お役立ちコラム

高齢者の移住は、都市部の高齢化対策のひとつとして近年注目を集めています。高齢者が移住先を検討する際は、いくつかの注意点をふまえておくことが大切です。こちらの記事では、高齢者に移住をおすすめする3つの理由を紹介します。移住先選びのポイントもあわせて参考にしてください。

高齢者の移住が注目される背景

高齢者の移住が注目される背景には、都市部の高齢化問題が影響しています。都市部は若者が多く、高齢化は地方の問題なのではと思われるかもしれません。しかし、2020年以降は都市部で急速に高齢化が進むといわれているのです。

これは、戦後の高度経済成長期に都市部に多くの人口が移動したことが関係しています。まずは、高齢化が都市部と地方にどのような影響を及ぼすのか、移住との関連性を確認していきましょう。

都市部で懸念される2025年問題

高齢化が進む都市部で懸念されているのが2025年問題です。2025年問題とは、日本の高齢者人口が約3,500万人に達し、超高齢化社会に突入することを意味しています。団塊の世代が75歳以上となり、国民の4人に1人が後期高齢者という社会がやってくるのです。

さらに、高齢者の増加率は、地方より都市部の方が高いと推計されています。厚生労働省の推計によると、高齢者数の増加数が多いとされるのが埼玉県、東京都、神奈川県。2004年と2025年を比較した高齢者増加率は、38%から80%です。

一方、島根県や鳥取県、徳島県などは増加数が低く、増加率も8%から20%と都市部と差があることが分かります。

2004年の
高齢者人口
(万人)
2025年の
高齢者人口
(万人
増加数
(万人)
増加率
(%)
増加数順位
埼玉県 109 196 87 80 1
東京都 223 308 85 38 2
神奈川県 141 226 84 60 3
徳島県 19 23 4 19 45
鳥取県 14 17 3 21 46
島根県 20 22 2 8 47

都市部で高齢化が急速に進むと、介護施設の不足が深刻化するといわれています。また、医療や介護人材の需要が飛躍的に高まり、じゅうぶんな人材確保が困難になると推測されるのです。

地方では都市部への人材流出が課題

都市部の高齢化問題を受け、地方ではさらなる人材流出が懸念されています。特に問題となるのが、介護人材の流出です。

平成26年度の介護職の有効求人倍率は、全国平均2.3倍。一方、東京都における有効求人倍率4倍と、実に多くの介護人材が求められていることがわかります。

つまり、2025年問題で都市部の介護需要が増大すると、地方の人材流出にさらに拍車がかかることが推測されるのです。限られた人材をどう地元に定着させるかが、地方では大きな課題となっています。

課題解決に向け「生涯活躍のまち」政策が誕生

都市部と地方、それぞれの課題解決に向けてうまれたのが「生涯活躍のまち」政策です。地方創生プランのひとつでもある「生涯活躍のまち」は、都市部の高齢者の移住を促し、地方へ人の流れを作ることを目的としています。

さらに、年齢にこだわりなく、移住者や地元住民が役割を持てるコミュニティづくりを推進していることが特徴です。キーポイントは「活躍・しごと」「交流・居場所」「住まい」「健康」の4つの機能の確保。高齢者が移住先で役割を持ちながら、いきいきと暮らせる街づくりを目指しています。

こうした高齢者の地方移住は、地方の介護人材の流出を防ぐことへとつながります。さらに消費の拡大や雇用の増加や地域活性化など、移住者と都市部、地方の三者ともにメリットをもたらすのです。

「生涯活躍のまち」はこれらのメリットを生み出す政策として、各地でさらなる取り組みが期待されています。

【参考】
厚生労働省「今後の高齢化の進展 ~2025年の超高齢社会像~」
福井県「都市部の高齢者受け入れプロジェクト」

高齢者移住5つのパターン

高齢者の移住には、以下のような5つのパターンがあると考えられます。

  • パターン1.地方で田舎暮らしを満喫する
  • パターン2.利便性の高い駅近マンションで暮らす
  • パターン3.故郷にUターンする
  • パターン4.海外に移住する
  • パターン5.介護付き高齢者住宅に移り住む

セカンドライフに求めるニーズは人それぞれです。より多くのパターンを知れば、自分が移住する際の参考にできるでしょう。

パターン1.地方で田舎暮らしを満喫する

海や山が近く、自然豊かなことは地方ならではの特色です。都市部から地方へと移住するのであれば、田舎暮らしを満喫したいという高齢者も多いでしょう。田舎暮らしであれば「畑で野菜を育てながら、のんびりと暮らしたい」というニーズも叶えられます。

ゆくゆくは子ども夫婦との同居や介護施設に入ることを想定しつつ、夫婦2人で充実した生活が送れるでしょう。

パターン2.利便性の高い駅近マンションで暮らす

利便性の高い駅近への移住も選択肢のひとつです。駅に近い土地は交通機関が充実し、年齢を重ねても出かけやすいというメリットがあります。

また、マンションは戸建て住宅と違い、メンテナンスの必要がありません。セキュリティがしっかりしているという安心感もあります。商業施設やスポーツ施設、劇場なども駅近くに揃い、多趣味でアクティブに過ごしたい高齢者にも人気です。

パターン3.故郷にUターンする

老後は故郷で暮らしたいというパターンです。特に、夫婦が同郷の場合は需要があると考えられます。土地の特性について理解しているため、安心度が高いというメリットもあるでしょう。

顔なじみの知り合いがいれば、移住後の交友関係も充実します。さらに、実家が残っていれば移住先の住まい探しに困ることもありません。高齢者が移住しやすいパターンのひとつだと考えられます。

パターン4.海外に移住する

「老後は海外で」という移住パターンです。マレーシアやタイ、ハワイなど、多くの日本人が暮らす国が好まれています。特に、東南アジアは気候が温暖で物価が安いことがメリットです。

ただし、高齢者が移住するときは、病気になったときの言葉の問題を考えておかなくてはいけません。食べ物や文化も日本とは異なるため、何度か現地を訪ねて下調べを重ねた方が良いでしょう。

パターン5.介護付き高齢者住宅に移り住む

介護付き高齢者住宅は「サービス付き高齢者向け住宅」または「サ高住」とも呼ばれています。一般のマンションのようでありながら、介護サービスや生活支援が受けられることが大きな特徴です。

ニーズの多様化にあわせ、近年は高級感のある高齢者住宅も増えています。レストランや温泉設備があったり、ペットと一緒に入居できたりと実にさまざまです。「将来を考え、早いうちに安心できる住宅に住みたい」という高齢者に人気のパターンだといえます。

高齢者に移住をおすすめする3つの理由

高齢者に移住をおすすめする理由には、以下のような3点が挙げられます。

  • 理由1.豊かな自然のなか健康的に暮らせる
  • 理由2.物価が安い
  • 理由3.自治体の支援制度が期待できる

特に、都市部から地方へと移住するときは、これらの理由に着目してみてください。自分にとってよりメリットのある移住先を検討しやすくなるでしょう。

理由1.豊かな自然のなか健康的に暮らせる

移住相談を受け付ける「ふるさと回帰支援センター」の窓口では、静岡県や山梨県、長野県といった地方都市が移住先として人気を得ています。いずれも豊かな自然が残る地域であることがポイントです。

水や空気も美しく、食べ物も新鮮で気持ちにゆとりのある生活が送れます。地方は温泉が近場にあることも多く、心身ともに健康的に暮らすことができるでしょう。

理由2.物価が安い

地方は物価が安いことも、移住をおすすめする理由のひとつです。総務省統計局の2019年(令和元年)の調査によると、物価水準が特に高いのは東京都と神奈川県。最も低いのは宮崎県という結果が出ています。

特に住居の物価水準は都市部と地方の差が大きく、東京都は鳥取県の1.62倍です。地方であれば、都市部と同じ金額でより広く住み心地の良い家に暮らすことができます。

理由3.自治体の支援制度が期待できる

3つ目の理由は、自治体の支援制度が期待できることです。人口流出を懸念する地方では、各地でさまざまな移住政策がとられています。

例えば、秋田県にかほ市では、定住するための住宅を購入した世帯に、最大100万円の奨励金と1年間の無料温泉パスポートを交付しています。実際に地域の暮らしを体験してみたい高齢者には、一定期間地方で暮らす「お試し移住制度」もおすすめです。

【参考】総務省統計局「小売物価統計調査(構造編)2019年(令和元年)結果」

知っておきたい高齢者の移住3つの注意点

高齢者が移住を検討する際は、次の3つの注意点をふまえておくことが大切です。

  • 注意点1.車がないと生活が不便
  • 注意点2.病院の数が限られている
  • 注意点3.人付き合いが限られることも

注意点を理解しておけば、移住したときのギャップも少なく、より快適な生活が送ることができます。いざというときに困らないよう、移住前に心構えをしておきましょう。

注意点1.車がないと生活が不便

移住先によっては電車やバスの本数が少なく、どこへ行くにも車が必要な場合があります。都市部では毎日歩いて行っていたスーパーも、車がないと通えないといったケースも少なくありません。

自家用車を所有すれば、ガソリン代や自動車税といった維持費も必要です。また、近年は高齢者の運転免許証の返納も推奨されています。そのため、移住を検討する際は日常の交通手段もあわせて考える必要があるでしょう。

注意点2.病院の数が限られている

地方は都市部に比べ、病院の数が限られています。特に、人口の少ない地域は徒歩圏内に病院があるとは限りません。総合病院があっても、診療科目によっては受診日が決められている場合もあります。

元気だと思っていても、高齢になるほど病院に行く回数は増えがちです。突然体調が悪くなったり、けがをしたときのことを想定しておく必要があります。

注意点3.人付き合いが限られることも

地方は人と人との関わり合いが深いと思われがちです。しかし、交通の便が悪いことで外出の機会が減ると、自然と人付き合いが限られてしまいます。今まで近所で立ち話をするのが日課だった人も、会話の機会が減ってしまうかもしれません。

移住先で新たな関係を築くためには、高齢者が集まるサークルや教室に出向いてみるのもおすすめです。移住前は各地域がどのような取り組みをしているのか、ホームページなどで確認してみるのも良いでしょう。

高齢者が移住先を選択するときの4つのポイント

高齢者が移住先を選択するときは、次の4つのポイントをおさえておきましょう。

  • ポイント1.福祉のサポート体制が整っているか
  • ポイント2.交通の便が良いか
  • ポイント3.医療機関が充実しているか
  • ポイント4.趣味を活かせる場所があるか

前述したように、高齢者の移住にはいくつかの注意点も考えられます。それらをふまえたうえでポイントをおさえれば、よりニーズにあわせた移住先を検討できるでしょう。

ポイント1.福祉のサポート体制が整っているか

福祉のサポート体制は、高齢者の暮らしにとって重要なポイントです。どこにどのような介護施設があるかという情報はもちろん、サービス内容もチェックしておきましょう。

地域によっては、見守りを兼ねた配食サービスを実施し、高齢者世帯が安心して暮らせる体制を整えています。そのほか、各自治体のホームページから、健康を維持するための介護予防の取り組みについて確認するのもおすすめです。

ポイント2.交通の便が良いか

前述したように、地方は公共交通機関が整備されていない可能性があります。買い物や通院に足を運ぶためには、交通の便が良いかどうかは大切なポイントです。

移住先を検討する際は日常生活を想定し、スーパーや病院への移動手段を確認しておきましょう。どうしてもスーパーまで距離がある場合は、宅配サービスを利用するという方法もあります。地域によってはタクシーの助成制度もあるため、あわせて検討してみましょう。

ポイント3.医療機関が充実しているか

福祉サービスとともにチェックしておきたいのが、医療機関の充実度です。特に、持病を持っている場合は、必要な医療を受けられるかしっかりと確認する必要があります。

近年は各地で医師不足が問題視されており、地方は特に深刻です。移住先にどのような病院があるのか、場所だけでなく診療時間もあわせて把握しておきましょう。

ポイント4.趣味を活かせる場所があるか

移住先で自分らしくいきいきと暮らすためには、趣味を活かせる場があるかどうかも大切なポイントです。スポーツ施設、図書館、娯楽施設など、自分の趣味を続けられる場所があるか確認しておきましょう。

外出の機会が増えることは、引きこもり予防に効果的です。体力の維持向上にもつながるため、移住先で健康的な毎日を過ごせます。

移住のニーズを見極めて充実したセカンドライフを

高齢者の移住先は、暮らしの基盤となる医療や福祉、交通機関を確認したうえで選ぶことが大切です。長期的に暮らすのであれば、介護サービスの充実度は特に意識したいポイントだといえます。移住後に快適な生活を送るためには、しっかりとした下調べが大切です。移住のニーズを見極め、充実したセカンドライフを送りましょう。

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝

2011年 4月 入社 事業推進部 配属 
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長