お役立ちコラム

特別養護老人ホームは、比較的安い費用で利用できる介護保険施設です。一方で多床型のため、プライバシーや快適性が十分に得られない難点もありました。そこで登場したのが、ユニット型介護施設(新型特養)です。

ここでは介護施設選びに役立つ情報として、ユニット型介護施設(新型特養)の特徴や受けられるサービス、メリットとデメリットを解説します。

ユニット型介護施設(新型特養)とその特徴

大切な家族の入居先には、快適でこれまで通りの生活がしやすい介護施設を選びたいものです。要介護度が高かったり、医療的なケアが必要だったりとなれば、より細やかにケアしてもらえる必要もあります。

ここでは、このような要望に応えるために生まれた「ユニット型介護施設(新型特養)」の特徴をみていきましょう。

少人数ごとのグループに分けてケアを行なっている

ユニット型介護施設(新型特養)では、利用者を10人前後のグループ(ユニット)に分けてケアします。しかもユニットにはそれぞれ個室が設けられており、「1人になりたいときは個室」「他の人と関わりたくなったらリビング」というふうにプライバシーを守れるつくりです。

介護にあたるスタッフは、ユニットごとに配置されるため、原則として同じスタッフによるケアが受けられます。利用者にとって、顔なじみのスタッフがいることは心強い要素でしょう。より細やかな、利用者それぞれに適したサービスが受けやすい施設といえます。

自宅のような環境でプライバシーを守れる

ユニット型介護施設(新型特養)の個室は、プライバシーを守れるつくりです。ベッドとベッドテーブルのほかに、トイレや洗面台、バスルームまで備わっています。個室だけで1日を過ごすこともできるのです。

またユニット内にいるのは、スタッフを含め顔なじみの人ばかりです。ご近所付き合いのようだったり、家族と一緒に暮らす自宅のようだったりする環境で生活できます。

ユニット型と従来型の主な違い

新型特養とも呼ばれるユニット型介護施設には、従来の特別養護老人ホーム(特養)とは異なる点があります。これからどちらにするか考えるとき、この違いを把握しておくことは重要です。

ここでは、ユニット型と従来型の主な違いを解説します。

ユニット型は料金が高い傾向

特養は公的な施設であることもあり、民間施設に比べて安い費用で利用できるという特徴があります。しかしユニット型はより設備の充実した個室であるため、従来型に比べて費用が高額です。

従来型特養の月額利用料が8万〜9万円であるのに比べ、ユニット型介護施設の利用料は12万〜14万円とその差は4〜5万円になります。

ユニット型は全室個室

ユニット型は、利用者1人ひとりに個室が設けられ、各部屋にはトイレやバスルームなどの設備が整っています。これは、一般的な従来型と大きく異なる点です。

個室を出れば、広い共用リビングが広がります。このようなつくりであれば、プライバシーを守ることも、気分によって他の利用者やスタッフとも積極的に関わることも可能です。

ユニット型は専任スタッフが常駐

ユニット型は、ユニット単位で専任のスタッフが1人以上常駐します。そのため、ケアの質を下げず、1人ひとりに適した介護サービスを提供可能です。「顔なじみの人」にケアしてもらえることは、利用者にとって安心できる要素といえるでしょう。

一方、従来型特養のスタッフのシフトは、施設全体で構成されます。そのため利用者が特定のスタッフのケアを求めても、かなわないケースがあるかもしれません。とくにデリケートな内容のケアにおいて、ストレスになりかねない要素です。

ユニット型介護施設(新型特養)の入居条件

ユニット型介護施設(新型特養)の入居条件は次のとおりです。こちらは、従来型特養と変わりません。

  • 要介護3以上かつ65歳以上の方
  • 要介護3以上かつ40〜64歳で、特定疾病が認められる方
  • 要介護1〜2で、特例によって入居が認められている方

特養には、看護師の24時間配置は義務付けられていません。そのため、常時医療的処置が必要な方は十分な確認が必要です。また、人気の施設ほど入居待ちの人数は多いことが考えられ、入居できるとしても長期間待たなくてはならない場合もあります。

ユニット型介護施設(新型特養)で受けられるサービス

ユニット型介護施設(新型特養)でも、従来型特養と変わらない介護サービスを受けられます。大きな違いは、ユニット型は個室でサービスを受けられることです。ここではユニット型介護施設(新型特養)で受けられるサービスのなかでも、代表的なものを解説します。

日常生活活動のサポート

ユニット型介護施設(新型特養)の個室は、設備が充実している分、清掃や衛生面に不安を感じるかもしれません。それは施設のスタッフや外部委託された業者が担当します。洗濯も施設サービスに含まれるため、無料で依頼可能です。ただし、外部のクリーニング業者に委託する際には別途費用が発生するため、確認してください。

買い物をスタッフが依頼することもできます。なかには移動販売を利用し、玄関やリビングなどまで赴き自身で品物を選び買い物できる施設もあるようです。

高齢者は日常生活のさまざまな活動に支障をきたすことがありますが、ユニット型介護施設(新型特養)では自分でできることをできるだけやってもらい、難しいところをスタッフがサポートします。

スタッフによる健康管理

ユニット型介護施設(新型特養)では、スタッフにより健康管理されるため安心です。血圧・体温・脈拍といったバイタルがスタッフによって測定・記録され、異常がないかチェックされます。

高齢者が1人で暮らしていると、体調の変化を見逃してしまうこともあるでしょう。ユニット型介護施設(新型特養)であれば、そのような心配はありません。同様に服薬管理も、スタッフによってしっかりされているため安心です。

看護師が常駐していれば、胃ろうやたん吸引などの医療行為の提供もあります。喀痰吸引等を行える介護福祉士も増えてきました。医療行為の可否については、事前にしっかりと確認しましょう。

リハビリテーション

リハビリテーション(リハビリ)は、従来型特養と同様ユニット型介護施設(新型特養)でも行われます。食事や着替えなどの日常動作を自力でしてもらうのも、リハビリの1つです。レクリエーションを通じてリハビリを行う施設も多く、共用リビングに集まって行えば、他の利用者との交流にもなるため楽しみながら励むことにもつながります。

なかには作業療法士(OT)や理学療法士(PT)などによる、本格的なリハビリが可能な施設もあります。どのようなリハビリが行われているかは、事前の施設見学などで確認しておきましょう。

理美容サービス

施設によっては、利用者に対して理美容サービスを提供している場合もあります。外出できる利用者であれば、スタッフが付き添って出かけることも可能です。外出が難しい場合には、訪問理美容の外部事業者に依頼することができます。

提供されるサービス内容は事業者によってさまざまですが、利用者のニーズに沿って提供されるのが一般的です。ヘアカットはもちろんカラーリングや、ネイルを提供することもあります。

ユニット型介護施設(新型特養)のメリット

ユニット型介護施設(新型特養)が生まれたのは、ニーズとメリットがあるためです。介護施設を選ぶときは、それらのメリットも正しく把握しなくてはなりません。

ここでは、ユニット型介護施設(新型特養)におけるメリットを解説します。

一対一のケアが可能となる

ユニット型介護施設(新型特養)の大きなメリットの1つが、「1対1のケアが可能である」ことです。従来型特養でのスタッフ配置は、その日によって変わります。一方のユニット型介護施設(新型特養)ではユニットごとに担当スタッフが配属されるため、信頼関係を構築しやすいといえるでしょう。利用者にとっても家族にとっても、安心しやすい仕組みです。

個々の要望もヒアリングしやすく、より適切な介護サービスが提供しやすくなります。ユニット型介護施設(新型特養)は、利用者のより快適な暮らしを提供するための仕組みです。

他の利用者との交流の場がある

ユニット型介護施設(新型特養)では、個室と共用リビングのどちらででも過ごせます。「今日は静かに過ごしたいから個室でのんびり」「他の利用者とコミュニケーションを取りたいからリビング」というように、体調や心境に合わせた使い分けができます。

これは、スタッフにとっても嬉しいつくりと言えるでしょう。共用リビングからは原則としてすべての個室の出入り口が見えるため、様子を確認できます。個室を訪ねて様子を聞いたり、レクリエーションにさそったりと、利用者との接点を増やすことも可能です。

ユニット型介護施設(新型特養)は、他の利用者と適切な距離感を保てる施設といえるでしょう。

利用者の活動性が向上する

従来型特養に比べると、ユニット型介護施設(新型特養)では、利用者の活動性は向上する傾向があります。ベッド上で過ごすだけでなく、共用リビングにいる時間が増えるためです。

運動量が増えることにより、食事による摂取カロリーが増えます。さらに、介助にかける時間やポータブルトイレの設置台数が減ったという例もあります。これらの変化は、利用者が従来型特養に比べ活発な生活を送れるようになったことを示しているといえるでしょう。

ユニット型介護施設(新型特養)のデメリット

ユニット型介護施設(新型特養)への入居を検討するときは、メリットだけでなくデメリットについても正しく知る必要があります。ここで紹介するのはどれも、この施設ならではのデメリットばかりです。

利用し始めてから後悔することのないよう、施設選びの参考にしてください。

料金は従来型より高い

従来型特養の利用にかかる料金は、月あたり8万〜9万円が相場です。しかしユニット型介護施設(新型特養)の料金相場はおよそ12万〜14万円ほどと、従来型特養に比べて4〜5万円高くなっています。

ユニット型介護施設(新型特養)が1人ひとりに個室が設けられ、利用にあたっては水道光熱費等が別途でかかるためです。

利用料を本人の年金等でまかなえるのなら問題はありませんが、そうでない場合は家族などの支援が欠かせません。支払いについては慎重に検討し、負担できない場合は他の施設の利用も検討しましょう。

利用者によってはトラブルが起こる場合もある

ユニット型介護施設(新型特養)での共同生活では、トラブルが起こることもありえます。相性が悪い利用者がいたり、大声で騒ぐ利用者がいたりすれば、ストレスになることもあるでしょう。

介護施設での共同生活では、人間関係のリスクを避けることはできません。検討する施設での生活スタイルが入居希望者にあっているかどうか、という視点でのチェックが必要です。

なかなか入居できない

そもそも特養は人気が高く、入居待ちが当たり前とされます。比較的利用料が安いだけでなく、介護度が高い方を対象とし、原則として終身に渡って利用できるためです。

入居待ちが長くなる場合には、民間の施設も視野に入れる必要があるでしょう。担当するケアマネジャーなどに相談し、情報を集める必要があります。

ユニット型介護施設(新型特養)の現状と課題

さまざまなメリットのあるユニット型介護施設(新型特養)は、特養施設全体の4〜5割程度という現状です(2019年現在)。施設内の大幅な改修が必要なこと、また改修には高額な費用がかかることが普及が進まない原因とされます。

厚生労働省は、2025年までに全国の特養定員の7割をユニット型にすることを目標としています。

人材不足の昨今、受け入れ人数に空きがあるものの受け入れができない施設もあるようです。介護業界は依然として、ニーズの高まりと人材不足の間で厳しい状況にあるといえるでしょう。

参考:厚生労働省「個室ユニット型施設の推進に関する検討会 報告書」

ユニット型介護施設(新型特養)は利用者1人ひとりに合わせたケアが可能

ユニット型介護施設(新型特養)は、従来型特養に求められていたさまざまな課題を解消するために誕生しました。「利用者1人ひとりに個室が設けられる」「共用のリビングがあり、そして介護スタッフがユニットに専属として配属される」といった特徴があります。

従来型特養と変わらない入居条件で、同様の介護サービスが提供されます。ただし、料金が従来型より高くなる点には、注意が必要です。

特養は人気の介護施設であり、入居待ちは避けられません。なかなか入居できない場合には、民間を含めた他の施設も視野に入れましょう。

あなぶきの介護では、各種施設をご用意しています。医療的ケアが可能な施設やリハビリに特化した施設もあるため、お気軽にお問い合わせください。

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝

2011年 4月 入社 事業推進部 配属 
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長