お役立ちコラム

科学的介護とは、介護者の経験ではなく科学的根拠に基づいて提供される介護のことです。活用されるシステムは「LIFE」と呼ばれています。今回は、科学的介護の基礎知識や加算内容、メリットなどについてわかりやすく解説します。導入を検討される方は、ぜひ参考にしてください。

科学的介護とは「科学的裏付けに基づく介護」のこと

科学的介護とは、科学的根拠に基づき、自立支援と重症化防止を進める介護のことです。根拠はエビデンスとも呼ばれ、実施された研究をもとに論文などによって導き出されます。1990年代以降、医療分野では「エビデンスに基づく医療」が取り入れられてきました。

厚生労働省は、2016年(平成28年)よりエビデンスに基づいた介護をおこなうためのデータベースの運用を始めています。データベースは「VISIT」、「CHASE」とブラッシュアップを重ね、現在運用されているのは2つを一体化した「LIFE」と呼ばれるものです。

まずは、従来の介護を取り巻く課題をふまえつつ、科学的介護情報システム「LIFE」が導入されるまでの経緯などについてみていきましょう。

介護保険制度・介護報酬の新たな仕組み

2021年の介護報酬改定では、科学的介護に対する新たな加算が設けられました。

例えば、新設された「科学的介護推進体制加算」では、事業所側が利用者のデータをLIFEに提出し、国からのフィードバックをケア改善に役立てることで、一定の単位が加算されます。

「科学的介護推進体制加算(Ⅰ)」の単位数は、施設形態に限らず利用者1人あたり40単位です。1単位は原則10円のため、1人あたり月400円の報酬が上乗せされる形になります。

そのほか、2021年の介護報酬改定では、さまざまな加算でLIFEの活用が要件として設けられました。

そのなかのひとつ、「リハビリテーションマネージメント加算」は、計画なリハビリテーションを実施し、利用者のデータをLIFEに提出した事業所を対象としています。また、「口腔衛生管理加算(II)」は、口腔衛生管理を強化している施設がデータを提出した際に適用となる加算です。

このように、介護保険制度や介護報酬では2021年を機に科学的介護を重視した取り組みが進められています。

従来の介護を取り巻く課題

従来の介護は、介護に携わる人の経験や知識、感覚に頼る部分が多々ありました。利用者の食事量やADL改善率の判断など、多くの場面に介護従事者の経験が生かされいたといえるでしょう。

一方で、介護現場は慢性的な人材不足の問題を抱えています。高齢者の人口が増加するにも関わず、労働生産人口は減少の一途をたどっているのが現状です。これまでのように経験に頼る介護方法では、今後十分なサービスを提供できなくなる可能性があります。

そこで注目されたのが、科学的根拠に基づく科学的介護です。経験ではなくエビデンスに基づく科学的介護であれば、介護従事者のスキルに左右されることのない質の良いケアを提供できます。

より幅広いサービスが求められる介護業界において、科学的介護は課題解決の糸口となっていくでしょう。

参考:内閣府「令和3年版高齢社会白書(全体版)」

科学的介護情報システム「LIFE」の導入

科学的介護システム「LIFE」の導入は、2021年度からスタートしました。LIFEは、前身となる「VISIT」と「CHASE」を統合したデータベースです。初期のデータベースVISITの運用は、2017年度から始まっています。

2017年度 VISIT ・VISIT運用開始
・通所・訪問リハビリテーション事業所からリハビリテーションの情報を収集
2018年度 ・介護報酬においてVISITを評価
2020年度 CHASE ・CHASEの運用を開始
・全ての介護サービスを対象に高齢者の状態やケアの内容等の情報を収集
2021年度 LIFE ・VISITとCHASEを統合したLIFEの運用を開始

2021年3月末時点で、LIFEのIDは約6万事業所に発行され、PDCAサイクルを回すためのツールとして活用されています。

参考:厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)について」

科学的介護情報システム「LIFE」について

「LIFE」は、利用者の状態をインターネットを介して厚生労働省へ送信すると、分析された内容がフィードバックされる情報システムです。送信した情報はデータとして蓄積され、フィードバック情報に活用されます。

ここでは、LIFEの具体的な役割や利用状況、導入方法について解説します。LIFEを活用するにあたって必要な対応も確認していきましょう。

LIFEの役割

LIFEの役割は、科学的に妥当性のある情報を現場から収集し、データとして蓄積したうえで分析することです。分析結果は現場にフィードバックされ、さらなる科学的介護の推進に役立てられます。

現場がLIFEに送信するのは、共通の指標を用いた評価や、ケアの実績内容などです。現場はLIFEからのフィードバックをもとに計画書などを改善し、さらなるプランを作成します。その後、新たなプランに基づいたケアを実施。以下のように、PDCAサイクルを推進していきます。

PLAN(計画) ・計画書などの作成
DO(実行) ・計画書などに基づいたケアの提供
CHECK(評価) ・利用者の状態、ケアの実績などの評価、記録および入力
LIFEへデータを提出→
←LIFEからのフィードバック
ACTION(改善) ・フィードバック情報による利用者の状態やケアの実績の変化などをふまえ、計画書を改善する→PLANへ続く

LIFEの利用状況

独立行政法人福祉医療機構が実施した、2021年度介護報酬改定に関するアンケート調査によると、介護老人保健施設の約50%がデータ登録まで完了しています。

「利用申請予定」までを含めると、特別養護老人ホームがもっとも高い88.2%です。次いで通所介護が78.1%と、LIFEの利用に対し意欲的であることがうかがえます。

一方で、事業所全体の1~3割はLIFEを利用申請する予定はないと回答しています。理由としてあげられたのが、データ登録やシステム全体への理解の負担です。

なかでも、認知症対応型通所介護や小規模多機能型居宅介護の利用状況は20%台と低い数値を示しています。

参考:独立行政法人福祉医療機構「2021年度(令和3年度)介護報酬改定に関するアンケート調査(全編)」

LIFEの導入方法

LIFEを導入するためには、あらかじめ以下のWebサイトから新規利用申請をおこなう必要があります。

LIFE新規利用登録

新規利用申請をおこなった事業者には、LIFEの新規利用登録案内が送付されます。登録が完了し、IDが配布されたらインターネットオプションを設定。LIFEにログインし、利用を開始する流れです。

LIFEへのログイン操作方法は、VISITやCHASEなどの利用の有無によって異なります。また、インターネットオプションの設定方法も、利用するブラウザごとに異なるため気を付けてください。

LIFEの提出頻度

科学的介護推進体制加算の場合、LIFEへのデータの提出は基本的に6カ月に1回です。ただし、ほかの介護報酬加算を受けている場合は、3カ月に1回のペースでデータを提出する必要があります。

6カ月ごと ・科学的介護推進体制加算
・ADL維持等加算
3カ月ごと ・個別機能訓練加算
・リハビリテーションマネジメント加算
・褥瘡対策指導管理
・排せつ支援加算
・かかりつけ医連携薬剤調整加算
・薬剤管理指導の注2の加算
・栄養マネジメント強化加算
・栄養アセスメント加算
・口腔衛生管理加算(Ⅱ)

また、各データの提出期限は毎月10日までです。10日の締め切りを過ぎると、当該月の科学的介護推進体制加算が得られなくなる可能性があるため注意してください。

加算は利用者ごとにおこなわれるため、データ量が多い場合は利用者をグループ分けしてデータを分散提出することもできます。

LIFEの活用にあたって必要な対応

LIFEを活用するには、インターネットに接続できる環境を整えておく必要があります。また、前述したように利用申請手続きも必要です。

毎月25日までに新規利用申請をおこなった事業者には、翌月10日までにLIFEの新規利用登録案内が送付されます。

LIFEの利用開始までには一定の期間を要するため、新たに導入する場合はスケジュールも確認しておきましょう。

参考:厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)について」

科学的介護を推進する「科学的介護推進体制加算」について

科学的介護推進体制加算は、2021年の介護報酬改定時に新たに設けられた加算です。単位数は、40〜60単位とサービスごとに異なります。

ここからは、科学的介護推進体制加算の対象となる具体的なサービスの種類を紹介します。サービスごとに少しずつ異なる算定要件や、加算の提出方法もあわせて確認していきましょう。

科学的介護推進体制加算の対象となる介護サービスの種類

科学的介護推進体制加算の対象となる介護サービスは、以下のとおりです。

  • 通所介護
  • (介護予防)通所リハビリテーション
  • (介護予防)特定施設入居者生活介護
  • 介護老人福祉施設
  • 介護老人保健施設
  • 介護医療院
  • 地域密着型通所介護
  • (介護予防)認知症対応型通所介護
  • (介護予防)小規模多機能型居宅介護
  • (介護予防)認知症対応型共同生活介護
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  • 看護小規模多機能型居宅介護

また、単位数は科学的介護推進体制加算(Ⅰ)および(Ⅱ)でそれぞれ次のように設定されています。

加算の名称 対象施設 単位数
科学的介護推進体制加算(Ⅰ) すべての施設 月40単位
科学的介護推進体制加算(Ⅱ) 介護老人福祉施設
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
月50単位
介護老人保健施設
介護医療院
月60単位

科学的介護推進体制加算の算定要件

科学的介護推進体制加算の算定要件も、単位数と同様に(Ⅰ)と(Ⅱ)それぞれに異なります。

加算の名称 算定要件
科学的介護推進体制加算(Ⅰ) ・利用者ごとの基本的な情報(ADL値、口腔機能、栄養状態、認知症の状況)をLIFEを用いて厚生労働省に提出していること
・サービス提供にあたり、LIFEに提供した情報やフィードバックを有効活用していること
科学的介護推進体制加算(Ⅱ) ・上記に加え、入所者ごとの疾病や服薬の状況を情報を、LIFEを用いて厚生労働省に提出していること
※一部施設は服薬情報は求められない

大きな特徴は、科学的介護推進体制加算(Ⅱ)では疾病や服薬の状況など、より詳しい情報を提出することです。ただし、介護老人福祉施設や特別養護老人ホームなど、服薬情報の提出を求められない施設もあります。

科学的介護推進体制加算の提出方法

科学的介護推進体制加算の提出方法には、以下の2種類があります。

  • CSVファイルから取り込む
  • LIFEの画面から手入力を行う

1つ目は、LIFEのフォーマットに対応した介護ソフトに記録した情報をCSVファイル形式で出力し、LIFEへ取り込む方法です。介護ソフトを使用していない場合は、自分でCSVファイルを作成し提出できます。

2つ目のLIFEの画面から手入力する方法は、介護ソフトの利用有無にかかわらず利用できます。様式は、厚生労働省が各加算ごとに用意したものを利用しましょう。様式に記入した情報をLIFEに登録すれば、データの提出は完了です。

参考:厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)について」

科学的介護がもたらすメリット

科学的介護がもたらすメリットには、以下2点が挙げられます。

  • メリット1.LIFEに蓄積・収集したデータの活用により介護の質が向上する
  • メリット2.加算が受け取れる

LIFEに蓄積・収集したデータの活用による介護の質の向上は、高齢化社会が抱える問題解決の糸口になります。また、各事業所にとっても加算が受け取れることは大きなメリットといえるでしょう。

メリット1.LIFEに蓄積・収集したデータの活用により介護の質が向上する

LIFEに蓄積・収集したデータは分析され、各事業所へとフィードバックされます。現場では、フィードバックをもとに科学的エビデンスに基づいたケアを実施。結果的に、介護の質が向上することは科学的介護の大きなメリットです。

科学的介護を業務のPDCAに組み込めば、さらに良い循環が生まれます。ADLや栄養状態の改善など、さまざまな効果が見込まれるでしょう。

メリット2.加算が受け取れる

LIFEで利用者のデータを提出し、フィードバックをケア改善に役立てれば、それぞれの要件に応じた単位が加算されます。

科学的介護推進体制加算だけでなく、口腔衛生管理加算をはじめとする他の加算にデータ提出が採用されていることからも、LIFEの活用は各事業所にとって大きなメリットをもたらすといえるでしょう。

参考:厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)について」

根拠ある科学的介護で効率的かつ質の高いサービスを

科学的介護は、科学的エビデンスに基づく介護として誕生しました。フィードバックされる情報を指標とすれば、介護者のスキルに左右されない効率的かつ質の高いサービスを提供できます。

多くの事業所が導入を進めていることからも、現場での科学的介護の需要は高いといえるでしょう。加算が受け取れることは、介護事業の運営において大きなメリットです。

すでに科学的介護を取り入れている事業所はもちろん、今後導入を検討している事業所もぜひ基礎的な知識を身に付け日々のケアに役立ててください。

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝

2011年 4月 入社 事業推進部 配属 
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長