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お役立ちコラム
2024年8月1日
介護の現場でよくある気管支炎とは?原因や治療法、予防法などを解説
「気管支」に炎症が発生し、咳やたんなどが起こるのが気管支炎です。気管支炎には大きく分けて2種類あり、急性気管支炎と慢性気管支炎に区別されます。それぞれ原因や対処法が異なる疾患であるため、介護の現場ではそれぞれの症状をきちんと把握しておくことが重要です。
この記事では、介護の現場でもよく耳にする気管支炎の原因や治療法、予防法を解説します。要介護認定についても解説しているので、参考にしてください。
目次
介護の現場でよくある気管支炎とは
気管支炎は、一般的なかぜとは異なります。かぜは、上気道(鼻からのどまで)に起こる炎症です。喉の痛みや咳、たんなどの症状が現れます。一方、気管支炎の炎症が起こるのは、のどの奥の下気道(気管支)です。
気管支は肺に近いため、気管支炎を悪化させると肺炎となることもあります。肺炎は、心肺機能が衰えがちな高齢者にとって命の危険を伴う疾患です。
気管支炎は、大きく次の2つに分けられます。
- 急性気管支炎:多くの場合ウイルス感染が原因
- 慢性気管支炎:喫煙や大気汚染によって引き起こされるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの慢性的な疾患が原因
どちらも「気管支炎」ですが、症状や対処法は異なるため注意が必要です。特に介護の現場では、その兆候や症状を見極め、適切な対処が求められます。
急性気管支炎とは
急性気管支炎とは、慢性肺疾患のない方に起こる気管支炎です。主にウイルス感染によって引き起こされる疾患で、その初期には喉の痛みや咳といった一般的なかぜの症状が現れます。急性気管支炎は、初期症状が現れてから3〜5日後に発症することが多いようです。
ここでは急性気管支炎をより詳しく知るために、原因や主な症状、診断方法、治療法を順にみていきましょう。
急性気管支炎の原因
急性気管支炎の原因となるウイルスには、次のようなものがあります。
- ライノウイルス:鼻水や咳、喉の痛みなどを起こす
- パラインフルエンザウイルス:かぜから肺炎まで多岐にわたる呼吸器疾患を起こす
- A型またはB型インフルエンザウイルス:ウイルス性呼吸器感染症で、施設入所者などの高リスク患者だけでなく若年患者にも命の危険がある
- RSウイルス:特に乳児や幼児の気管支炎を引き起こす。軽症で住むこともあるが肺炎など重症化する場合もある
- コロナウイルス:呼吸器だけでなく消化管や肝臓、神経系の疾患を起こす
このほか、マイコプラズマ肺炎や百日咳菌、肺炎クラミジアなどの最近が原因となることもあります。
急性気管支炎の症状
急性気管支炎の主な症状は、次の通りです。
- まず喉の痛みが現れる
- 乾性の咳(乾いた咳)または軽度の湿性の咳(たんを伴う咳)
- 胸の痛みや呼吸に伴う圧迫感によって呼吸が困難になる
- 軽度の発熱がみられることもある
- 子どもなど気管支が細い場合は喘鳴(ぜいめい=息を吐くと「ヒュー・ヒュー」となる呼吸音)を伴うことがある
さらに細菌感染を併発すると、「一旦下がった熱が再度上がる」「発熱の期間が長い」「全身の状態が悪化する」といった症状が現れる場合もあります。
喫煙する方や肺疾患の持病のある方は、繰り返し感染することもあるようです。
急性気管支炎の診断方法
急性気管支炎は、主に咳やたんといった症状に基づいて診断されます。多くの場合、検査などは行われません。
ただ呼吸困難を訴える方には、パルスオキシメーターによる血中酸素の測定や、肺疾患の有無を確認するための胸部レントゲンまたは胸部CTが実施されることがあります。特に咳が2〜3週間以上続く場合は、結核の可能性から胸部レントゲンによる診断が必要でしょう。
ほかにも症状によっては、後鼻漏および胃食道逆流症などの非感染性の原因を特定するため検査や、咳喘息の鑑別のために肺機能検査を実施する場合があります。
急性気管支炎の治療
急性気管支炎の治療には、次のような薬品を使います。
- たんの排出を促す去痰剤
- (たんを伴わない場合は)咳で夜眠れない場合は咳止め薬
- 細菌を駆逐するための抗菌薬
ただ基礎疾患や合併症がない場合は、通常抗菌薬を用いません。もっぱら安静と十分な水分・栄養の補給といった対症療法が中心です。
通常、急性気管支炎の症状は、数日から数週間ほどで沈静化します。90日ほど続く気管支炎までは急性気管支炎に分類され、数か月から数年と90日以上続く場合は慢性気管支炎に分類されるのが一般的です。
慢性気管支炎とは
慢性気管支炎とは、原因のわからない咳やたんが3か月以上続き、さらにこの状態が直近2年以上続いている症状がある疾患です。「軽い咳だから大丈夫」などと軽視してはいけません。何かをきっかけに肺炎など重篤化する可能性があります。
また喫煙が主な原因とされる慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、治癒が難しいとされ、症状が進行すると生活にも大きな影響が出る疾患です。まわりの方は、常に体調に気を配り観察する必要があるでしょう。
ここでは慢性気管支炎の原因や症状、治療法などについて解説します。
慢性気管支炎の原因
慢性気管支炎の特徴は、明確な原因がわからないことです。原因の可能性のある要素には、次のようなものが挙げられます。
- 生活環境にある特定のものに対する体質的なアレルギー
- 大気中の有害物質
- 受動喫煙を含めたタバコの煙
- 百日咳:特有のけいれん性の咳発作が特徴
- 副鼻腔気管支症候群:慢性副鼻腔炎など上気道の炎症を合併した症状
- 抗酸菌:咳やたん、発熱、倦怠感、寝汗などがみられる
なかでもタバコは、大きく影響していると考えられています。取り除くことの難しい原因もあるため、慢性化してしまっている可能性もあるでしょう。
慢性気管支炎の症状
慢性気管支炎は、原因不明の咳やたんが長期間継続します。なかでも慢性閉塞性肺疾患(COPD)には、次のような症状が見られるようです。
- 息切れ
- 喘鳴や呼吸音異常
- 労作時または発作性の呼吸困難
- 胸痛
さらに睡眠障害や貧血、筋力や運動能力の低下などが引き起こされることもあります。慢性気管支炎は気管支や肺だけでなく、全身また普段の生活に影響する疾患といえるでしょう。
慢性気管支炎の診断方法
慢性気管支炎が疑われる場合、次のような検査結果によって診断を確定されます。
- 胸部レントゲンまたはCT:高熱が続く場合は肺炎の併発が疑われるため
- 呼吸機能検査:スパイロメーターによって肺活量などの肺機能を測定
- 血液検査:採血により炎症マーカーを測定し、マイコプラズマ感染が疑われる場合はマイコプラズマ抗体検査や寒冷凝集反応検査も行う
- パルスオキシメーター:プローブという装置に指を挟んで動脈血中酸素量を測定
検査をしても疾患が特定できないとき、慢性気管支炎と診断されることもあります。
慢性気管支炎の治療
慢性気管支炎の治療には、次のような方法が用いられます。
- (喫煙者の場合)禁煙
- 薬物療法:抗菌剤、気管支拡張剤、去痰剤など
- 呼吸リハビリテーション:エクササイズで呼吸筋を鍛える
- 手術療法:手術で気管支を広げる
- (症状がひどく呼吸困難が強い場合)在宅酸素療法
禁煙は、自分一人ではなかなか難しいところがあるでしょう。禁煙外来などで禁煙補助薬を処方してもらうなど、医師の正しい指導のもと治療を進めることが大切です。
気管支炎を予防するには
介護施設には、気管支炎の予防が求められます。予防方法には感染症対策や禁煙などありますが、いずれも正しく徹底して行われることが大切です。
ここでは、介護施設において気管支炎を予防するために効果的な方法を解説します。
感染症対策をする
気管支炎の原因になり得るウイルス感染対策には、手洗いやアルコールによる手指の消毒、うがいなどが大きな効果を発揮します。入所・利用する高齢者だけでなく、施設に出入りする家族などの外来者にも徹底を促す必要があるでしょう。
新型コロナウイルスの感染拡大以降、基本的な感染症対策やこまめな換気を習慣としている施設は多くあります。しかし、夏や冬といった換気の難しい時期は回数も少なくなりがちです。時間を決めるなどしてできるだけ換気に努めましょう。
禁煙する
喫煙習慣のある方に多い慢性気管支炎の予防には、禁煙も効果的です。喫煙は自分だけでなく、副流煙を吸い込む周りの人たちにも影響します。喫煙は、気管支炎や肺炎、肺がんなどさまざまな疾患の原因になり得るリスクの高い習慣です。気管支炎の症状が出ないよう、また症状が悪化しないようにするためにも、禁煙する必要があるでしょう。
禁煙には、市販の禁煙補助薬を服用したり、禁煙外来を受診したりといくつか方法はあります。禁煙外来では一定の要件を満たすことで保険の適用も可能です。また薬の処方だけでなく、専門家のアドバイスも受けられるため、より効率的な治療も期待できます。
予防接種をする
気管支炎が悪化すると、肺炎が心配されます。肺炎は日本の死亡原因の上位にあり、高齢者にとってリスクの高い疾患の1つです。
なかでも肺炎球菌は、高齢者の肺炎の約4割を占めるといわれます。予防には、肺炎球菌ワクチンの接種が効果的です。
肺炎球菌ワクチンには、ニューモバックスNPとプレベナー13の2種類があり、それぞれ肺炎球菌に対する効果が異なります。なお、アメリカでは、プレベナー13を接種してしばらく後にニューモバックスを接種するよう推奨されており、日本も両方のワクチン接種が選択肢の1つとして示されるようになりました。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)や糖尿病、心疾患、腎不全といった疾患を患っている方や、喫煙習慣のある方は、肺炎球菌の感染リスクが高いため予防接種は受けておいたほうがよいでしょう。
施設での生活や生活環境を整える
気管支炎には感染症対策に加えて、次に挙げるような施設内での生活や生活環境の整備も効果的です。
- 栄養バランスの取れた食事をとる
- 規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠をとる
- 1日を通して適切に水分を摂取する
- 人の集まる場所ではマスクを着用する
- 居室やリビングなど室内の湿度を適切に保つ
水分は、症状の1つ「たん」を切るためにかかせません。また夏の暑い時期は熱中症への対策として適切な水分摂取は重要です。
また室内の状態も冬は乾燥に、夏はエアコンによる乾燥や換気不足に注意し、こまめに調整・実施する必要があるでしょう。高齢者は暑さや寒さを感じにくく、肌感覚だけでの調整では不十分な場合があります。気温計や湿度計を設置し、数値で判断して調整しましょう。
気管支炎患者の介護に関するよくある疑問
介護施設に入居する高齢者が気管支炎を患うと、介護者はさまざまな対処や変更を余儀なくされます。また介護施設ではなくても、家族に高齢者がいればいつ患うかわからないため、気管支炎に関する正しい知識を持ち、いつでも適切に対応できるよう備える必要があるでしょう。
ここでは介護の現場において、気管支炎または気管支炎患者に関するよくある疑問に回答します。
気管支炎になりやすい人はどんな人?
急性気管支炎の約9割は、ウイルスが原因です。他にも肺炎マイコプラズマや肺炎クラミジア、百日咳など原因が細菌である場合もあります。どちらにせよ感染した人と接触することの多い人は、接触によってウイルスや細菌がうつってしまう可能性が高いといえます。
また気管支喘息など気管支の持病がある方は、ウイルス感染の後に肺炎やインフルエンザなどに感染することもあるため注意が必要です。普段から食事の栄養バランスや水分摂取、室内の湿度調整などに配慮し、予防に努める必要があるでしょう。
高齢者が気管支炎になると入院が必要?
高齢者が気管支炎になった場合、入院が必要かどうかは医師が診断します。一般的に入院が必要とされる要件は、次のとおりです。
- 体力や抵抗力が著しく低下している
- 気管支炎が急激に悪化した、または重症である
- 酸素吸入など病院以外での管理の難しい治療が必要
診断によっては、自宅や介護施設でも療養できます。ただしできる限り安静にしておくこと、乾燥しすぎたり暑すぎたりしないよう気温と湿度を適切に保つことなど、介護者に求められることが増えるのは間違いありません。適切な介護が難しい場合は、医師に相談してみましょう。
気管支炎で介護認定は受けられる?
介護認定を受け、介護サービスを受けるには、まず申請の対象者でなくてはなりません。申請対象者の区分は次の2つです。
- 65歳以上で、原因を問わず日常生活に支援や介護が必要な方
- 40歳以上65歳未満で、医療保険に加入しており特定疾病によって支援や介護が必要な方
この「40歳以上65歳未満の方」の区分の「特定疾病」に気管支炎の1つ「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」が含まれています。要件を満たしていれば、介護認定を受けられる可能性があります。
介護認定を受けるには、要介護認定の申請が必要です。申請先は本人の住所を管轄する自治体になります。まずは、お住まいの地域の地域包括支援センターに相談してみましょう。
あなぶきの介護には、持病をお持ちの方でも安心してお住まいになれる施設が整っています。24時間看護体制が整った、安心の暮らしも可能です。居宅介護事業所では、介護認定のご相談も受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。
気管支炎はうつる?
気管支炎のうち、ウイルスや細菌の感染が原因である急性気管支炎は、咳やくしゃみなどを介してうつる可能性があります。トイレやリビング、浴室など共用の設備の利用後はしっかり消毒し、本人はマスクをかけるなどして他者にうつさないような配慮も必要です。
一方喫煙やアレルギー、汚れた空気などが原因である慢性気管支炎は、基本的にうつることはありません。ただし、慢性気管支炎の方でも急性気管支炎を発症することがあります。「いつも咳をしているから」と油断することなく、ウイルスや細菌への感染予防を努めましょう。
急性気管支炎が改善し、人にうつらなくなったかどうかは、医師の診断が確実です。
気管支炎予防に努めよう
気管支炎は、とりわけ高齢者にとって注意すべき疾患です。ウイルスや細菌が原因の急性気管支炎と、喫煙やアレルギー、空気中の有害物質などが原因の慢性気管支炎の2種類があり、それぞれ治療法は異なります。悪化すると、肺炎になる場合もあるリスクの高い疾患です。
高齢者の気管支炎予防には、生活習慣や生活環境を整えることが求められます。手洗い・うがいなどの感染症対策を徹底し、禁煙やエアコンの適度な利用、こまめな水分摂取などのすぐにできる対策でも予防効果は得られるでしょう。
高齢者は、体調の変化に気づかない可能性もあります。特に介護状態にある場合は、体調の変化を介護者が察知する必要もあるでしょう。日頃から予防に努め、かかってしまったときは速やかに医師の診察を受けることが大切です。
あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝
2011年 4月 入社 事業推進部 配属
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長