お役立ちコラム

老人ホームへの入居を考える際、しばしば「保証人」が必要とされることがあります。しかし、具体的に保証人がどのような役割を果たし、保証人になるにはどういった条件があるのか、ご存知でしょうか。

本記事では、老人ホーム入居における保証人の役割や条件、そして保証人がいない場合の対処法について詳しく解説します。家族の介護を考えている方々にとって、安心して施設選びができるようお手伝いします。

老人ホームの入居で必要となる保証人とは?

保証人とは、入居者の病状の悪化や認知症進行などによって、入居に関するさまざまな判断や手続きを入居者が行えなくなった場合に、代わりにそれらを行う役割を担う人物を指します。そして、老人ホームへ入居する際は、多くの施設では保証人が必要です。

ここでは、老人ホームへ入居する際になぜ保証人が必要となるのか解説します。あわせて、保証人と混同しがちな「連帯保証人」や「身元引受人」といった似た言葉の意味についても紹介するので、老人ホームへの入居を検討中の人はぜひ参考にしてください。

多くの施設ではリスク回避のために保証人が必要

老人ホームの多くの施設では、入居者に保証人を求めます。これは、施設側がリスクを回避するための措置です。保証人がいることで、万一の事態に備えて、金銭的な問題や緊急時の対応をスムーズに行えるようになります。

たとえば、入居者が支払いを滞納した場合、保証人が代わりに支払う義務を負います。また、体調が悪化した際などの緊急時には保証人が連絡先となり、必要に応じて意思決定を行うこともあるでしょう。

このような老人ホーム側で対応しきれない問題、判断できない問題に対して、入居者に代わって対応する(債務を負う)者という意味合いで保証人を必要としています。

保証人と似た言葉との違い

老人ホームの入居に際して保証人のほかに、似た言葉として連帯保証人や身元引受人といった言葉があります。それぞれの役割には微妙な違いがあるため、違いを理解しておくことが重要です。

まず、連帯保証人とは、入居者が払う入居費用などを払えなくなった際に、本人に代わって支払う義務のある人のことです。したがって、入居者からの支払いが滞った場合、施設は連帯保証人に費用を直接請求できます。

一方の身元引受人は、入居者が亡くなったあと施設から退所する際の手続きや身柄の引き取りを行う人です。金銭的な責任は含まれず、主に身元の保証を行います。

連帯保証人が金銭的保証に特化しているのに対し、身元引受人は生活全般のサポートを担う点が大きな違いです。

老人ホームの入居に必要な保証人の4つの役割

老人ホームに入居する際、多くの施設では保証人が必要です。保証人には重要な役割が4つあります。
主な役割は、次のとおりです。

  • 役割1.金銭面の保証
  • 役割2.緊急時の連絡先
  • 役割3.治療方針などの意思決定や手続き
  • 役割4.身柄の引き取りや手続き

それぞれの役割について詳しく説明します。

役割1.金銭面の保証

1つめの役割が、金銭面の保証です。具体的には、入居者が施設利用料や家賃など、その他の費用を支払えなくなった場合に、保証人がその支払いを代わりに行うことが求められます。

これは施設側が未払いリスクを回避するための措置です。したがって、保証人として選ばれる方は、一定の経済力があることが望ましいとされます。

役割2.緊急時の連絡先

2つめの役割が、緊急時の対応です。入居者が急な病気や事故などの緊急事態に遭遇した場合、施設は保証人に連絡を取るため、保証人が非常に重要な役割を担います。

入居者は高齢のため、急な病状悪化や容態急変などが発生する可能性を否定できません。そのようなとき、いつでもすぐに連絡ができる窓口として、保証人の連絡先を伝えておくことが一般的です。

そのため、緊急連絡先としての保証人は、迅速な対応が求められる関係上、日常的に連絡が取りやすい人が適しているでしょう。

役割3.治療方針などの意思決定や手続き

3つめの役割が、治療方針の決定や医療手続きに関しての手続き対応です。入居者が病気や怪我、認知症などで判断能力を失った場合、保証人は医療機関との連絡や治療方針の決定を行う必要があります。たとえば、緊急手術が必要なときや、特定の医療処置を受けるかどうかの判断を迫られる場合に、保証人がその意思決定を行います。

また、入居者が日常的に受ける医療サービスや介護サービスに関する手続き代行も、保証人の役割のひとつです。保証人がこれらの手続きを適切に行うことで、入居者が安心して生活を続けられます。

役割4.身柄の引き取りや手続き

4つめの役割が、身柄の引き取りや手続き対応です。入居者に万が一の事態が発生した場合、保証人には入居者の身柄を引き取る役割も求められます。

たとえば、入居者が亡くなった場合などが考えられるでしょう。このような状況では、遺体の引き取りや葬儀の手配などを保証人が行います。その他、退去時の荷物の引き取りや、医療費と未払い分の利用料の清算なども保証人の担当です。

保証人になるための条件やその他の決まりとは?

老人ホームに入居する際の保証人には、いくつかの条件や決まりがあります。ここでは、保証人になるための条件やその他の決まりについて解説します。

条件は役割を果たせること

老人ホームの保証人になるためには、いくつかの条件があります。なかでも重要なのは「保証人の役割を果たせること」です。

具体的には、金銭面の保証や緊急時の連絡先としての役割、治療方針の意思決定や手続き、そして必要に応じて身柄の引き取りや手続きを行えることが求められます。

金銭面の保証とは、入居費用や月々の利用料を支払う能力があることです。緊急時の連絡先としては、入居者に何かあった際に迅速に連絡を取り、必要な対応ができることが求められます。

また、治療方針の意思決定や手続きについては、医療機関との連携や入居者の意思を尊重した判断が必要です。身柄の引き取りや手続きについては、万一の場合に備えて適切な対応ができることが期待されます。

なお、条件を提示している老人ホームは少ないですが、次のような条件が定められていることが多いようです。

  • 資産や収入を証明する書類の提出が必要
  • 原則親族とする
  • 高齢の保証人は責任を負えない可能性があるため認められない

施設によっては審査される場合がありますが、配偶者や子などの親族がなるケースが多いようです。

人数は1人で良い場合が多い

老人ホームの入居に必要な保証人の人数については、多くの施設では1人で十分とされています。施設によっては、保証人と引受人を別に立てるよう求められることもあるため、入居前に確認しましょう。

途中で保証人が変わっても問題ない

老人ホームの入居に際して、保証人が途中で変わっても基本的に問題ありません。保証人は重要な役割を担っている人物であるため、入居後にその役割を果たすのが困難になった場合などに、老人ホーム側に伝えれば、変更が可能です。

保証人が変わる際には、新しい保証人が必要な書類を提出し、施設と新しい契約を結ぶことになります。ここで重要なのは、新しい保証人が前任者と同じ役割を果たせることです。保証人になる条件を満たしているかの審査がもう一度必要となることは、理解しておきましょう。

保証人がいない場合に老人ホームに入居する方法

老人ホームへの入居を検討する際、保証人が必要だと知り悩む方も多いでしょう。とくに独居の高齢者やその家族にとって、保証人を見つけるのは大変なことです。しかし、保証人がいない場合でも、老人ホームに入居する方法があるため、安心してください。

保証人がいない場合に老人ホームに入居する主な方法は次の2つです。

  • 保証人不要の施設を探す
  • 保証会社に依頼する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

保証人不要の施設を探す

保証人がいない場合でも、老人ホームに入居する方法はあります。そのひとつが、保証人不要の施設を探すことです。保証人不要の施設を探す際には、インターネットでの検索や地域の福祉相談窓口を利用すると良いでしょう。

また、老人ホームのパンフレットや公式ウェブサイトに「保証人不要」と明記されているか確認することも大切です。見学や相談を通じて、施設の対応やサービス内容を直接確認することもおすすめします。

ただし、保証人不要の場合でも、入居する施設自体が保証会社と提携をしていたり、成年後見制度の案内をされたりするケースもあるようです。その場合は、まったくの不要というわけではないため注意しましょう。

仮に保証人がまったく不要の場合は、施設入居後の金銭管理や医療機関への入院や手術が必要になったときに誰がどのように判断するのか、入居前に施設と入居者とで確認しておくと安心です。

保証会社に依頼する

保証人がいない場合、民間企業やNPO法人が運営する保証会社に依頼することもひとつの方法です。保証会社は、老人ホームの入居に必要な保証人の役割を担うサービスを提供しているため、家族や親戚に頼ることなく入居手続きを進められます。

保証会社に依頼する際には、契約料や年会費が発生し費用が高額になる場合がありますが、個人の負担を大幅に軽減できます。また、保証会社はプロフェッショナルなサポートを提供しており、緊急時の対応や金銭面の保証など、さまざまな役割を果たしてくれるのが特徴です。

保証人が見つからない場合は、安心して老人ホームに入居できる方法として、保証会社の利用を検討してみると良いでしょう。

保証人の代わりになる場合もある成年後見人とは

老人ホームの入居において、保証人がいない場合の対処法として成年後見人を立てることもひとつの手です。成年後見人とは、法律によって認められた代理人であり、特定の役割を果たす人物を指します。ここでは、成年後見人の役割や成年後見人を立てることで老人ホームに入居できるのか、について解説します。

成年後見人の役割

成年後見人とは、認知症などで判断能力が低下した方の保護や支援を目的とした法律上の制度です。成年後見人は家庭裁判所によって選任され、本人の利益を最優先に考えて、日常生活に必要な支援を行います。

具体的には、本人が認知症などにより判断能力を失った場合、必要な福祉サービスや医療を受けられるように利用契約の締結や医療費の支払いを行うほか、財産管理、税務申告などを担当します。また、施設への入居手続きや日常生活のサポートなども役割のひとつです。

なお、成年後見人には任意後見人と法定後見人の2種類があります。それぞれの概要は以下のとおりです。

  • 任意後見人:現在判断能力を有する人が、前もって選定しておく後見人のこと
  • 法定後見人:すでに判断能力が失われた人のために選ぶ後見人のこと

任意後見人では、後見を受ける本人が後見人を任意に選べます。また、後見人に対してどのような権利を任せるのかも、あらかじめ決められる点も特徴です。

ただし、任意後見制度は認知機能が低下した状態では利用できません。そのため、すでに認知機能の低下が見られる場合は、法定後見制度を利用することになります。

成年後見人がいれば老人ホームに入居できるかは施設次第

成年後見人がいれば、老人ホームの保証人が不要になるケースもあります。ただし、成年後見人がいれば入居可能かどうかは、施設ごとに異なるため注意が必要です。まずは、入居を希望する老人ホームに問い合わせるようにしましょう。

保証人がいなくても対処法次第で入居は可能

老人ホームの入居には保証人が必要とされることが多いですが、保証人がいなくても対処法次第で入居は可能です。保証人不要の施設を探したり、保証会社の利用を検討したりすることで、適切な老人ホームを見つけられます。

老人ホームの入居に必要な保証人の役割は、金銭面の保証や緊急時の連絡対応、治療方針・意思決定や手続きなどです。さらに、保証人になるためには条件があるため、事前に確認しておきましょう。

また、施設によっては成年後見人を立てることで保証人が不要になるケースもあるため、施設の規定をあらかじめ調べて相談してみることもひとつの手です。これらの対処法を活用し、安心して老人ホームに入居できるようにしましょう。

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝

2011年 4月 入社 事業推進部 配属 
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長