お役立ちコラム

お世話になった家族とはいえ、介護はかなりの身体的・精神的な消耗を強いられます。いくら疲れていても、介護を続けざるを得ない状況です。介護の疲れは適切に解消していかなければ、介護そのものができなくなりかねません。

この記事は、介護に伴う介護者の介護疲れについて、実態と課題、原因から導き出せる対処法について解説します。

介護疲れの実態

誰かを介護することは、大きな負担です。「実の親だから」「お世話になった人だから」など気持ちの上では当然と感じていても、体には疲れがたまります。次第に体調が悪くなっていけば、介護自体にも支障をきたすかもしれません。

ここではまず「介護疲れ」といわれる問題に至る、介護そのものについて考えてみましょう。

覚悟や準備もないまま突然介護が始まることも

「そろそろ介護することになりそうだ」と分かってはいても、実際に介護したことがなければ介護の大変さに備えるのは難しいでしょう。そのためか、多くの介護者は介護が「突然始まった」といいます。

介護は、生活動作が難しくなった方の生活を支えることです。実際に始める前の想像以上の難しさがあり、常に気を配る必要があります。場合によっては夜中に起こされるなど、ゆっくり眠ることもできません。

やらなくてはならないことは多く、こなすだけで一日が終わってしまうこともあります。責任感のある方ほど「自分のことは二の次」と疲れに気づかなくなるでしょう。ある日疲れが限界を超えてしまうのは、そのためです。

認知症・高次脳機能障害の介護は限界を迎えやすい

いくら介護が大変でも、相手と話ができたり何かを頼めたりとコミュニケーションが取れるなら、多少の気晴らしになるでしょう。しかし認知症や高次脳機能障害の場合は違います。

認知症の場合、次のような症状が現れます。

  • いつまでも同じことを言い続ける
  • 日中や夜間の区別なく歩き回り外出する
  • トイレで用をたしたくなっていることがわからない
  • 暴言や暴言をふるう など

例えば失禁すれば、介護者は着替えや失禁の後片づけをして、元通りにしなくてはなりません。排泄物をきれいにふき取るだけでも大変な作業で、時間もかかります。そうしている間も、行動から目を離せません。

高次脳機能障害の方にも、同様のことが言えます。高次脳機能障害には、記憶障害や注意障害、遂行機能障害(決めた行動や人との約束を実行できない)、社会的行動障害などがあります。

同じ後片付けを1日に何度もして、何度言ってもわかってもらえなかったら、一対一で介護している介護者はつらいでしょう。体だけでなく気持ちまで疲れ果て「もう介護できない」と限界を迎えてしまうのです。

介護疲れが引き起こすさまざまな問題

高齢化がさらに進めば、介護者のニーズはより高まります。しかし、若い世代の人口がそもそも少なく、1人で介護にあたらなくてはならない介護者は増えてしまうでしょう。次第に疲労感や食欲不振が慢性的になり、睡眠障害や思考障害など、自身の日常生活に問題が現れ始めます。

大切な家族のためです。もちろん介護は誰かがしなくてはなりませんが、介護は責任感や義務感だけでできることではありません。「そのくらい大丈夫」と軽視せず、介護者は体調や気分のちょっとした変化にも細心の注意を払う必要があるのです。

介護疲れの放置は「介護うつ」にもつながる

1人で介護にあたるストレスは、はた目に見るよりずっと深刻です。体の疲れはもちろん、精神的な負担や義務感・責任感と現実のギャップからくるつらさは、日ごとに蓄積します。それが一定のレベルを超えると現れるのが「介護うつ」です。

ここでは近年よく話題に上る介護うつについて、詳しく解説します。

介護うつとは「脳のエネルギーが不足した状態」

介護うつにかぎらずうつ病は、「気の持ちよう」で何とかなるものではありません。ストレスや身体的な負担が重なると、不安が増すなどして十分な睡眠や休息が取れなくなります。

ストレスや体の疲れはさらに増し、思考力や意欲、判断力が下がってミスも増えます。さらに不安を感じて眠れず、疲れはいよいよひどくなり……と悪循環に陥るでしょう。こうして脳の処理能力を超え、エネルギーが尽きて不足している状態がうつです。

介護うつの原因は、介護のストレスや体の疲れです。特別なことではなく、介護する誰にでも可能性がある病と言えます。

介護うつによって引き起こす諸症状

介護うつになると初期に現れることが多いのは、食欲不振や睡眠障害といった症状です。この状態が数週間続けば、介護うつを患っているかもしれません。他に慢性的な疲労感や倦怠感がある、思考力が落ち集中できないといった症状も同様です。

日常生活に支障が出始めると、介護うつはさらに悪化する可能性があります。このような症状を感じたらできるだけ早めに受診をし、対処するよう心がけましょう。

介護疲れの原因は?何がつらいの?

介護に携わる人の多くが感じているであろう介護疲れは、できる限り回避したいものです。そのためには、介護疲れそのものを詳しく分析する必要があります。

ここでは介護疲れを3つの視点から分析し、その要点を押さえていきます。

身体的な疲れによるもの

介護は、さまざまな生活動作のサポートです。介護する相手が立てなかったり、腕がうまく動かせなかったりという運動機能の問題を抱えていれば、活動を補助したり代行したりします。ベッドから自分で起き上がれなければ、スムーズに補助しなくてはなりません。

このような介助の動作では、介護者に身体的負担がかかります。とくに衣服の着脱やトイレ・入浴の介助などは、しゃがんだり中腰になったりと無理な体制になることが多く、注意が必要です。

また夜間のトイレ介助や徘徊飲み守りによって、思うような睡眠時間が取れなかったり、生活時間が不規則になったりすることも、身体的な疲れの原因になり得ます。

精神的な疲れによるもの

献身的な介護は、介護する相手にはもちろん、親族や介護・医療の関係者、近隣住人などに対して気をつかうため、精神的に疲れがちです。

とくに1人で介護している場合、精神的に参ってしまうかもしれません。家族の理解を得られなければ、家族まで気をつかう対象になってしまいます。介護にかかわる問題や悩みを誰にも相談できず、自分だけで解決しようとして、結果的により自分を追い込んでしまう可能性もあります。

精神的な疲れは、外見から見えづらいためより注意が必要です。身体の疲れと同様に、介護負担の軽減が求められます。

経済的な負担

介護には、かなりの費用がかかります。介護保険が適用されるとはいえ、利用するサービスが多いほど出費が増えるのは当然です。在宅介護であれば、紙おむつや誤嚥防止のための食品などの出費もかさみます。

さらに介護によって離職を余儀なくされれば、問題はより深刻です。できれば離職ではなく、雇用形態の変更や異動を希望するなどが得策でしょう。

経済的な負担が長期化すると、精神的・身体的な負担にまで影響が及びます。維持が難しい場合は、ケアマネジャーなどに相談して、早めに解消の道を探しましょう。

介護疲れを予防・緩和する5つの対策

介護疲れは多くの介護者が抱えている問題でもあり、解消には慎重かつ積極的な行動が必要です。

ここでは、介護疲れを解消するための対策を5つ解説します。

  • 対策1.ストレスの根本原因を把握する
  • 対策2.食事と睡眠をたっぷりとる
  • 対策3.在宅サービスや便利グッズを利用して介護負担を減らす
  • 対策4.介護施設に入居するという選択肢も検討する
  • 対策5.自分で自分を認めてあげる

互いに関連している項目もあるため、できるだけ5つすべての解消に努めることが大切です。

対策1.ストレスの根本原因を把握する

まずは自分の状態や生活、思考パターンなどを冷静に振り返ることが重要です。原因は1つでないことがほとんどで、別の原因と関連している可能性があります。より客観的に把握するためにも、ノートなどに書き起こすのがおすすめです。

介護の技術や知識の不足が原因なのか、悩みを誰にも相談できないことなのか、状況によって異なり、また時間がたてば状況が変わることも考えられます。過去の自分を振り返るためにも、書き出して記録し、根本原因を把握するよう努めましょう。

対策2.食事と睡眠をたっぷりとる

介護は、体力を消耗します。疲れにくい体づくりの基本として、食事をきちんととり、じゅうぶんな睡眠を確保することは欠かせません。

食事は1日3食、疲労回復と同時にエネルギー補給のため偏りがなくバランスのよい食事を心がけることが大切です。規則正しい食生活は自律神経を整え、体の疲れだけでなくストレスの軽減にも役立ちます。

対策3.在宅サービスや便利グッズを利用して介護負担を減らす

在宅介護サービスのしくみが整備され、さまざまな負担を軽減する便利グッズもあります。ただし、知らなければその恩恵を受けることはできません。

まだ利用していない介護サービスがないか、探してみましょう。便利グッズが、想像以上の効果をはっきするかもしれません。少しでも介護の負担を減らせるように、ケアマネージャーや地域包括支援センターに相談してみましょう。

対策4.介護施設に入居するという選択肢も検討する

「親の介護は家族だけで行うもの」と考え、自宅で介護しているかたもいるでしょう。しかし介護疲れによって介護する家族が体を壊したり、病気になったりして介護できなくなってしまえば、家族の負担はかえって増すだけです。

介護施設に入居すれば、経験豊富な専門家からより快適な介護を受けられる可能性もあります。日常の介護にあたっていた家族がより多く収入を得られれば、経済的な負担は現在より軽くなるかもしれません。施設への入居は、常に選択できる選択肢の一つであると認識しておく必要があります。

あなぶきの介護には、認知症やリハビリに対応する施設もあります。お気軽にお問い合わせください。

あなぶきの介護

対策5.自分で自分を認めてあげる

介護では、「ああすればよかった」「自分は役に立たない」などと反省したり、後悔したりすることがあるでしょう。すべてにおいて完璧な介護は理想です。しかしできていないことばかりに目を向ければ、自分を責め過ぎてしまいかねません。

介護することには、大きな意味があります。反省や改善は必要ですが、それ以上に責めたりせず、できたことを認めることは非常に重要です。「介護していることには価値がある」ということを自分自身にしっかり伝えてあげましょう。

介護疲れや介護うつの対処法

深刻な介護疲れにより、介護うつが疑われるようであれば、早めに対処する必要があります。主な対処法は、2つあります。

  • 対処法1.仕事を続けている場合は介護休業を取得する
  • 対処法2.抱え込まずにケアマネジャーや地域包括支援センターに相談する

2つとも、すぐにできる対処法です。現状と周辺環境、タイミングなどをよく見極め、介護うつの悪化を防ぎましょう。

対処法1.仕事を続けている場合は介護休業を取得する

仕事を続けているのであれば、一定の要件を満たすことで「介護休業」を取得できます。取得には、休業開始予定日の2週間前までに事業主に対して書面で申し出ることが必要です。対象家族1人につき3回まで、通算93日まで休業できます。

取得できるのは、入社から1年以上経過していて、取得予定日の93日後のさらに6カ月後までに契約期間が満了し更新されないことが明らかでない労働者です。対象家族は本人の配偶者(事実婚を含む)、本人の父母と祖父母、兄弟姉妹、配偶者の父母、本人の子および孫とされています。

また雇用保険の被保険者であれば、一定の要件を満たせば期間中、休業開始時賃金月額の67%が支給される制度もあります。詳細は最寄りのハローワークで確認するとよいでしょう。

参考:厚生労働省|介護休業制度

対処法2.抱え込まずにケアマネジャーや地域包括支援センターに相談する

介護疲れがひどくなると、冷静な判断ができなくなる恐れがあります。担当のケアマネジャーや、地域包括センターの存在さえ忘れてしまうかもしれません。

どちらも介護の専門家であり、とくにケアマージャーは要介護者とその家族の生活状況から適切な介護サービスを提案してくれます。一人で抱え込まずに事情をすべて伝え、これからどうすることができるか、どうするとよいかを話し合いましょう。介護者が正常に介護できるよう、適切な介護の方法を見つけてくれるでしょう。

あなぶきの居宅介護支援事業所では、介護サービスご利用前の要介護認定申請代行からケアプランの作成、また訪問介護や通所介護(デイサービス)など、その方に合わせたプランをご提供いたします。初めての方も介護相談(無料)を随時行っていますので、お気軽にご連絡ください。

あなぶきの介護

介護のプロも上手に利用し無理のない介護に努めよう

「自分しかいない」と家族の介護を担うことは、とても立派なことです。しかしいざ取り組んでみると想像とは異なり、「やっぱりできない」と思うこともあるでしょう。体を酷使する介護を無理に続ければ、腰や肩などを傷めるばかりか、精神的に追い詰められて介護うつを患ってしまうこともあります。介護疲れを上手に解消しながら、介護を続けることが重要です。

介護疲れ解消のためには、一人で抱え込まないで、プロを適切に利用しましょう。ケアマネジャーを含めた介護のプロは、そんな介護者のための相談相手なので、利用しない手はありません。

介護疲れは深刻になるほど正常な思考力が薄れ、そんなプロの存在さえ忘れてしまいがちです。そうなってしまう前に、介護のプロも上手に利用し無理のない介護を目指しましょう。

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝

2011年 4月 入社 事業推進部 配属 
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長