お役立ちコラム

少子高齢化が進むなか「介護業界は人材が足りない」と耳にする方も多いのではないでしょうか。さらなる要介護者の増加が考えられる社会では、介護職員の確保と人材育成が大きな課題となっています。こちらでは、人材不足が続く介護現場の現状を踏まえ、その原因や人材確保、育成に向けたさまざまな取り組みを紹介していきます。

人材不足が続く介護現場の現状

介護保険制度が創設された平成12年以降、介護職は多くの人材が求められている職種です。少子高齢化にともない、その必要性はさらに高まると考えられます。実際の介護現場では、人材確保に向けどのような問題が起こっているのでしょうか。

2025年に必要な介護人材数「約245万人」

厚生労働省の調査によると、高齢者の人口は平成12年以降急速に増加しています。平成12年に901万人だった75歳以上の人口は、平成32年には1,872万人とその差は2倍以上。団塊の世代すべてが75歳以上になる令和7年には、その数は2,180万人まで増加すると推計されています。

要介護者の増加にともない、令和7年に全国で必要とされる介護人材は約245万人。そのためには、年間約6万人の人材を確保する必要があるといわれています。

人手不足感の強い介護現場

平成12年に約54万人だった介護職員の数は年々増加しており、平成27年には180万人を超えるまでとなっています。しかし、実際には介護業界の約65%が「人手が不足している」と感じているのです。

この「人手不足感」は介護の現場によって異なります。訪問介護にいたっては、実に8割以上が人手不足を訴えています。このような人材不足の理由として大きく挙げられているのが、新たな採用が困難な介護業界の現状です。

採用率は「18.2%」他産業より高いのになぜ?

平成30年度の介護業界の採用率は、18.2%です。他産業の採用率15.4%と比べても、介護業界の採用率は高いことが分かります。しかし、人材確保の妨げとなっているのが、同業他社との競争や介護業界の労働条件。特に、景気が良い時期には介護業界には人材が集まらないといわれています。

将来的に多くの人材が必要であるにも関わらず、依然として現場の不足感が払拭できないことは、介護業界の大きな課題となっています。

(参考:厚生労働省「福祉・介護人材確保対策について」「介護労働の現状について」

介護現場に人材が定着しない理由とは?

介護の離職者を勤続年数の内訳でみると、全体の半数以上を勤続3年未満が占めています。介護職に就いても人材が定着しない理由として大きく考えられるのが、以下の2点です。

  • 1.職場環境が整っていない
  • 2.将来設計が立てられない

介護の離職理由と合わせ、それぞれ詳しく見ていきましょう。

理由1.職場環境が整っていない

女性介護士の離職理由のトップに挙げられるのが「結婚・妊娠・出産・育児のため」です。介護職は女性が多く活躍する現場でありながら、職場復帰できる環境が整っていないと考えられます。

また、男女とも上位に挙げられるのが「職場の人間関係」です。介護職は、他業種やスタッフ間との連携が欠かせない仕事。相談窓口がない事業所ほど、労働条件に関する悩みを持つ職員も多いといわれています。そのため、施設や事業所には、職員の悩みを受け止める体制が求められています。

理由2.将来設計が立てられない

男性介護職員のなかでもっとも多いのが「自分の将来に見込みが立たない」という離職理由です。「収入が少ない」「他に良い仕事があった」など、労働条件に不満を持ち、他職種へ転職するケースも見られます。スキルのある人材が定着するためにも、介護業界のさらなる処遇改善が必要だと考えられるでしょう。

(参考:厚生労働省「介護労働の現状について」

介護の人材確保に向けた取り組み

厚生労働省は、約245万人の介護人材が必要となる2025年に向け、さまざまな取り組みを実施しています。

  • 1.目標は全産業の平均賃金「処遇改善制度」
  • 2.アクティブシニアが活躍「介護業務の分化」
  • 3.新たな介護人材「外国人労働者」

近年は処遇改善だけでなく、新たな介護の担い手へと期待を寄せているのが特徴です。

取り組み1.目標は全産業の平均賃金「処遇改善制度」

平成21年の介護報酬改定を機に始まったのが、介護職員の処遇改善制度です。これまでの実績を合計すると、処遇改善によってアップした給与額は月額平均5万7,000円。介護職員の平均給与は年々増加し、平成29年度は29万円を超えました。今後は全産業の平均賃金約36万円と変わらぬ水準を目指し、さらなる処遇改善が予定されています。

(参考:厚生労働省「福祉・介護人材確保対策について」

取り組み2.アクティブシニアが活躍「介護業務の分化」

生産年齢人口が減少するなかで新たに考えられているのが、多様な人材の導入です。実際に三重県では、元気な高齢者を介護助手として導入するモデル事業が実施されています。高齢者にとっては、住み慣れた地域で新たな就労先が見つかること。現場にとっては、介護士が介護業務に専念できることが大きなメリットとなりました。

高齢者が介護助手として業務にあたる上でポイントとなったのが、介護業務の分化です。知識や技術がなくても行える業務から、一定のスキルを要する認知症患者の見守りまで、高齢者は自分の年齢や体力、スキルに合った業務に従事。無理なく働きながら介護について学ぶことは、介護予防にもつながると考えられます。そのため、介護業務の分化によるアクティブシニアの活躍は、人材確保と介護予防、両方の側面を担うものとして注目を集めています。

取り組み3.新たな介護人材「外国人労働者」

近年、新たな介護人材として注目を集めているのが外国人労働者です。人材不足に対応するため、平成31年からは外国人の在留資格「特定技能1号」制度が始まりました。技能や日本語能力を、試験で確認した上で入国。介護施設で5年間就労したのちに介護福祉士資格を取得すれば、永続的な就労も可能となります。

これまで外国人介護職員を受け入れた施設のうち、今後も受け入れたいと回答した施設は全体の78.9%。利用者や家族からの評価も高く、外国人介護職員の今後の活躍が期待されています。

(参考:厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」

離職防止・人材定着に向けた現場の取り組み

介護現場で実施されているのが、業務に従事している職員の離職防止・定着に向けた取り組みです。

  • 1.労働環境の改善
  • 2.非正規職員から正規職員への転換
  • 3.介護ロボット・ICTの活用

それぞれが介護職員の離職理由を踏まえ、さらに若年層の人材定着を図るものとなっています。

取り組み1.労働環境の改善

多忙な介護の現場では介護業務以外の書類作成に時間を取られ、残業になることも少なくありません。また、人員不足の職場では有給休暇を取りづらい場合もあります。働きやすい職場づくりを目指した労働環境の改善に向け、事業所や施設には雇用管理責任者や相談窓口を設けることが求められています。

取り組み2.非正規職員から正規職員への転換

スキルのある職員が長期的に現場で活躍するために実施されているのが、非正規職員から正規職員への転換です。未経験のパート職員から仕事を始め、働きながら資格を取得し正社員になるというキャリアパスも考えられます。キャリアが配置先や賃金に反映されることによって、職員はやりがいを持ってケアに従事することができます。

取り組み3.介護ロボット・ICTの活用

介護ロボットとは、高齢者の自立支援や介護者の負担軽減に役立つ、ロボット技術を応用した介護機器です。センサー機能で遠隔地から高齢者を見守るものや、移動を支援するものなど種類もさまざま。なかには、高齢者とコミュニケーションを図る機能を搭載したロボットもあります。スマートフォンやパソコンによるカルテ記入やシフト管理は、普段それらを日常的に活用する若年層の職員定着につながると期待されています。

介護職員の人材育成のために

多様化を見せる介護ニーズに対応するためには、スキルを持った介護職員の育成が求められます。介護職員の人材育成は定着率を高めるだけでなく、より良いケアの提供にもつながります。

教育制度・研修の充実

介護人材のすそ野を広げるために実施されているのが、介護に感心を持つ未経験者のための入門的研修です。受講者は訪問介護員以外の仕事に従事できるほか、介護職員初任者研修や実務者研修の講習内容が一部免除されます。

また、安全衛生研修のひとつである腰痛予防や感染症対策は、職員と高齢者の身体を守るために欠かせない研修です。未経験の介護職員も、実務と並行して研修を重ねることで、スキルアップが可能となります。

スキルやキャリアを配置や処遇に反映させる

介護職は未経験からでも始められる仕事です。しかし、チームリーダーとして現場をまとめていくためには、一定のスキルやキャリアが必要となります。チームリーダーを担うのは、主に国家資格である介護福祉士資格を有する職員。将来的には、管理職や施設長といったマネジメント職に就く道も考えられます。

介護のキャリアパスとも呼ばれるこのような職員配置は、介護の専門性を高めることにつながります。キャリアを処遇に反映させることにより、さらにやりがいを持って介護職を続けることもできるでしょう。

まとめ

少子高齢化が進む社会の中で、介護業界の人材確保は大きな課題です。人材確保のすそ野を広げることはもちろん、今後は専門性の高い介護士の育成も求められます。そのためには、介護士の処遇改善や、将来設計を立てられるキャリアパスの構築が必要。介護職に魅力とやりがいを感じながら働くことが、人材不足解消へとつながっていくことでしょう。

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝

2011年 4月 入社 事業推進部 配属 
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長