属 
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長