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お役立ちコラム
2023年4月15日
孤独死とは?遺体引取から葬儀までの流れ、4つの対策案を解説
一人暮らしの高齢者が増え、孤独死も増加傾向にあります。これは、高齢者人口割合の高まりや世帯の核家族化によるものです。
とくに家族や親族と離れて一人暮らししている場合、いつ孤独死しても不思議ではありません。この記事では、孤独死の現場とその後にすべきこと、防止のための対策について解説します。
目次
孤独死とは?現状と孤立死との違い
孤独死とは、誰に看取られることもなく1人で亡くなることを指します。高齢になると以前より体をうまく動かせなくなり、周囲の知人も少なくなってしまう傾向です。そのため、社会との関わりが薄くなります。
もちろん、高齢者がすべて孤独死するわけではありません。孤独死の現状や孤立死との違いについて解説します。
孤独死の主な死因は「病死」
2022年11月に公表された調査結果「第7回孤独死現場レポート」によると、次のとおり孤独死の最も多い死亡原因は病死です。
死因 | 人数 | 割合 |
病死 | 4,496人 | 66.8% |
自殺 | 702人 | 9.8% |
事故死 | 82人 | 1.2% |
不明 | 1,447人 | 22.1% |
合計 | 6,727人 | 100% |
表の「不明」は多くが病死と考えられますが、確実と判断できないための措置です。間違いなく病死と判断されたのは孤独死全体の3分の2以上を占め、原因不明を除けば次は自殺が続きます。
自殺も国内の全死亡者に占める死因が1.4%であることを考えると、孤独死ではその7倍と深刻です。事故死には、転倒して頭を打った、冬の入浴時におけるヒートショックなどが含まれます。
参考:一般社団法人日本少額短期保険協会孤独死対策委員会「第7回孤独死現場レポート」
発見までの日数は「3日以内」が全体の約4割
孤独死をする方は、一人でくらしています。そのため、発見までに時間がかかりがちです。「第7回孤独死現場レポート」によると、発見までにかかった日数は次のとおり、3日以内が全体の約4割となっています。
全体 | 男性 | 女性 | |
3日以内 | 41.2% | 39.7% | 48.1% |
4日〜14日 | 27.9% | 28.3% | 25.7% |
15日〜29日 | 14.0% | 14.6% | 11.4% |
30日〜89日 | 14.1% | 14.7% | 11.6% |
90日以上 | 2.8% | 2.8% | 3.1% |
平均日数 | 18日 | 18日 | 16日 |
表からは、男性に比べて女性の方が短い日数で発見されていることがわかります。一方で、15日以上かかるケースも3割を超えています。このことからわかるのは、孤独死した方の家族を含めた社会とのつながりの希薄さです。発見までの日数の平均である18日は、これを裏付ける数値といえます。
参考:一般社団法人日本少額短期保険協会孤独死対策委員会「第7回孤独死現場レポート」
孤独死しやすい人の特徴
孤独死をした方には、共通した特徴があります。次に挙げる特徴は、孤独死につながる要素をはらんでいるものです。
- 一人暮らしである:1人で生活しているため、実際の生活の状況がわかりづらく、体調の急変などの異変に対処できない場合がある
- 経済的に困窮している:経済的な余裕がないため、電気代の節約のためにエアコンを使わない、栄養不足、病気になっても病院に行かないなど生活レベルが低くなりがち
- 健康管理ができていない:日頃から、栄養バランスの取れた食事や適度な運動など健康を維持するための習慣がなく、持病にもきちんと対処していない
- 男性である:孤独死する方の8割が男性といわれている
- 社会から孤立している:家族や地域の方々と接することが少ない、定期的に会うような友人がいない、コミュニティーに参加していないなど
孤立死の違いは社会とのつながりの有無
孤独死と似た言葉に、「孤立死」がありますが、孤独死とは定義が異なります。孤立死とは、社会から孤立した結果として、死後の長期間放置されるような状態です。家族や地域社会との交流が、客観的に見ても著しく乏しい方が亡くなることという言い方もできます。
この違いは、亡くなったときの状態です。亡くなったとき1人きりだったとしても、家族や友人など社会とのつながりがあった方なら孤独死、なかった方なら孤立死とされます。
孤独死発見から葬儀までの対応
孤独死を避けようとしても、さまざまな事情のため一人暮らししていれば孤独死してしまう可能性はあります。万が一とはいえ、起きてしまったとき慌ててしまわないよう対応の3つの手順を知っておくことは大切です。
- 対応1.遺体発見
- 対応2.警察による現場検証、遺族への連絡
- 対応3.遺族への遺体引き渡し、葬儀
ここでは親族が孤独死したとき、その発見から葬儀までの大まかな流れと対応について解説します。
対応1.遺体発見
孤独死は誰にも看取られない死であるため、死後に遺体として発見されます。発見者で多いのは親族で、その他住居の管理人や福祉関係者、友人というケースもあるようです。
もし自分が発見したら、まず息があるか、心臓の鼓動があるかを確認します。はっきり確認できない場合はまず119番に電話し、救急車を呼びましょう。救急隊員が到着したら生死を確認し、必要であれば警察への連絡や対応を依頼できます。
明らかに亡くなっているとわかる場合は、警察(110番)に連絡しましょう。警察官が到着したら、指示に従うのが基本です。待機中、部屋のものはできるだけ触らないようにします。
対応2.警察による現場検証、遺族への連絡
まず警察が行うのは、孤独死現場の検証です。住居の中で遺体が発見された場合、住人との見当はつきますが、間違いないことを確認する必要があります。警察は孤独死の経緯に事件性がないか確認すると同時に、死亡原因や経緯についても調査します。
もし犯罪に関係している可能性があれば、証拠を押さえるため、たとえ身内や家主であっても部屋への立ち入りは認められません。部屋の鍵を含めた証拠の一切は、一旦警察署に保管されます。
検視により身元が判明した後、死体検案書とご遺体をお渡しするため遺族に連絡がくるでしょう。公的書類や契約書などから調べ、警察が血縁関係の近い順に連絡します。ただ孤独死の場合、遺族が見つからないケースも多く、また見つかっても引き取りを拒否される場合もあります。
対応3.遺族への遺体引き渡し、葬儀
引き取りが決まったら、遺族の手で遺品整理や葬儀が行われます。遺族が引き取るのは、ご遺体を保管している葬儀社の連絡先と一時的に没収されていた証拠品です。一般的に孤独死のご遺体は、引き取る現地で火葬され、お骨として帰郷します。
これは公営の火葬施設の場合、住民登録している自治体での火葬の方が費用を抑えられるという事情のためです。
遺族がいない場合の葬儀までの流れ
警察は遺族について、亡くなった方の6親等まで探します。6親等といえば、はとこやいとこの孫までのかなり広い範囲です。それでも遺族がいない、見つからないこともあるでしょう。このような場合に適用されるのが、「行旅病人及行旅死亡人取扱法」という法律です。
この法律の定めでは、遺族がいない方や身元不明な方を火葬するのは自治体とあります。遺骨も引き取る人がいない場合は、おおむね5年前後保管した後、無縁塚に埋葬し、かかった費用も一旦自治体が負担するのです。
その後費用は、自治体から法定相続人や扶養義務者に請求されます。もし火葬の時点で遺族が見つかっていなくても、後日見つかればやはり負担するのは遺族です。遺族がおらず、大家さんなど遺族以外の人が葬儀を行うときは、原則として事前申請が必要ですが「葬祭扶助」という給付金を受け取ることもできます。
葬儀後に必要な「特殊清掃」「遺品整理」とは
住居で孤独死した場合、発見までの時間が長いほど遺体の損傷が激しくなります。さらに、ご遺体が腐敗するときに発生する腐敗臭や、体外に流れ出る血液などの体液や便、尿、害虫の発生などによって室内もかなり汚れるのが通常です。
このような状況での清掃を「特殊清掃」といいます。住居が賃貸物件であれば、他の住人に迷惑をかけてしまうこともあり、できる限り早く原状回復することが大切です。
また特殊清掃とは別に、亡くなった方の「遺品整理」が必要になることもあります。遠方に住んでいるなど難しい場合は、特殊清掃の業者が代行できる場合もあるので問い合わせてみましょう。
ただし、相続人にあたる人が業者に依頼すると、相続放棄ができなくなる可能性があります。相続放棄するかもしれない場合は、先に専門家に確認しましょう。
【孤独死】遺族にかかる3つの負担
孤独死について対応する遺族には、さまざまな負担がかかります。負担は種類で大きく分けると次の3つです。
- 負担1.金銭的負担
- 負担2.時間的負担
- 負担3.精神的負担
どれも現実の生活に大きく影響する可能性があるため、万が一に備えるためにはきちんと理解しておく必要があります。
負担1.金銭的負担
孤独死した方の遺族には、次のような金銭的負担がかかります。
- 葬儀とそれにまつわる費用
(遺族が遠方に住んでいる場合)現地での宿泊費や食事代などの生活費 - 警察の各種費用
- 特殊清掃の費用
- 遺品整理後の廃棄物の処分費用
賃貸物件での孤独死の場合、物件の原状回復にかかる費用も必要です。状況によってはかかる費用を誰が負担するか、どのように分担するかの折り合いがつかず、精神的な負担の原因となることもあります。
負担2.時間的負担
孤独死でなくても親族が亡くなると、遺族は多くの手続きや手配をすることになります。警察とのやり取りや特殊清掃の調整・依頼、賃貸物件住まいなら大家さんとの打ち合わせなど多くの時間がかかります。
遠方に住んでいて、代理を立てられない用事であれば、往復に時間もかかり、身体的な負担も大きくなりがちです。
必要な書類の記入や、添付書類の手配、提出や申請の受付時間の制限など、短時間で済ませたいが思うように進まずストレスと感じるかもしれません。
負担3.精神的負担
親族が孤独死したことは、遺族にとって大きな精神的負担になります。覚悟があったとしても、現実となるとなかなか受け入れられず動揺するのは仕方のないことです。
なかには、「どうにかして防ぐことはできなかったのか」と自身を責めることがあるかもしれません。発見までの時間がかかった場合は、ご遺体との対面でも大きなショックを受け、さらに時間的負担や金銭的負担が重なれば、精神的に疲れ切ってしまうでしょう。
孤独死に備えた4つの対策
高齢者の孤独死を避けるには、やはり日常的に孤立させないことが大切です。とはいえ遺族にできることには限りもあるため、万が一にも備える必要があります。
- 対策1.親族と定期的に連絡を取る
- 対策2.社会交流を図る
- 対策3.訪問サービス、老人ホームの利用を検討する
- 対策4.原状回復に備えた保険に加入しておく
ここでは、4つの視点で孤独死に備えるための対策について考えてみましょう。
対策1.親族と定期的に連絡を取る
孤立しないために手軽にできることの1つは、定期的に連絡を取ることです。直接訪問するだけでなく、頻繁に電話をかけたり、LINEやメールで近況を知らせ合ったりしていれば、ちょっとした変化の気づきにもつながります。
親族だけでなく、仲のいいご近所や民生委員などに定期的な訪問を依頼するのも効果的です。可能であればパートやアルバイトに励んだり、ボランティアに参加したりすると、生活にもハリが出ます。
対策2.社会交流を図る
より広い範囲で人と接する機会を増やすのもオススメです。地域で開催されているさまざまな趣味の講座やサークルに参加したり、リハビリや気分転換にはデイサービスを利用したりと社会交流を図る方法は多くあります。
また毎日ではなくても、週に何回か食材の宅配サービスや宅食サービスを利用するのも一案です。担当者と定期的に会えるので、話し相手になってもらえるかもしれません。
住まいにWi-Fiを設置してタブレットやPCなどを使い、ビデオ通話できるようにしたり、本人の同意を得て見守り家電やWebカメラを利用するのも便利です。
対策3.訪問サービス、老人ホームの利用を検討する
訪問系の介護サービスを利用することも、選択肢の1つです。体調の確認や掃除・洗濯といった家事、暮らしぶりを専門家の視点でチェックしてもらえるのは心強いでしょう。
サービスを利用していても、深夜の急変などには対応できない可能性があります。より細やかなサービスを得たければ、老人ホームの利用も検討してみましょう。老人ホームにもいくつか種類があり、介護の必要がない方でも入居できる施設もあります。
24時間、スタッフが常駐している施設であれば、深夜の急変にも対応できて安心です。看護師が常駐していれば、医療的なケアも受けられる可能性があります。
また老人ホームでは他の入居者との交流やリハビリ、趣味のサークルや季節のイベントなどさまざまな活動に参加でき、孤独になりにくい点がポイントです。孤独を感じさせないという孤独死の原因の有効な対策といえるでしょう。
対策4.原状回復に備えた保険に加入しておく
万が一孤独死した場合、賃貸物件の原状回復には高額の費用がかかります。このような事態に備える入居者が加入する保険も販売されています。火災保険とセットになっている保険や、特約とされている保険があり、入居時に加入する高齢者も増えているようです。
なかには、そのような保険に加入していることを知らず利用されないケースもあります。生前はなかなか尋ねづらいかもしれませんが、万が一に備えていつでも確認できるようわかりやすい場所に保険に関する書類を保管しておくなど工夫していた方が安心です。
孤独死予防には人とのつながりが大切
孤独死は、本人・遺族・関係者の誰にとっても避けたい事態です。社会の変化によって高齢者の一人暮らしは増えているため、孤独死も増加傾向にあります。一人暮らしの高齢者を持つ親族は、孤独死を防ぐ工夫と備えが必要です。
親族にはそれぞれの事情もあるでしょう。直接関われない場合は、さまざまな民間サービスや介護サービスなどを活用するのも効果的です。電話などを使って定期的に連絡をとるといった方法も含め、高齢者の一人暮らしをしっかりサポートするよう努めましょう。

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝
2011年 4月 入社 事業推進部 配属
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長