お役立ちコラム

現在、認知症患者の数は増加の一途を辿っていて、2025年には高齢者の5人に1人は認知症になると予測されています。認知症は完治することが難しく、むしろ悪化していくことが多い傾向にあるため、予防が重要となります。

現在は認知症に対する完全な予防方法はありませんが、「認知症になりにくい方法」については徐々に解明されてきています。なかでも近年注目されているのが、認知症になりにくい食事です。今回は認知症に関して起こる問題も含め、予防法をご紹介致します。

■脳の老化防止が重要な課題

認知症は、大きく分けてアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症の2種類があります。アルツハイマー型認知症は脳細胞の変性が原因だとされていますが、詳しいことはまだわかっていません。脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血など脳の血管の異常によって引き起こされます。

■4つの主な認知症

認知症には、大きく分けて4つの種類があります。それぞれ発症する原因や症状の特徴が異なります。

 

・アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、脳内に異常なタンパク質(アミロイドβタンパク質)が蓄積することで脳細胞が破壊され、認知機能が低下する認知症です。物忘れなどの記憶障害から始まることが多く、進行すると「物を盗られた!」という妄想、話をはぐらかしたりする、取り繕いなどの症状が出てきます。

 

・レビー小体型認知症

レビー小体型認知症は、脳内に異常なタンパク質(レビー小体)が蓄積し、脳細胞が破壊されて認知機能が低下します。手が震える、動作が遅くなる、バランスを取ることが難しくなるといったパーキンソン病のような症状が現れるため、パーキンソン病と間違われるケースも多くあります。

 

・脳血管性認知症

脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血など脳の血管障害によって起こる認知症です。脳血管が詰まったり出血したりすることによって、脳細胞に酸素がうまく供給されなくなり、神経細胞が壊死します。これにより、認知症が発症します。基本的に良くなったり悪くなったりを繰り返しながら進行しますが、急激に悪化するケースもあります。

 

・前頭側頭型認知症(FTD)

前頭側頭型認知症は、前頭葉や側頭葉が萎縮することで発症する認知症です。FTDとも呼ばれます・ほかの認知症に比べると行動障害が多く、同じ行動を繰り返す、同じものばかりを食べる、集中力や自発性が無くなる、見たものに影響されやすくなる、反社会的な行動をする、などの症状が起こります。

 

近年の研究の結果、アルツハイマー型認知症の発症には抗酸化物質の不足や脂肪の摂りすぎ、ミネラル不足など、食生活の偏りが大きく関係しているとわかりました。また、脳血管性認知症は動脈硬化など脳血管の老化が大きく関係しており、これもそもそもの原因は偏った食生活にあります。もちろん、食事以外の原因もありますが、食生活の改善が認知症予防につながると考えることもできます。

 

特に注意したいといわれているのが「塩分・コレステロールの摂りすぎ」と「抗酸化物質の不足」です。塩分やコレステロールは血管を老化させ、動脈硬化や脳梗塞のリスクを高めます。また、抗酸化物質が不足していると活性酸素が増え、新陳代謝が滞ることで老化が進みます。食生活を見直す際には、こうした点に注意をしましょう。

 

■認知症予防や老化防止に効果的な食材

上述したように、認知症予防や脳の老化防止のためにはバランスのいい食生活が重要です。そのなかでも、積極的に摂取した方がいい食材があります。例えば、以下のような食材は認知症予防や脳の老化防止に効果的だとされています。

 

・青魚

青魚には、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といった不飽和脂肪酸が豊富に含まれているのだそう。これらには悪玉コレステロールを減らし、血液をサラサラにする効果があるといわれています。青魚のほかに、ウナギやマグロのトロ、真鯛といった魚にもDHA・EPAは含まれています。

・野菜や果物

バランスのいい食事にするためには、野菜や果物は必要不可欠です。特に抗酸化作用のあるビタミンCやビタミンE、ポリフェノール、ベータカロテン、リコピンなどは積極的に摂取するとよいという意見があります。ビタミンCは赤ピーマンや柿、ビタミンEはかぼちゃやほうれん草、ポリフェノールはブドウ、ベータカロテンは緑黄色野菜、リコピンはトマトが代表的な食材です。

・大豆製品

大豆に含まれているレシチンは、神経伝達物質を生み出す成分といわれています。神経伝達物質は視覚や聴覚得た情報をスムーズに伝達するために必要な物質で、これが不足すると記憶力の低下を引き起こすこともあるのだそう。そのため、認知症予防には欠かせない成分であるという声も。

・オリーブオイル

オリーブオイルにも、青魚同様不飽和脂肪酸が含まれています。オリーブオイルに含まれている不飽和脂肪酸はオレイン酸というもので、血中のコレステロールや中性脂肪をコントロールする効果があるとのこと。これにより、動脈硬化や脳梗塞のリスクを低下させる効果が期待できます。
※効果を保証するものではありません。本格的な食事療法をしたい方は専門家に相談しましょう。

 

■効率よく摂取できる食事とは?

認知症予防や脳の老化防止のための食事を考えた場合、上述したような食材を効率的に摂取できることがポイントとなります。

例えば和食。魚を主菜として扱うことが多い和食は、一汁三菜というバランスのとれた献立が基本となります。また、醤油や味噌、豆腐といった大豆製品が非常に多く使われています。こうしたことから、認知症予防や脳の老化防止には効果的な食事であるといえます。

同じく魚をよく食べる食事として、地中海風の食事があげられます。地中海風の食事の特徴は「魚が多く肉が少ない」「トマトやパプリカなど緑黄色野菜が豊富」「オリーブオイルをよく使う」「ワインを適度に飲む」など。前項で紹介した食材が豊富に利用されていることがわかります。

これら以外には、カレーも認知症予防に効果的だとされています。カレーのスパイスのひとつであるウコンにはクルクミンという成分が含まれていて、これには記憶力の低下を抑える効果があるのだそう。カレー大国であるインドが世界的にアルツハイマー患者が少ない国として知られていることも、認知症予防や脳の老化防止に効果的であることを証明しているのかもしれませんね。

 

認知症は発症すると完治させるのが難しく、高齢者にとって要注意の病気のひとつです。その発症率を下げるためにも、バランスのいい食生活を心がけましょう。

■高齢者の一人暮らしは危険!?もしも認知症になったら起こりうる問題

高齢者がいつまで一人暮らしができるのかは、いくつかのサインから判断できます。仮に軽い認知症を患ったとしても、こうしたサインが見られない場合には、定期的に様子を見るなど注意しておけば一人暮らしが可能なこともあります。例えば、以下のようなサインは要注意です。

 

・火の管理ができない
一人暮らしをしていると、火の管理も自分で行わなければいけません。例えば日常の料理や仏壇のろうそく、冬であればストーブなどの管理があります。こうした火の管理を忘れてしまう場合は、火事や一酸化炭素中毒などの危険性があることから一人暮らしは難しいといえます。

 

・なんでも口に入れる
認知症が進むと、食べ物ではないものを口に入れるようになります。例えばゴキブリなどを駆除するためのエサや腐ったご飯など、健康に著しい悪影響を与えるものも口に入れてしまう可能性があります。こうした兆候が見られる場合には、一人暮らしは難しいといえます。

 

・徘徊する
徘徊も、一人暮らしの可否を判断するサインのひとつです。家族と同居している場合には万が一徘徊していてもすぐに探すことができますが、一人暮らしの場合はそうはいきません。屋外は屋内に比べて格段に危険が多いため、徘徊も注意すべきポイントなのです。

 

■一人暮らしで認知症を患った場合の問題点

一人暮らしで認知症を患った場合、単に一人暮らしを継続することが難しくなるというだけでなく、さまざまな問題が発生します。問題点としては、以下のようなものがあります。

 

・薬を飲み忘れるなど健康面での不安
一度に飲む薬の量を把握できない、何度も飲んでしまう場合などは、命に関わる事故が起きることが予想されます。また、夏や冬は室温の調整を行わなければ健康に悪影響を及ぼしますが、認知症の場合はこういった適切な調整ができなくなります。

 

・近隣住民とのトラブル
認知症になると、物事の善し悪しがわからなくなったり、被害妄想をしたり、幻覚を見たりといった症状が発生する可能性があります。こうした症状は人間関係を悪化させる要因になり、近隣住民とのトラブルの原因となることもあります。

 

・認知症の進行に気づかない
家族と同居している場合は、家族からの証言によって認知症であることを認識することができます。しかし、一人暮らしの場合は何かがおかしくても指摘する人がいないため、自身が認知症であることや認知症が進行していることに気づくことができないのです。

こうした問題点があることから、高齢者が一人暮らしをする際には十分な注意が必要だといえます。

 

■認知症を予防するには運動も効果的

実際に高齢者の方に1年間軽い運動を続けてもらった結果、その80%に認知機能の改善が見られました。また、音楽を組み合わせた運動を1年間行なってもらった結果、運動のみ続けてもらったときよりも高い認知機能の改善が見られました。

脳の認知機能を高める運動としては、10分程度の軽いウォーキングも効果的だという結果が出ています。ウォーキングは少し息があがるぐらいの速さで、しっかりと心拍数の上昇が感じられる程度が推奨されています。

 

■どうして運動すると脳の働きにいいのか?

なぜ運動を行うと脳機能の低下を防ぐことができるのか。それは、有酸素運動を行なうことで持続的に酸素を体内へ取り入れることができる、ということに起因しています。

有酸素運動によって体内に取り入れられた酸素は、血液によって体全体に運ばれるほか、脳の血管にも送り込まれます。そうすると、脳内の血液が豊富になり、ニューロンという脳の神経細胞が新しく作られます。このニューロン同士をつなげる働きをもつシナプスは脳内の酸素が豊富になることで活動が活発になり、脳機能を向上させます。これにより、記憶力が増強されるて、認知症状が発生しにくくなるのです。

 

■デイサービスや老人ホームのレクリエーションで運動を

近年は、レクリエーションで軽い運動を行うことで老化防止(ボケ防止など)に取り組んでいるデイサービスや老人ホームが多くあります。誰でも簡単にできる運動を用意しており、座りながらできる運動などもあります。認知症予防では週に3回から4回ほど運動することが理想的なので、デイサービスなどの時だけみんなと一緒に運動するというのもいいでしょう。

日常生活でも老化防止(ボケ防止など)のために、家事をしながら体を動かすことを意識したり、簡単な暗算を行なったり、音楽に合わせて軽く体を動かしたりすることが効果的です。このようなことを日常生活に意識して取り入れるだけでも、脳の働きを活発にし、認知機能の低下を防ぐことができます。

 以上、認知症から起こりうる問題点から予防法までご紹介致しました。
食事、運動を含め日々の生活を見直していきましょう。

あなぶきメディカルケア株式会社
取締役 小夫 直孝

2011年 4月 入社 事業推進部 配属 
2012年 4月 第2エリアマネージャー(中国・九州)
2012年11月 事業推進部 次長
2015年 4月 リビング事業部 部長 兼 事業推進部 部長
2017年 10月 執行役員 兼 事業推進部 部長 兼 リビング事業部 部長
2018年 10月 取締役 兼 事業本 部長 兼 事業推進部 部長