お役立ちコラム

高齢者にとって、テレビゲームはなじみがないものかもしれません。実は、テレビゲームは「室内でできる」「運動機能をあまり必要としない」「ジャンルが豊富」などの理由から、高齢者に一定の効果が期待されています。

この記事では、高齢者がテレビゲームをするメリットやおすすめのジャンル、プレイするときの注意点などを詳しくみていきましょう。

高齢者がテレビゲームをするメリット

高齢者は一般に、なじみのないことを避ける傾向があります。高齢者と呼ばれる世代は、テレビゲームがブームになり始めた1980年代はすでに働き盛りでした。そのため、テレビゲームになじみがないのも当然です。

テレビゲームには、高齢者にこそ期待できるメリットがあります。ここでは高齢者がテレビゲームをするメリットについて考えてみましょう。

脳の活性化が期待できる

テレビゲームをするには、コントローラーを画面のキャラクターの動きや発する音に合わせてタイミングよく操作しなければなりません。

これは、「画面を見る(=視覚を使う)」「脳が知覚する(=脳で判断する)」「決められたボタンを押す(=手などを動かす)」などの一連の動作によるものです。つまりテレビゲームでは、脳をはじめとしてさまざまな知覚や運動機能を使うため、脳の活性化が期待できるといえるでしょう。

テレビゲームでの複雑で連続的な思考は、脳の認知機能を鍛えるためにも効果的です。

足腰が弱っても楽しめる

テレビゲームは画面を見ながら手元のコントローラーを操作するものが多く、足腰が弱ってしまった高齢者でも、車イスなどに座ったままで参加できます。

コントローラーを持ち、手や足を上げて操作するタイプのテレビゲームも人気です。上半身だけを使うゲームであれば、車イスのままでもゲームできます。高齢者の状態に適したソフトや機器を用意すれば、手軽に毎日楽しめる点は、テレビゲームのメリットといえるでしょう。

達成感を得られる

高齢者には、達成感を得られることが重要です。テレビゲームには、いわゆる「ゴール」があります。あるゲームではより高得点を取ることであり、またあるゲームでは相手に勝つことがゴールです。

達成感を得ると、人間は脳内にドーパミンという神経伝達物質が放出されます。その結果、幸福感や快感を得たり、やる気や意欲を引き出したりという効果が期待できるのです。

たとえば高齢者に多い「パーキンソン病」は、ドーパミン不足によって引き起こされるといわれます。高齢になるほど達成感を得る機会が減るとされるため、テレビゲームは有効といえるでしょう。

運動の機会になる

高齢者にとって、テレビゲームは運動するよい機会です。とくに運動系のゲームでは、特定の筋肉を動かすためにプレイするという使い方もできます。

加齢により、人間は徐々に心身が衰えていきます。筋肉は動かさなければそれだけ衰えていくため、定期的な運動などが必要です。テレビゲームを取り入れることで、無理のない運動ができるでしょう。

心地よい疲労感が得られる

テレビゲームをすると、心地よい疲労感が得られるでしょう。適度な疲労感は寝つきをよくし、質の良い睡眠も期待できます。

現役世代でも、仕事で疲れたからといって何もせず一日中ゴロゴロしていると、夜眠れないことがあるでしょう。高齢者も同様で、一日中ただ座っているだけ、寝ているだけだと夜の睡眠が浅くなりがちです。

テレビゲームはもともと、視覚や聴覚、脳の判断力、指先などの運動能力を連携させる複雑な動作です。ただし過度の疲労は逆効果なため、ゲームの時間やゲ種類に配慮する必要があります。

コミュニケーションのきっかけになる

同じ施設の入居者同士でプレイすれば、コミュニケーションのきっかけになるでしょう。もちろん、1人で楽しむタイプのゲームもあります。ゲームによっては1対1の対戦や協力プレイ、3人・4人で競争するタイプもあります。

またテレビゲームは、若い世代にもたくさんのプレイヤーがいます。もしかすると入居者の子どもや孫と、一緒に楽しめるゲームがあるかもしれません。テレビゲームは、家族との新しいコミュニケーションのきっかけとしても期待できます。

高齢者におすすめのテレビゲーム

ひと口にテレビゲームといっても、そのジャンルやタイプはさまざまです。テレビゲームをしようとしてあまりに複雑なものを選んでしまうと、かえって苦手意識を持ちかねません。

ここでは高齢者にオススメの、テレビゲームのジャンルを解説します。

脳トレ系

ゲームを初めてプレイするのであれば、じっくり考えながらできる脳トレ系のゲームがオススメです。ここでいう脳トレ系には、パズルゲームや将棋、トランプ、クロスワードといったなじみのあるゲームも含みます。

入居者の中には「将棋は強かった」「囲碁を打ちたいが相手がいない」という人がいるかもしれません。テレビゲームなら道具が必要なく、いつでもプレイできます。

運動系

運動系のテレビゲームは、高齢者のリハビリとしても有効です。指先だけを使うのではなく、腕や足、体全体を使うテレビゲームも少なくありません。片手でしっかり握れるコントローラーをラケットやバットのつもりで振ると、画面の中のキャラクターが持っているものを振る、臨場感あふれるゲームもあります。

このタイプのテレビゲームであれば、「このボタンを押すとジャンプする」といったテレビゲーム特有のルールを覚える必要もありません。体を動かすことがそのまま操作につながるため、誰でも参加できるでしょう。

ただし運動系のゲームには、専用の器具を使うことが多いです。一度に複数でプレイするためには、器具を買う予算が必要になります。

eスポーツ系

若者に注目されているeスポーツ系テレビゲームも、高齢者が楽しめるジャンルです。

eスポーツとは、テレビゲームやパソコンを使ったコンピュータゲームでの対戦をスポーツ競技としてとらえたものです。1対1での対戦ゲームや、複数のプレイヤーが参加するスポーツゲーム、アクションゲームなどがあり、幅広いジャンル、多くのタイプのゲームを楽しめます。

高齢者には、パズルゲームがオススメです。パズルゲームであれば、1人でじっくり練習できる、大会での対戦にも備えられます。

ちなみにeスポーツは、高齢者のみのチームで大会へ参加するほど一般的です。大会での勝利を目指し、定期的にトレーニングするという活用法もあります。

育成系

育成系ゲームには、ゲームの中の対象物を「育てる」楽しみがあります。たとえばペットとして「犬」の世話をしたり、競馬馬を育てたりします。実在しない生き物をルールにしたがって育てるゲームは、ペットを飼いたい人も楽しめるでしょう。

ほかにも、牧場や農場を育てるゲームもあります。ゲームでは最終的にさまざまな作業ができるようになりますが、始めた当初は1つずつ説明が表示されるためじっくり取り組めばそれほど難しくはありません。

育成系ゲームには、周囲で見ているだけでも変化を楽しめるというメリットもあります。周囲から「これは何?」と尋ねられるなどコミュニケーションのきっかけにもなり得るゲームです。

高齢者がテレビゲームをする際の注意点

高齢者があまりなじみのないテレビゲームをすると、何が起こるかが予想しづらいことには注意が必要です。まったく興味を示さないかもしれませんし、思った以上になじんで「ハマりすぎる」かもしれません。

高齢者がプレイするときは、次のような点への注意が必要です。

勝負にこだわりすぎないようにする

プレイヤー同士の直接の対戦で勝ち負けがはっきりする対戦ゲームでは、勝負にこだわりすぎると実際の人間関係に支障が出てしまうこともあり得るため注意が必要です。テレビゲームを気に入るのはよいのですが、熱中しすぎると勝負にこだわる人も出てきます。

高齢者同志のテレビゲームの目的は、上手にプレイできるようになることではありません。指先や体を画面や音に合わせるように動かし、ゲームを楽しむことです。複数で楽しむときは、声かけなどによるスタッフの上手な誘導も必要でしょう。

長時間のプレイは避ける

長時間のプレイによって心身の負担となってしまうことは、避ける必要があります。テレビゲームを「ストレス解消」ととらえている人がいるかもしれません。テレビゲームは、視覚・聴覚を始め、脳の判断力や思考力、指先をはじめとする運動機能などを複雑に連携させるとても疲れやすい活動です。

認知症予防のためとはいえ、まったく興味を示さなかったり、拒否したりしているような高齢者にプレイさせるのは逆効果です。無理にプレイさせることでテレビゲームを否定的にとらえ、かえって孤立する恐れさえあります。テレビゲームは時間を決めて、皆が楽しめる程度にとどめましょう。

レベルに合わせた段階づけをする

レベルに合わせた段階づけをし、その高齢者に「ちょうどいい」難易度のものを選びましょう。テレビゲームも簡単すぎるとつまらなく感じ、難しすぎると「自分にはできない」と拒否したりプレイを諦めたりしてしまいます。どのテレビゲームにするかは、レベルを実際にプレイする高齢者に合わせることが大切です。

いきなりプレイして「ちょうどいい」ケースはなかなかないかもしれません。そのため、いくつか段階の異なるゲームを用意し、プレイしてもらったときの反応でレベルを測るという方法もあります。ゲームの難易度を誤るとプライドを傷つけてしまったり、興味を持ってもらえなくなることもあるため、注意が必要です。

転倒に注意する

テレビゲームに熱中するあまり、転倒したり、その拍子に体をどこかにぶつけてしまったりすることもあるため注意が必要です。高齢者でなくても、テレビゲームに熱中するあまり体が傾いてしまったり、大きなリアクションを取ったりすることはあります。

とくに運動系テレビゲームでは、体を大きく動かすタイプも少なくありません。プレイする本人だけでなく、見ている周囲の高齢者にぶつからないよう十分距離を取るなどして注意しましょう。

高齢者におすすめのテレビゲーム以外の活動

脳や指先を使うのは、何もテレビゲームに限ったことではありません。盤と駒があれば将棋ができますし、トランプならワンセットあるだけでいくつものゲームが楽しめます。テレビゲームと同じような効果が期待できる上、実際に道具を手にするため実感しやすいのはメリットです。

ここでは高齢者にオススメの、テレビゲーム以外のゲームを種類ごとに解説します。

頭脳系ゲーム

介護施設に入居している高齢者のなかには囲碁や将棋といった「頭脳ゲーム」を得意とする方がいるかもしれません。このような伝統的なゲームでは、知識より経験がものをいうものも少なくないため、若いスタッフでも簡単に勝てないほどの腕前を持っている場合もあるようです。

他にもクイズやなぞなぞ、しりとりも、簡単なゲームですが始めると思わず熱中してしまいます。勝ち負けがわかりやすく、達成感が得やすいオススメのジャンルです。

運動系ゲーム

デイサービスなどでは、体を動かす運動系ゲームもレクリエーションとして取り入れられています。

屋外でできる代表的な運動系ゲームといえば、ゲートボールやグラウンドゴルフでしょう。室内であれば、ふわふわとゆっくりただよう風船を使った風船バレーや、ペットボトルをピンに見立てた、テーブルの上でもできるペットボトルボウリングがあります。

音楽系の活動

脳の活性化や体を使うという意味では、音楽系のさまざまな活動も効果的でしょう。ピアノ(キーボード)やギターといった楽器の演奏や、カラオケに合わせて歌を歌うといった活動は、それだけでさまざまな感覚や運動機能を使うためです。

スマートフォンを活用した、リズムゲームアプリもあります。スマートフォンから流れる音楽に合わせ、画面のボタンなどを操作するシンプルなゲームです。画面のボタンが大きいため、高齢者でも比較的操作しやすく、手軽に始めやすいでしょう。

テレビゲームは高齢者にもおすすめ

テレビゲームは、高齢者におすすめの活動です。画面や音に合わせて判断し、指先などを動かして操作するという体の複雑な連携が求められます。そのため、脳の活性化の効果や心地よい疲労感による睡眠の質の向上、コミュニケーションへのきっかけといった効果が期待できるでしょう。

テレビゲームは高齢者が興味を持ち楽しめるタイプで、難易度も難しすぎず簡単すぎないことが大切です。テレビゲームのほかにも、ゲートボールや将棋、トランプなどなじみのあるゲームのもあります。

テレビゲームは、足腰が弱っている高齢者でも比較的始めやすい活動です。これまでの日常を変える、話題作りとしても大いに役立つ活動ともいえるでしょう。

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝

2011年 4月 入社 事業推進部 配属 
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長