お役立ちコラム

認知症の症状の中でも徘徊は、無関係な人たちまでも巻き込むリスクがあるものです。高齢者を介護する家族も、正しい対処法がわからぬまま心身ともに疲れ果てるおそれがあります。そうした事態を避けるために、今回の記事では認知症高齢者の介護を担う方に向けて、徘徊の原因と予防策や対処法を紹介します。

そもそも徘徊とは何か?

まず徘徊とは何かについて、詳しく触れておきましょう。徘徊とは「何らかの明確な目的があるわけでもなく、ただただあちこちを歩き回ること」です。認知症高齢者のよくある行動の一つといえます。

家族にとっては転倒や道に迷わないかなどが心配になるものですが、基本的に周囲がそれを止めるのは難しいことです。ここでは徘徊の原因と、それによって起こる可能性があることについて、わかりやすく解説しましょう。

中核症状と周辺症状

認知症の高齢者に顕著に現れる症状には、大きく分けて「中核症状」と「周辺症状」の2つがあります。

中核症状は感情の起伏の変化や判断力の低下、もの忘れなどです。高齢になれば、誰にでも現れる可能性があります。加齢に伴うさまざまな機能の低下によって起こるものです。

一方の周辺症状は、幻覚や幻聴、暴力、ろう便(便をいじる)などの不潔行為などを指します。本人の生まれ育った環境や性格、かつての職業などによって現れる症状は大きく異なるのが特徴です。徘徊は周辺症状にあたります。

徘徊によって起こること

認知症の高齢者が徘徊すると、さまざまなことが起こり事故やケガの危険も伴います。具体的には下記のようなことが想定されます。

  • 転倒
  • 行方不明
  • 脱水症状や熱中症(夏期)
  • 低体温(冬期)

熱中症や転倒は家の中にいても起こりこと得るので、常に注意が必要となります。

また夜間に起こる徘徊(夜間徘徊)は、本人の危険もさることながら介護者の精神的および肉体的な負担も大きく、注意する必要がある症状です。

徘徊をしないようにされればされるほど、出かけようとしてしまうこともあります。ただやみくもに押さえつけるのは賢明ではありません。徘徊の原因と打つべき対策を慎重に検討して、対処する必要があります。

徘徊が起こる5つの原因

徘徊にはそれを引き起こす原因が必ず存在します。一般的には、主に以下の5つが徘徊を引き起こす原因と考えられています。

  • 原因1.身体的な原因
  • 原因2.心理的な原因
  • 原因3.見当識障害や記憶障害
  • 原因4.環境の変化によるストレス・不安
  • 原因5.前頭側頭型認知症

それぞれの原因について、詳しく見ていきましょう。

原因1.身体的な原因

徘徊する原因はさまざま考えられますが、その中でもわかりやすいものとして身体的な原因が挙げられます。体に感じる違和感が、徘徊を引き起こすのです。具体的には「喉が渇いて何か飲み物を飲みたい」とか「お腹の調子が悪いので、トイレに行きたい」などがきっかけとなり、徘徊が始まるといわれます。

身体的な違和感が徘徊の理由になっている場合、違和感の元となった飲食や排泄をすることによって、本人が精神的に落ち着くことも珍しくありません。

また便意が原因となっている場合は、医師と相談するのがよいでしょう。胃腸に関係する服薬の内容を見直すことによって便意が気にならなくなり、徘徊が落ち着く場合もあります。そのため徘徊が起こった場合には、まず本人の腸の具合を確認しておくことが大切です。

原因2.心理的な原因

心理的なストレスも、徘徊の原因として考えられます。たとえば日が暮れてくると本人がそわそわとし始めて落ち着かなくなり、出ていってしまうことがあります。これは認知障害に加えて、不安感や焦燥感などのストレスが加わるためと考えられます。具体的には、夕方に食事の支度をしていたり子供の学校や塾のお迎えに行ったりした過去の記憶から、じっとしていられない不安や焦りを感じるようです。

本人の様子を普段からよく観察しておき、なぜ外に出たくなるのかを本人にやさしく聞いてみることも重要です。ストレスの元がわかってそれを軽減させると、途端に改善することがあります。

原因3.見当識障害や記憶障害

認知症の中核症状といえる見当識障害や記憶障害が、徘徊を引き起こすこともあります。見当識障害によって自分のいる場所がわからなくなったり、記憶障害によって道や目印を忘れたりすると、行き慣れた場所でも道に迷ってしまうのです。

よく訪れていた施設であるにもかかわらず、自分の位置がわからなくなってしまい、トイレなどを探しながら迷い続けるようなケースがあります。また、家族の顔がうまく認識できず、知らない人だと感じて不安が生じることもあるようです。そうなると感情が抑えられないまま、衝動的に外出してしまうことがあります。また持ち物を置いた場所を忘れ、それを探すために歩き回ってしまうこともあります。

ほかにも見当識障害により自宅を自宅と認識できず、帰ろうとして徘徊になることもあります。記憶障害によって自己の認識が若返り、昔住んでいた家に帰ろうとして途中で迷ってしまうケースもあります。

原因4.環境の変化によるストレス・不安

環境が変化することによるストレスが、徘徊のきっかけになることもあります。たとえば見覚えのない場所だったり、騒々しくて落ち着かなかったり、居心地が悪かったりなどが原因となるようです。

急な環境の変化によって認知症の高齢者が混乱しやすいことは、周囲が理解しておく必要があります。不安を与えないためにも、本人にとって居心地がよい状態を作ることが効果的です。逆にいえば環境を大きく変えないように気をつけることで、徘徊をある程度抑制できるでしょう。

周囲の状況が判断できなければ、どう行動すべきかわからなくなり、一層混乱に陥るのです。結局適切な判断ができないため、その場からあてもなく出ていってしまうことがあります。

原因5.前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は一般的な認知症とは少し異なります。脳全体が萎縮していく認知症で、こちらも徘徊の原因になります。具体的には人格や社会性をつかさどる「前頭葉」と、言語・記憶・聴覚をつかさどる「側頭葉」が萎縮していく認知症です。

症状としては「人目を気にしなくなる」「感情の抑えが利かなくなる」「同じことを繰り返す」といったものが挙げられます。前頭側頭型認知症はその症状自体が直接徘徊につながっているのです。

高齢者徘徊の予防策6つ

高齢者の徘徊をストップさせるのは難しいことです。かといって、何も打つ手立てがないわけではありません。

徘徊には、主に以下のような6つの予防策があります。

  • 予防策1.楽しみや役割を与える
  • 予防策2.外出や運動をすすめる
  • 予防策3.生活のリズムを確立する
  • 予防策4.ストレスの元や行動パターンを理解する
  • 予防策5.徘徊防止鍵を利用する
  • 予防策6.介護サービスを活用する

個別に詳しく見ていきましょう。

予防策1.楽しみや役割を与える

認知症の高齢者は、何もすることがなくて話す相手もいない状況では自分の居場所がないと感じて​​焦燥感にかられます。現状が理解できないことからそこから脱出しようと、外に出ようとしがちです。

居場所を本人に認知してもらうには、何か楽しんで集中できる手作業や趣味が役立ちます。ちょっとした役割を与えることも効果的です。それによって自己肯定感が満たされ、精神が落ち着くからです。

予防策2.外出や運動をすすめる

体内のエネルギーが有り余った結果、夜間徘徊につながることがあります。誰でも同じ場所でじっとしているのはつらいものです。

昼間に適度な運動をしてエネルギーを発散すれば、心地よい疲労感を味わうことで心が充実し徘徊が改善するケースもあります。

散歩などの機会を増やせば足腰も鍛えられ、交通ルールを守りつつ正しい道順を忘れない訓練にもなるでしょう。

予防策3.生活のリズムを確立する

生活のリズムを整えて、普段から心身の安定をはかることも大切です。

眠れない日が続くと、生活リズムは乱れて夜間徘徊のリスクが増えます。夜に不規則に目覚めてしまわないためには、普段の生活リズムが重要です。

高齢者は水分不足で意識がぼんやりとしていたり、腰痛や便秘などで不快感を感じたりすると、眠れなくなるといわれます。生活リズムや体調を整えれば、夜間徘徊のリスクを減らすことが可能です。

予防策4.ストレスの元や行動パターンを理解する

認知症の高齢者が感じるストレスの元が何なのか、行動パターンを普段から観察して理解することが大切です。

環境が変わると、人によっては幻覚が見えたり、家族を知らない人と思って恐怖を感じたりして、外に逃げてしまうケースもあります。そうならないよう、環境に馴染めるように関わっていくことが必要です。

行動パターンを知っておくのも効果的な対策です。突然行方がわからなくなっても、本人の行動パターンからよく立ち寄る場所などを知っておくと見つけやすくなります。本人が立ち寄る可能性のある駅や店舗、公園などをあらかじめ確認しておきましょう。

予防策5.徘徊防止鍵を利用する

高齢者の徘徊を防ぐために、徘徊防止鍵の利用も検討しておきましょう。鍵を使うのは抵抗がある場合は、夜間だけにする、本人の部屋にはかけずに玄関や勝手口だけにするなど、時間や場所を限定する方法もあります。

徘徊防止鍵の種類としては、脱着可能なサムターンと両面シリンダー錠があります。

鍵を内側から開けるときの「つまみ」が「サムターン」です。この部分を取り外しができる鍵に取り替えておけば、認知症高齢者が深夜に玄関の鍵を開けて1人で外出することを防止できます。

錠前の外側の鍵穴がドアの内側にもついているのが「両面シリンダー錠」です。内側からドアを開けるときも鍵が必要になるので、先の脱着可能なサムターンと同様に、鍵さえ保管しておけば外に出られる心配はありません

窓用の「補助錠」もあります。徘徊防止対策というと出入り口の鍵だけを考えてしまいがちですが、実際は窓から外に出てしまうという徘徊のケースも少なくありません。これは一般的に防犯対策に使われ、窓の溝に設置して施開錠用のつまみを取り外せます。

さらに厳重な対策を施したい場合は、窓用のシリンダー錠(小さい鍵で開け閉めできるもの)を取り付ける方法もあります。

予防策6.介護サービスを活用する

デイサービスなどの各種介護サービスを利用することで、昼間の活動ができて徘徊のリスクが減らせます。介護サービスのスタッフは、認知症のプロ。そのため、適切なケアがしてもらえるでしょう。

また介護サービスを利用している間は、いつも介護している家族の負担が軽減できます。サービスの活用で家族は無理のない介護を続けられ、介護者と要介護者の双方のストレスを軽減させることが可能となります。

とりわけ老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などに入居すれば、常に介護スタッフ見守ってくれる環境で暮らせるので、とても安心です。

徘徊が発生した際の対処方法4つ

家族が徘徊をするようになったには、主に以下のような4つの対処方法が考えられます。

  • 対処方法1.徘徊するタイミングを認識する
  • 対処方法2.早期発見の工夫を施す
  • 対処方法3.名札やGPSを携帯させる
  • 対処方法4.地域と見守りを連携する

個々の対処方法について、見ていきましょう。

対処方法1.徘徊するタイミングを認識する

玄関に徘徊センサーやドアベルを設置することで、家族などの周りの人が本人の外出に気づくことができます。徘徊センサーには誰かがセンサーの前を通ると感知する「固定タイプ」と、子機を所持した本人が一定のエリアから出てしまうとアラームで知らせる「携帯タイプ」があります。家電量販店などでも購入できる、比較的安価で便利なツールです。

なお、玄関に鏡や本人が興味を持っているものを置いておくと、周囲が外出に気づくまでの時間稼ぎの役目になる場合もあります。

対処方法2.早期発見の工夫を施す

万が一周囲が気づかないうちに本人が外出してしまっても、前もって早期発見できるように準備しておけば、徘徊トラブルにつながるリスクが減らせます。

記憶障害から自分で名前や連絡先の情報を伝えられない場合を想定し、財布やキーケースなどの常に持ち歩くものに記入するなど対策しておくとよいでしょう。

また、探索がしやすいよう顔写真を準備したり、その日その日の服装を記録したりしておくと役に立ちます。

対処方法3.名札やGPSを携帯させる

服に名札を付けたり、位置情報を知らせるGPS端末を常に持たせておくのも有効です。ポケットに入れたり首から下げたりするタイプのほかにも、靴につけられるタイプもあります。

徘徊対策を意識した超小型軽量のGPSは、かばんや杖につけても邪魔にならない手のひらより小さいサイズで、重さもわずか数十グラムです。使用するには電源を入れるだけで、操作は必要ありません。

端末のある場所をスマホやパソコンから確認ができるので、緊急時にも素早く対応可能です。地図画面上で一目瞭然でいざ徘徊が起こってもすばやく迎えにいける、あると大変心強いツールです。

認知症高齢者の保護支援対策として「耐洗ラベル」も注目されています。これは家庭用アイロンで衣服に貼れるものです。取り扱いが簡単なうえに、素材が薄く貼りつけたあとも違和感がありません。

高齢者にやさしい肌触りでありながら、洗濯しても剥がれないし本人が剥がそうとしても剥がせない強さがあります。また洗濯しても名前の印字が薄れないので、何度でも使えます。

対処方法4.地域と見守りを連携する

とりわけ夜間徘徊対策には、地域との連携が欠かせません。担当のケアマネジャーにはもちろんのこと、地域包括支援センターにも相談するのがよいでしょう。

認知症は決して恥ずかしいことではなく、同じ地域のほかの家庭でも同じような徘徊が起こっているという認識することが大切です。

家族が気を付けるだけでなく地域全体が状況を理解することで、徘徊が起こった際に本人と接して話を聴いてくれる人や自宅まで送ってくれる人が親切な方が現れることも多いです。

程度によっては介護施設への入居を視野に

認知症高齢者の徘徊や夜間徘徊は決して特別な問題ではなく、どこの家庭でも起こりえることです。普段の予防のための働きかけや、万が一徘徊が発生した場合にトラブルを避けるための工夫などをすることで、大事に至るリスクは減らせます。

ただし症状には個人差があり、程度によっては家族や地域の連携でもトラブルを防ぎ切れないケースもあるかもしれません。そんな場合には、介護施設への入居という選択肢も考えておきましょう。

あなぶきの介護は、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、介護付き有料老人ホームを運営しております。自宅に居ながら無料相談ができるオンライン入居相談のサービスをご利用頂き、お気軽にご相談ください。

高齢者徘徊の予防策と対処方法を認識しておこう

認知症高齢者の徘徊は決して特別なことではありませんが、程度によっては本人の危険もさることながら、第三者も巻き込むリスクがあります。

普段からケアをしている家族にも、負担がのしかかるのです。この記事でご紹介した情報を参考に予防策を施し、発生した場合に備えて対処方法を認識しておきましょう。

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝

2011年 4月 入社 事業推進部 配属 
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長